大阪府内で先進的に取り組まれている地域就労支援事業に関し、和泉市の場合について、市の労働・雇用政策のアウトラインおよび地域就労支援事業の具体的実践の両面から、ご報告いただいた。以下はその概要である。
地域就労支援事業は大阪府のモデル事業として和泉市と茨木市が2000年度に始め、大阪府内全自治体で04年度から実施している。
大阪府にとって国の機関委任事務だった職業安定行政は、1999年に成立した地方分権一括法にもとづき、2000年から国によって新たに設置された大阪労働局が管轄することになった。そのなかで、同和対策としての自立就労支援方策検討委員会(1999年)から発展した地域就労支援検討委員会は、職業安定行政のノウハウのない府に対し、同和対策としての雇用施策から求職者自らの選択をサポートする一般施策としての自立就労支援へと発展させつつある市町村をモデルとして、就労支援計画の策定と就労実態調査の実施を決定した。
和泉市は市全域を対象に(茨木市では部落を含む校区対象)、無作為抽出による5,000人(15〜65歳)のアンケート調査を2000年12月31日回収で行った。計画に余裕がなく年末になったにもかかわらず回答率は33.3%で、関心度の高さを示した。次に、回答者のうちからヒアリング協力者191人と、地区協、障害者団体、母子団体の協力を得た387人を対象に、各団体から選出された調査員によるヒアリング調査を行った。
当事者団体も加えて就労支援計画策定委員会を組織し、この調査をもとに、雇用・就労、就労困難者の定義から始めて、できるだけ横断的な事業計画をめざした。労基法・最賃法の適用を受ける契約関係としての雇用の基準に達する就労を目標としつつ、そこまで達しない福祉的、ボランティア的就労も含めることとし、年齢・身体的機能・家族構成・出身地等により働く意欲がありながら就職できない層(意欲を失いかけている層も含む)を対象に、就労を阻害する要因の解決(たとえば母子家庭の小さい子どもの保育)も視野に入れ、就労支援事業計画を策定した。
直近実績で2004年度の計画から紹介すると、1)職業能力開発向上事業、2)就職促進事業、3)情報提供事業、4)地域展開事業、5)雇用拡大事業、6)就労支援センター事業がある。
1)は、技能や資格がないと就けない仕事もあることから、特に力を入れてきた事業である。視覚・聴覚・身体障害者向け講習では障害部位別で障害者団体に事業を委託し、パソコン講習会や住環境福祉コーディネーター養成講座を実施した。特に障害者向けパソコン講習会で講師も障害当事者に限定したことは、障害者の就労機会をつくるとともに、1級の障害者である受講生に合った教え方と障害当事者のモデルを提供するという意味で大きな効果があった。中高年対象では、これまでの職業意識を変革してもらう職業意識転換講習会や、フォークリフトの資格取得講習会などを実施している。若年層には、PCのゲーム感覚を生かした初級システムアドミニストレーター(情報処理技術者国家検定)講習会などを行っている。
2)では、就職情報フェアでの合同就職面接などを行っている。フェアのチラシには求人情報も掲載し、全戸配布する。2004年実績で、105件の求人に対し110人が面接に訪れ、50人の採用が実現している。
3)では、パソコンを使った適正診断やインターネットによる求人情報の提供と、市町村初の無料職業紹介があり、就職困難者の職業紹介まで含めることで、総合的な就労支援が可能になる。ただ、現状では多様な求職・求人に応えるのがまだ難しい、という課題がある。
4)では、企業人権協議会や商工会議所、テクノステージ和泉まちづくり協議会(産業団地組合)加盟企業等による地域企業ネットワーク事業での合同面接会のほか、職場体験訓練を受け入れた事業所に一人毎月8万5千円の補助金を出し、事業所は相応の訓練手当てを支払う職業訓練事業等を実施している。
5)では、ワーカーズコレクティブやNPO設立に際して、就労困難者の採用計画を目途に、20万円を助成している。
6)の就労支援相談事業を担うコーディネーターは、意識・知識・行動力・根気そして情報力に加え、高い人権意識・カウンセリング能力・コーディネート能力が求められる大変な仕事であり、様々なケースに応じて同じ次元で対応できる人材が必要である。
最後に、母子家庭の母親の自立を通じた子どもへのプラスの影響を期待して、2005年度から始めた市臨時職員制度を活用した生活保護者の自立・就労支援を紹介する。6ヵ月間、市の臨時職員として事務の実地職業訓練を積んだ後、市の無料職業紹介を通じて民間企業への就職をめざす定員5名の本事業は、現在4名を対象に実施されており、すでに1名が民間に就職した。