調査研究

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2005.12.14
部会・研究会活動 <成人教育部会>
 
成人教育部会・学習会報告
2005年10月18日
南方青少年会館における中高生の自立支援の取り組み
―中学校区での自立と共生をめざして

森田栄二(南方青少年会館)

「学力保障は学校で」のスローガンのもとで取り組みが進められてきたが、学校だけで学力保障はできないし、家庭で学習できる条件にない子どもに再学習の機会が必要だという実感を強くして、青少年会館で何かすべきだと考えはじめた。

これまで、19:00〜20:45で週2回(火・木)の補充学級を実施してきたが、参加率20〜30%、来るのは学力低位層だけで、学力向上に結びつかないという不信感をもたれていた。テスト前は帰宅させる従来の方針に同和加配の削減も加わり、補充学級が廃止されることになった後も、「自主学習」の名称で、週3日(火・木・金)の19:00〜22:00に、7〜10日間のテスト前強化学習を中心に教科学習会を継続してきた。この取り組みが定期テストでの成績向上や進学実績につながり、地域の学力保障の一端を担っていると認識されるようになっている。高校受験前には帰宅後も勉強するようサポートしている。

地区生について会員登録制にして2年後に地区外生の受け入れも始め、母子父子家庭等の困難を抱えた学力不振層を中心に地区外生の登録も順調に増えている。

困難な家庭では、10代での結婚・出産は今もそれほど減っていない。自分の生まれ育った家庭でのDV体験などを背景に、自分の育ったのとは違う家庭を築きたいというのと、自分育ってきたような家庭でも何とかなるというのと、二通りの動機があるようだ。一方、親の側にも、子どもにあまり勉強させると自分から遠いところへ行ってしまうからイヤだという抵抗感があったりする。親のお金の使い方には投資型と享楽型があって、享楽型の親に対してはいまだに有効なアプローチができていない。

南方では、大阪市の自主学習習慣づくり支援事業を活用して、後輩育成のために地域の大学生を有償ボランティアとして雇用し、中高生の教科学習など自主学習支援に関わってもらっている。火〜金に各2時間が基本だが、勤務日も4時間程度働いてくれるし、勤務日以外にも来てくれる。長期的な親育成計画を立て、大学生を育てているため、今のところ地区生が関わっている。彼らは、地区生にとって「自分もなりたい」と思える身近な大学生のモデルになっている。意欲的に自主学習ほかの活動に取り組む高校生を対象に、将来的な大学生ボランティア養成の場として設けている「ひだまり」のほか、困難を抱えた中高生を支援する「努力無限」、不登校からの立ち直り支援のための「ぼちぼち」や障害のある中学生の自立支援のための「がんばれゆうき」、さらには青年の和太鼓サークル「烈火」なども含む南方青少年会館事業の総体が「ほっとスペース」を構成している。

イギリスなどと異なり、日本では高学歴・高収入層ばかりが社会教育施設を利用しているのが現実である。しかし、ジェルピが「社会教育は食うための教育である」と言っているように、公であることの意味、すなわち公正の実現、未来志向、スタートラインで遅れをとっている層への手立てを考える責任がある。

非行一歩手前の不登校や引きこもり等に対する支援を特に重視しているが、月1回の訪問を中心にしたり、学校に行きたくない不登校生には昼間に青少年会館に来てもらったり、対象者によって柔軟に対応している。

地区の中高生たちの間には「高校には行きたいし、そのための勉強もせんとアカン」という合意はあって、ほっとスペースで行っている学力保障の看板を掲げた居場所づくり事業として、「会館に来たら、遊ぶのもありだが、勉強もしよう」というアプローチはできる。厳しい学力実態の地区生の進学先であるA高の学校斡旋の就職先は20人規模の職場が多い。コネでもほとんどがフリーターである。 それでも、卒業してフリーターを経験した後、専門学校に入り直した子も2名いる。学び直したいという潜在意識はもっているし、それを見せる瞬間・時期がある。それを知らせてほしいと親には伝えている。今のところ、専門学校の過去の入試問題を持ってきたらそれに対応するといった形ではあるが、やり直し、再学習も一人ひとりに合わせた個別メニューが必要である。青少年会館として、その機会と場を提供する重要性と、それを看板に掲げる必要を感じている。

(文責:熊谷 愛)