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識字部会・学習会報告
1998年3月9日
「大阪府識字学級・日本語読み書き教室等学習者調査の最終分析結果について」ほか

岩槻知也(大阪大学人間科学部)

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 大阪府の識字学習者調査について、同和地区と同和地区外(中国からの帰国者が過半数)の比較を中心とする最終的なデータ分析の報告をいただいた。あらましは以下のとおり。

  1. 地区では中高年層が過半数を占めるのに対し、地区外では若年から壮年層が80%近くを占める。
  2. 地区外では日本語の読み書き以前に、会話で不自由している人が70%近くいる。
  3. 日本語の「読み」については、地区外で半数が漢字を読めるのに対し、地区外では5%強。
  4. 日本語の「書き」については、まったく書けない率が地区外で地区の5倍、漢字が書ける率が地区で地区外の2.6倍。
  5. (日本語で)世間話をする、カラオケを歌う、絵本を読む、新聞を読む、ハガキ・手紙を書く、履歴書を書く、仕事の書類を読み書きする、生い立ちを話す、政治や社会について意見を述べる、といったことに関して困難を感じている率が、地区外では地区に比べて非常に高い。
  6. 教室に通いはじめてからの年数が、地区外では2〜3年までが9割を占めるのに対し、地区では4〜5年以上が過半数を占め、11年以上も22%。
  7. 教室への道のりは、地区では徒歩圏内が過半数を占めるのに対し、地区外では交通機関を利用という率が半数以上。
  8. 教室を知った経路として、役所の広報や紹介でという率が地区外では地区の3倍から4.8倍。
  9. 教室に求めるもの・得たものについて、地区外では日本語の会話の占める率が圧倒的なのに対し、地区では多岐にわたっている。
  10. 教室への希望に関して、身近に教室を、経費がかからないようにという率が地区外では高いが、地区・地区外共通で相談に乗ってほしい率が4割。

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 この報告を受けて、地区の問題はソフトウェア、地区外の問題はハードウェアに関わるといえるのではないか、地区−地区外の比較だけでなく主要な質問項目の間でのクロス集計も必要ではないか、地区内外でそれぞれ内容は異なっても「相談に乗ってほしい」という要望が大きく、ハード面でも子育てや医療に関わる部分を整備しなければならないし、地区では多様化が求められているのではないか、学級(教室)内でできること、学級(教室)外ですべきことを整理すべきではないか、といった意見が出された。

 メイン報告の他に、識字に関する視聴覚教材(ビデオ)のリスト(簡単な内容紹介、保管場所、貸し出しの可否など)の作成状況について、壷井宏さん(鯰江中学校)から、報告を受け、5月の国際識字年推進大阪連絡会の総会資料に載せていただくことが決定した。