日本語教室はもとより部落の識字学級や
中学校夜間学級で学ぶ日本語を母語としない人々の増加のなかで、部落の識字の活性化も同時に
図ることが、今年1月1日から始まった「国連識字の10年」の日本における具体的な重要課題の一つである。
従って、まず学習の場の現状を知る必要があると考え、今年度第1回目の部会は、昨年10月から今年の2月にかけて約5ヵ月の間大阪府の識字学級等調査で各教室を訪問調査員として回られた福島和子さん(識字・日本語センター相談員)に、主に各教室の学習形態と教材の角度からご報告いただいた。
以下、ごく簡単にその内容を紹介する。
当初約170と把握されていた大阪府内の営利目的でない識字・日本語教室は、もう1名の調査員と分担して訪問した結果、新たに存在がわかった教室を含めて今年3月14日で200教室になった。
まず識字学級について、学習形態からみると37教室のうち24教室が1対1(マンツーマン)形式、全体学習形式が9教室、他は1回の学習時間の前半を1対1形式に後半を全体学習としていたり、月の内3回は1対1形式で1回は全体学習といった混合型である。
識字学級での教材に関しては、調査した全教材のうち手づくり教材の割合が43%と手づくり教材が多く使用されていた。一方、小学生用の既成のドリルがそのまま使われていて学習者の心理を考えると心が痛んだこともあった。しかし、既成の教材でも民話などの物語に書き取りが付いているものなど、なかには良いものもあった。
全体学習形式では、伝承料理のレシピを書き実際に料理を作って、デジタルカメラで撮りパソコンを使って絵本化するという例や、季節のことばや諺、最近のニュースに出てくる言葉などを題材に講師が教材を作成し、長年の受講生との信頼関係のなかで高度な学習を行っている例もあった。
また、高齢者から30〜50代に受講生の層が移り映画やビデオを用いて人権について学習している例のほか、7〜8名の講師が順番に準備する手書き作文を教材に受講生が漢字に振り仮名をつけ全員で音読したのち講師が添削するという、全体学習形式ではあるが補助講師が個別指導する例もあった。
最近の傾向として、識字学級でもワープロ学習からパソコン学習(年賀状やカレンダー作成など)への移行が見られ、パソコン学習をしようという学級ではローマ字学習用教本が求められていた。また書道・習字(実用書道から自作の俳句・短歌の作品化まで)の稽古の場合、講師が手本を書く場合が多いようだ。
日本語教室のうち、識字学級として始まり、後から日本語学習者を受け入れるようになった教室では公立系、NPO・民間系の教室に比べ中国人・中国からの帰国者が多い。出身国・地域を問わず学習者は最低限の日本語をマスターすると教室に来なくなる人々とさらに学習を続ける人々に分かれる。後者の場合自分の日本語到達度を把握したいという気持ちから日本語能力試験をめざす人が多いが、公立系、NPO・民間系の教室に比べると識字系の教室で1級をめざす人は少ない。
日本語教室で手づくり教材が少ないのは日本語学習用の教材が充実したためである。『みんなの日本語初級I・úK』が日常生活に即した内容と多言語対応(9ヵ国語版)、教え方の手引きやテープ・ビデオもあり最も多く使われている。
クラス形式の教室では『みんなの日本語初級I・úK』でカリキュラムに沿って指導し、1対1形式の教室では『みんなの日本語』のほか学習者の要望・必要性に沿った教材(料理のレシピ、スーパー等のチラシ、幼稚園の連絡帳、小学生新聞[子どもと一緒に読め、かつ情報が豊富]、日本語能力試験問題集1〜4級、運転免許試験用問題集など)を使用する例が多い。
大阪弁も含めて会話が上達したいという学習者も多く、教材を使用しないでパートナーと自由会話をする例もある。また最近、子どもが幼稚園・小学校に入るので学校等の先生との連絡・相談のため日本語能力を上げたいと教室に通いはじめる外国人の母親が増えている。