(1)講師集団
‡@講師団のまとまり
識字学級に参加する講師団には、地元の推進校の教師が中心になっている場合と、現役の教師でなくても退職教師であるとかさまざまな経験のある社会人や、学校籍の教育委員会の関係者や公募・ボランティアの講師などがなっている場合などが考えられます。どのような講師団にとっても、講師団が、名前は集団でも実態は単なる群れであっては困るでしょう。講師団としてのまとまりを大切にしたいものです。そして、識字の学習者との関係を中心において、そこからみた講師のあり方に関する議論や問題提起がどれだけなされているかが、講師集団を形成する者としての質を決めていくのではないかと考えられます。
その条件は学習者のニーズです。教材(学習材)や学習形態のの工夫が「呼び水」となって学習者の真のニーズが引き出され、講師と学習者の緊張関係が引き金となって初めて講師団の質も高まり、講師団としてのまとまりも形成されていくといえるでしょう。同和教育推進校の教師による講師団は、地元推進校の教師によって構成されている場合と、さまざまな学校の教師から構成されている場合とがあります。前者の場合は、地域を核にした結びつきが比較的容易になります。たとえば、推進校内に複数の教師による講師団会議ないし講師運営委員会を設置して、校内で諸連絡・打ち合わせをおこなうことも可能です。しかし、後者の場合は、意識的に識字の場などで集団づくりの努力が求められています。
‡A講師の位置
識字活動は部落解放同盟支部の運動のなかに位置づけられており、このことをふまえて識字に関わることが大切です。
いわゆる「雇われ講師」という表現があります。これは単に、雇用された講師という意味、あるいは依頼されたからやむなく講師として行くという意味にとどまらず、部落解放運動と講師集団との関係性を言っています。つまり、「運動と連帯する」ために識字運動に参加しているといいながら、実際は解放運動の「下請け」に甘んじた参加形態を意味しています。日常の実態がそうであれば、これは渾動側からいっても決して望ましいことではないでしょう。したがって問題が生じたとき、あるいは生じない場合でも、真の連帯関係が形成できるような場を確保しておく必要があるでしょう。それがいわば識字運営委員会であり、講師団会議や学習者会議であるといえます。そこは、部落解放同盟支部の方針と講師団の意見、あるいは学習者会議の意見などが対等に出され、調整される場でなければなりません。このようなことが具体的に真剣に論議されて初めて、それぞれの組織の実態が確認されていくのです。
‡B公募・ボランティアの講師
いくつかの学級では、講師を公募するという試みを始めています。また、現在のところ、講師に関しては謝礼金が支払われていますが、将来的にはボランティア(無償)という方法も考えられます。これら公募・ボランティア講師の導入は、識字活動の多様化にともなって増えてくると思われます。その場合、実際の活動を見学してもらう期間を設けたり、面接をしたり、採用のガイドラインをつくったりする必要があります。講師として活動するにあたっては、対象者が人生経験豊富な成人であるとともに、部落差別によって教育の機会を奪われてきた人たちを対象としてきたことをふまえておくことが欠かせません。
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(2)講師集団の質を高めるために
‡@講師の研修識字は成人を対象とする学習ですから、識字に関わる講師については、さまざまな意味で研修が必要です。
a)当鉄地区の学級の状況.
b)学習者と接し、学習を深めるにあたっての心がまえc)他地区の学級の状況や識字活動の全体状況など、詳しい知識でなくアウトラインがわかる程度でも知る必要があります。この柱を大切にしながら、日常活動のなかで自己研修を深めていき、受け身でなく積極的に学習活動をつくっていこうという姿勢が大切です。
∴研修の形態はいろいろと考えられます。大阪では毎年6月に講師団と行政担当者が会して研修がおこなわれており、府下の各識字学級から参加があります。
各地区では、ベテランの教師や外部の講師を呼び、研修をおこなうこともあります。一日の活動自体も研修といえますが、その場合には適切なアドバイスと意見交換のできる経験豊富な講師の存在が不可欠となります。また、講師が学習者から学ぶことは当然です。
‡A講師団で核となる人を
推進校では「同和主担」や識字学級担当者が核になって講師団が形成される場合があります。他の場合では、運動に理解があり、識字に関わった経験のある人が核となることが望ましいでしょう。′
しかしいずれの場合でも、その核となる人には、何よりも実行力と創造性、感性が、核となる素質として必要です。その核となる人の役割として、識字のあり方を他の講師とともに考えるということのほか、
- 行政担当者との連絡
- 講師団会議などの企画・運営
- 運営委員会への参画
- 学習者との連絡などがあげられます。
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(3)講師団会議の充実
集団は、その目的としての会議が確保されて初めて集団形成の条件が整うといえます。そのためには、月1回あるいは学期1回でも年間数回でも講師団会議を開催することが望ましいのです。しかし、そのようななかば定期的な会議をを節目として持つだけでなく、同時に即時性をもった「そのつど会議」も大切です。多忙のため長時間にわたっては持てないとしても、短時間でも一つの学習ごとに、総括的にとまではいわなくても、反省・計画・予定といった短期間内でのワンポイント打ち合わせの会議が有効です。特に学習者の構成が、性別・年齢・国籍・障害の有無など、多様になれば、なおさら頻繁な打ち合わせ・顔合わせが大切な意味をもってきます。たとえば、毎学習開始の15分前とか、終了後の15〜30分といったかたちで意思疎通を兼ねた会議を持つ方法もあります。短時間で集中した論議は、工夫次第で十分可能です。特によっては意図的に椅子を使わずに立ったまま話し合うといった形態も有効でしょう。形式にとらわれマンネリ化ノした会議のあり方を打ち破る工夫をしていくことが大切です。
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(4)運営のあり方について
‡@解放運動との関わり
識字学級の運営に関わっては、地元の解放運動との関係がまず問われます。解放同盟支部は識字運動を解放運動の一環として位置づけ、責任を持って運営・指導することになつているのが原則です。そのために同盟支部は運動方針のなかに識字学級を位置づけ、同じ織字学級の組織体制を確立しようとしています。たとえそこまで組織体制が整備されていなくても、支部女性部内に組織をつくっている場合もあります。こうした解放運動側から提起されてくる意見を識字学級の運営委員会に反映させるとともに、学習者の願いを受け止めて識字の実践に活かしていくことはきわめて当然でしょう。
‡A運営委員会
地元の解放運動や学習者会議や講師団会議からの提起を反映させ、識字学級の運営方針・年間活動・行事・日常活動などについて協議します。メンバーは、学習者代表・講師代表・地域代表(地区の識字担当者)・行政担当者などで構成します。比率などにも留意し、特に学習者代表から意見が出やすいように工夫しなければなりません。