「識字のための手引き」の完成を、編集に関わった識字部会の皆さんや識字で学んでいる生徒さんたちとともに喜びたいと思います。私自身、識字を通していろいろな人と出会うことができました。解放運動の先輩たち、各地の生徒さんたち、夜間中学校で学ぶ在日の人や、公民館などで渡日の人や帰国の人たち・・・。識字年は海外の人とのつながりをつくってくれました。89年にはパウロ・フレイレさんが来阪され、90年には私自身がタイなどに出かけ、95年の国際識字10年中間年には、アジア各地から来日した人たちと交流できました。北京女性会議でも、私たちの歌や踊り、アピールを受けとめてくれた人がたくさんいます。
識字で学んだことが私の女性部活動を支えています。私にとって識字はまさに解放運動の原点です。いろいろな人と出会って、学ぶことがたくさんありました。けれども、部落の識字に対する自信が深まったのも事実です。生い立ちを交流しながらつくってきた人間関係。苦労を乗り越えてきたからこそもっているしぶとさや温かさ。一人ひとりが人生かけて書いてきた作品。人前で自分のことを語れる力。みんなで取り組んできたオガリや劇。こういう財産はどこへ行っても通用します。
1995年から人権教育のための10年が始まっています。政府の行動計画にも一般施策として識字が位置づけられると聞いています。これをきっかけに、部落の識字も、いろいろな人と出会って学んだことを手がかりにもっと充実させたいものです。新しい講師の先生やボランティアの人にも、部落の識字にぜひ来ていただきたいと思います。
この手引きは、これまで部落の識字がつくってきた財産をまとめています。いろいろな人たちとの交流を通じて出会った新しい考え方や方法も取り入れています。新しく来られた講師の先生だけでなく、長く関わってこられた識字関係者もぜひお読みください。部落の識字はもちろん、部落外の識字でもきっと役立つと思います。この手引きが活用され、部落の中でも外でも識字運動が発展することを期待しています。