調査研究

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部会・研究会活動 <識字部会>
 
識字部会
1.はじめに

 部落解放同盟中央本部は、「中央理論検討委員会」を設けてここから提言を受け、第三期の解放運動創造て本格的に動いている。これを受けて各地の部落解放運動は、「第三期の解放運動創造」を合言葉に、新しいスタイルの運動づくりをめざしてそれぞれの領域で活動を展開しっつあるところである。

 識字運動は、この第三期の典型としてしばしば引きあいに出される。識字は典型的な自己教育運動であり、自分で自分を鍛えるという視点抜きに存在しえない。ここでは、行政に要求をぶつけ、何かを引き出すことは条件としての意味しかもたない。非識字状態にある人の立ち上がりがあって、はじめて成立する運動である。識字はヽ自力自闘を基本としているのである。しかも、国際識字年をきっかけとして、部落の識字運動は、部落内をリードするだけでなく、夜間中学校に学ぶ在日韓国・朝鮮人一世や、公民館の識字に学ぶいわゆるニューカマー(新規渡日・帰国)の人びと、自主的な識字活動を展開する障害者の人達の識字などと連携して世界の識字運動との連帯を強めるようになっている。このような点を考えれば、たしかに識字運動は、「補償から建設へ」「解放が目的、事業は手段」「部落の中から部落の外へ」「世界の水平運動」などの言葉で語られる第三期を体現するものだということができよう。

 しかし、いくら第三期の典型であったとしても、そのことは識字運動自身が順調に発展していたり、問題や課題をなんらもっていなかったりすることを意味するものではない。いや、識字問題自身に即して検討すれば、むしろ現在の部落の識字には大きな課題が山積していると言わざるをえない。たとえば、各地の部落実態調査を見ると、かなり多くの非識字者がいることは明らかである。ところが識字活動に参加しているのは、そのうちはんのひと握りでしかない。また、識字学校は開設されていても、参加者がほとんどいないという地域も少なくない。学習者がたくさん集まっている地域にあっては、そのこ−ズを十分満たせていないという意見がしばしば聞かれる。さらに、運動の精神を忘れ、行政に依存してしまっているのではないかというきびしい指摘もある。

 一九九七年三月に法切れを迎え、さまざまな事業が打ち切られることもはっきりしてきた。これをどう乗り越え、識字運動の発展をどう実現するかが問われている。「第三期の典型的運動」という評価にあぐらをかくのではなく、その評価に恥じないよう自ら道を切り開くことこそが求められているのである。

 この文書は、中央理論委員会の提言を受け、各地の識字活動の実態や課題について多くの方から聞かせていただいた意見をもとに、部落解放研究所識宇部会で話し合い、全国の部落における今後の識字活動のありかたについての提言としてまとめたものである。識字活動の現状は地域により大きく異なるので、この提言を生かすには、地域の状況を踏まえる必要があることは言を待たない。この文章が、部落の識字運動をいっそう発展させる叩き台になれば幸いである。