はじめに
1996年3月、大阪府教育委員会は「市町村における識字学級・日本語読み書き教室等の調査」(以下「教室調査」と記す)を実施し、大阪府下にある被差別部落の識字学級や公民館などの日本語読み書き教室の実態を把握した。
この調査で明らかになったポイントは、大まかに(1)府下44市町村のうち、32市町において120教室が開設されている、(2)この120教室のうち、43(36.0%)が被差別部落(同和地区)の識字学級(以下「地区教室」と記す)、36(30.0%)が公民館等の教室(教育委員会所管の教室)、22(18.3%)が民間ボランティアによる教室、12(10.0%)が公益法人(国際交流協会等)による教室、7(5.8%)が首長部局所管の教室である。(3)学習者総数は36,663人で、その内訳は地区教室1,336人(36.5%)公民館等の教室777人(21.2%)、民間ボランティァによる教室739人(20.2%)、公益法人による教室626人(17.1%)、首長部局所管の教室185人(5.1%)である、(4)学習者3,663人のうち、女性が2,869人で全体の78.3%を、また外国人が1,811人で49.4%を占めている。とくに外国人の比率については「地区教室」が7.4%であるのに対し、「地区外教室」(被差別部落の識字学級以外の教室)では73.6%ときわめて高率を示している(1)。
タイトルに示した「大阪府識字学級・日本語読み書き教室等学習者調査」(以下「学習者調査」と記す)は、主にこの1996年の教室調査で把握された教室の学習者を対象として、1997年7月、大阪府教育委員会が実施したものである。筆者の知る限り、識字・日本語教室の学習者を対象としたこのような大規模な調査は、他に類例がないように思われる。本稿では、この学習者調査によって得られた貴重なデータをもとに、大阪における識字活動の現状と今後の課題の一端を探ってみたいと思う。