調査研究

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2 集計結果の記述・分析

96年の教室調査の結果と同様に、今回の調査でも、とくに地区・地区外教室の回答者の特徴に大きな違いのあることが明らかになった。そこで本稿では、この地区・地区外教室の特徴の違いを中心にすえて、集計結果を記述・分析する。ちなみに本調査の回答者となった99教室1,594人の内訳は、地区教室が43教室523人(32.8%)、地区外教室が56教室1,071人(67.2%)である。なお紙幅の都合上、いくつかの設問については、結果の記述を省かせていただいた。ご了承いただきたい。(詳細は、大阪府教育委員会社会教育課『大阪府識字学級・日本語読み書き教室等学習者調査報告書』、1998年10月、を参照のこと

(1) 属性

まず性別でみると、全体の70.3%が女性、29.7%が男性である。これを地区別にみると、地区で女性82.9%・男性17.1%、また地区外で女性64.2%・男性35.8%と、地区外教室で男性の比率がかなり高い。また年齢については(図1)、地区で50・60・70歳代の比率が高いのに対し、地区外では20・30・40歳代の比率が圧倒的に高い。この性別と年齢についてもう少し詳しくみると(図2図3)、地区では50〜70歳代の女性の比率がかなり高いのに対して、地区外では20〜40歳代の男性の比率がいくぶん高い。これらの結果から、全体の傾向として、地区教室に比較的高齢の女性が多く、地区外教室には若年・中年の男性が多いといえる。

出身国については、全体で中国が40.8%、次いで日本34.2%、韓国・朝鮮9.9%、ブラジル4.0%、フィリピン2.0%、その他9.1%となっている。これを地区別にみると、地区では日本88.2%、韓国・朝鮮6.0%、中国4.0%、フィリピン1.1%、ブラジル0.2%、その他0.4%と約9割が日本であるのに対し、地区外では中国57.0%、韓国・朝鮮11.6%、日本10.2%、ブラジル5.7%、フィリピン2.5%、その他8.7%と約六割が中国で、日本はわずか1割に過ぎない。ここで注目すべきは、地区教室にも中国や韓国・朝鮮、ブラジル、フィリピンなどの外国出身の学習者が在籍しているということ、また地区外教室に中国出身の学習者がかなりの割合で在籍しているということである。

そこで次に、この地区外教室の回答者の特徴をもう少し詳しくみてみる。図4は、地区外教室回答者の出身国別にみた男女比を示したものである。日本、韓国・朝鮮、フィリピン出身の回答者には圧倒的に女性が多いのに対して、中国、ブラジルの回答者には比較的男性が多く、とくにブラジルの場合、約6割が男性となっている。また表1は、地区外教室回答者の出身告別にみた居住年数を示している。とくに目をひくのは、中国出身の回答者の7割以上が「1年以内」で、「2〜3年」をも含めると、その比率がほぼ9割に達するということである。この中国出身者ほどではないが、ブラジル出身の回答者もまた、日本での居住年数が比較的浅い。これに対し、日本出身者は「生まれてからずっと」ず8割を超え、韓国・朝鮮出身者も「20年以上」が6割に及んでいる。またフィリピン出身者も、先の中国やブラジル出身者に比べれば居住年数の長い人びとである。

同居人については、全体の15.2%がひとり暮らしである。地区別にみると地区24.3%、地区外10.9%と、地区教室にひとり暮らしの人が多いことがわかる。これを性別にみると、地区で男性13.9%、女性9.2%と、地区教室でもとくに女性のひとり暮らしが多い。図5は、地区教室の女性の年齢階層別にみた同居人の有無である。とくに60歳代以上の女性のひとり暮らしの比率が高いことは注目に値する。

仕事については、全体の62.3%が無職である。地区別では、地区47.0%、地区外69.7%で、地区外教室にかなり無職の人が多い。これを性別にみると、地区で男性31.8%、女性50.5%、地区外で男性61.4%、女性74.1%と、とくに地区内外で男性の比率に大きな差がみられる。図6は、地区外教室回答者の仕事の有無を出身国別にみたものである。韓国・朝鮮、中国出身者の無職者の比率がかなり高いのに対して、ブラジル出身者の比率がきわめて低い(すなわち94.8%が有職者である)ことがわかる。