(1) 教室での学習年数
教室での学習年数については「1年以下」「2〜3年」「4〜5年」「6〜10年」「11年以上」という5つの選択肢を設けた。その結果、全体ではそれぞれ59.0%、17.0%、7.8%、8.3%、7.9%、地区で22.3%、19.9%、14.7%、20.3%、22.7%、地区外で76.6%、15.5%、4.5%、2.6%、0.8%であった。地区教室の学習者は1年以下の新しい人から11年以上のベテランまで、かなりバラエティに富んでいるが、地区外教室の場合、1年以下の人が7割を超え、2〜3年まで含めると、その数は全体の9割を超えている。この数値は、地区外教室回答者の日本での居住年数とも密接に関わっているだろう。
(2)通学方法・通学時間
通学方法については「徒歩」「自転車」「バイク・自動車」「電車・バス」の4つの選択肢を設けた。結果は全体でそれぞれ29.6%、27.1%、5.8%、37.5%、地区で65.4%、24.5%、8.3%、1.8%、地区外で12.3%、28.3%、4.6%、54.8%となっている。地区教室では9割の人か゛徒歩や自転車で通学しているのに対し、地区外教室では半数以上が電車やバスで通学している。また通学時間については「5分」「15分」「30分」「1時間」「1時間以上」という5つの選択しを設けて質問した結果、全体でそれぞれ29.2%、25.6%、21.7%、16.3%、7.3%、地区で69.1%、27.0%、3.1%、0.4%、地区外で10.0%、24.9%、30.6%、23.9%、10.6%という数値となった。地区教室では約7割の人が5分程度で通学しているのに対し、地区外教室では6割を超える人が30分以上の時間をかけて通学している。とくに地区外教室の場合「1時間」「1時間以上」と回答した人だけでも3割を超えている。つまり地区外教室の学習者は、かなりの時間とお金をかけて教室に通っているのである。
(3) 教室の認知経路
教室の認知経路については、9つの選択肢を設け、複数回答を可とした。全体の比率が高かった項目順に、全体・地区・地区外の比率を列挙すると「教室に通っている知り合いにさそわれた」34.2%、48.1%、27.7%、「役所からの『おしらせ』で知った」20.5%、8.5%、26.0%、「家の人に聞いた」12.1%、10.2%、13.1%、「役所の人に紹介された」11.9%、3.3%、15.9%、「なんとなくうわさで聞いた」7.3%、10.8%、5.6%、「教室の先生にさそわれた」7.0%、11.0%、5.1%、「チラシで知った」6.7%、8.7%、5.7%、「子どもの学校の先生に紹介された」4.0%、5.8%、3.2%、「その他」10.4%、12.0%、9.7%となる。地区・地区外教室とも「知り合いに誘われる」というパターンが最も多いが、とくにこの傾向は地区教室に顕著で、約半数の人がこの項目に回答している。次に多かったのは「役所からのお知らせ」であったが、ここでは地区外教室回答者の比率がかなり高い。この傾向は「役所の人の紹介」という項目でも同じであり、とくに地区外教室の認知に「役所」が大きな役割を果たしていることがうかがえる。
(4) 教室での成果
ここでは「教室に通うようになって良かったことは何ですか?」という設問に対して12の選択肢を設け、複数回答を可とした(3つまで)。ここでも全体の比率が高かった項目順に全体・地区・地区外の比率を列挙すると「知り合いがふえた」38.3%、45.8%、34.8%、「自分の名前や住所が書けるようになった」33.8%、24.7%、38.1%、「日本語で話せるようになった」31.7%、5.5%、43.8%、「人前でにでることに自身が持てるようになった」23.6%、34.6%、18.5%、「自分の人生をふりかえることができた」19.7%、32.6%、13.7%、「テレビを見てわかるようになってきた」12.5%、9.7%、13.8%、「差別はなくせると気づいた」12.2%、24.9%、6.3%、「近所づきあいができるようになった」10.6%、6.8%、12.3%、「新聞やチラシが読めるようになった」10.4%、14.1%、8.7%、「手紙を出せるようになった」9.3%、13.9%、7.2%、「子どもや孫に本を読んであげられるようになった」3.4%、5.3%、2.6%、「その他」8.3%、10.6%、7.3%となる。これをみてもわかるように、地区教室でかなり高い数値を示しているのが「知り合いがふえた」「人前にでることに自信が持てた」「人生を振り返れた」「差別はなくせると気づいた」などの項目であるのに対して、地区外教室で高いのは「名前や住所が書ける」「日本語で話せる」「近所づきあいができる」などの項目である。地区外教室では日本語の会話や読み書き技能の習得を教室での成果ととらえている人が比較的多いのに対し、地区教室ではこのような技能の習得もさることながら、個々人の精神的、内面的な問題について得るところがあったと感じている人が多いようである。
(5) 教室への要望
教室への要望については7つの選択肢を設け、複数回答を可とした(3つまで)。ここでもまた全体の比率が高かった項目順に全体・地区・地区外の比率を列挙すると「困ったときに相談にのってほしい」41.6%、40.6%、42.1%、「学習時間や時間帯をふやしてほしい」33.2%、17.8%、40.2%、「特になし」26.9%、41.5%、20.4%、「ていねいに教えてほしい」25.7%、19.9%、28.3%、「身近なところに教室を作ってほしい」22.5%、6.1%、29.8%、「教材費や受講料がかからないようにしてほしい」8.8%、13.1%、6.9%、「その他」3.7%、4.1%、3.5%となっている。地区・地区外教室ともに高い比率を示したが「困ったときの相談」で、いずれも4割を超えている。また地区教室でかなり高いのは「特になし」で、その他の項目は地区外教室に比してかなり低い数値となっている。概して地区教室の回答者には、比較的現状に満足している人が多いのかもしれない。逆に地区外教室の数値は全体的に高いものが多く、とくに「時間を増やす」「身近に教室を」は地区教室に比してかなり高い。遠距離からでも時間をかけて通学している地区外教室回答者の学習に対する切実な要求が感じられる数字である。