高田さんには、「ふれ愛教育推進事業」の一環として実施された96年度「学力生活総合実態調査」の結果を見て報告をいただいた。前回の89年度調査とは対象学年、集計方法等が異なるため、ストレートに比較はできないが、(1)学習理解度、生活状況、自己概念、社会観とも、前回の結果とあまり変わっていないこと。
(2)部落の小学生の勤勉性感覚や包み込まれ感覚が弱いこと等が挙げられる。とりわけ(2)の勤勉性感覚は、基本的生活習慣や学習習慣に大きく影響を与えるものであり、また豊かな親子関係、教師・生徒関係は子どもの精神の安定の源という意味において、学力形成の基本的条件の1つであるとの指摘がされた。
今後の課題では、
- 生活安定層の部落外への流出と生活困難層の滞留化傾向が進む中で、生活困難層・子育て困難層への支援策の必要性。
- 「勉強はやるべきもの」といった「学校知の正当性」が揺らぎ始めていることへの方策。
- 「自立」支援と共に、困難層への「保護」的な支援・ケアの必要性など、地域、学校、子どもの変貌を踏まえた方策の重要性が述べられた。
討議では、中・高では環境も異なり、自尊感情等の調査結果をそのまま高校生に当てはめ考えるのは難しいこと。極端な学力不振生徒の滞留と高校進学率の伸び悩みとの関係。部落外との学力格差の是正に向け部落の子の弱いところを徹底的に解明していく必要があることなどの意見が出された。
八木さんには、「府高同研」の30年の歩みを振り返りつつ、松原や柴島高校の総合学科や人権学習と結んだ「産業社会と人間」の取り組み等について報告をいただいた。
これらの取り組みの特徴として、(1)これまでの同和教育の継承と発展の中から生まれてきたこと。(2)しかも高校改革と結んで進められてきたこと。(3)その中で「人権と共生」を視点とした実践が深まり広がりつつあること。(4)「高校生の集い」が部落問題を中心に多文化共生やボランティア活動など多様な課題を話し合う場に成長してきていることなどがあげられた。
今後の課題では、
- 人権・同和教育のレベルアップ゜を中高・地域連携の広がりと深まりといった観点から全ての高校で追求していくこと。
- 参加体験型の手法や、セルフエスティームやエンパワメントといった概念を日常の授業や自主活動の中で、また教職員の研修の中で消化し深めていくこと。
- 18歳時点で多様な進路選択ができる力の教育。
の大きく3点が提起された。
討議では、中高連携に関して、とりわけ高校側が積極的に連携の体制を作っていくこと。従来の物理的地域から機能的地域としての連携。つまり自分達から課題をもとに地域を作っていくといった発想が求められていることなどの意見が出された。