人権教育には、差別と不平等の認識、学力形成と自尊感情・自己効力感の育成、共生感とアイデンティティの形成、カリキュラムの改革、の4つの側面がある。
現在の問題と課題を整理してみると、まず生活体験の貧困化等に見られる子どもの問題と課題がある。経験と経験が繋がらず、生活世界が断片化している。意味ある体験の積み重ねにより、「認知地図」を形成する事が必要である。社会観、人間観、世界観の形成についてはある程度、総合学習によって達成できるだろう。
次に、大人の問題と課題があるが、失業を初めとする古典的課題に加えて「新たな貧困層」の問題がある。「同和対策への依存主義」である。部落解放運動の視野に入らなかった落とし穴とも言える。
これまでの保護者組織は、自己教育の為の組織になり切れていなかったのではないか。生涯学習観の育成に向けての啓発が必要である。アメリカで貧困層やハイティーンの親への支えとして在る「ファミリーリソースセンター」のような所は同和地区において必要であり、学校と連動する事が重要である。私は現在の青少年会館においてそれができるのではないかと考える。
3つ目には教師中心主義の弊害や一斉指導に対する信仰など学校としての問題と課題がある。ここでの総合的学習の意義は大きいが、まだ理論的に整理されてない。最後に地域の問題と課題があるが、ここでは、人材の活用のみに終始した産業界の責任は大きい。教育を通じたコミュニティーの再創造がなされなければならない。
これまでの「子育て」を巡る議論を振り返る中で、今直面している問題とは何か。1つには実態の多様化があげられる。その中でも特に、「崩壊」家庭や生活困難層に対する保護の問題として、福祉でいうケアケース会議の教育版を作らねばならない。
2つ目にまがり角を迎えた地域の教育・保育運動がある。連携が空洞化し、園や学校の「抱え込み」と保護者の「当事者」意識の弱まりの中で、助け合いは崩壊し、しんどい層が最もしんどくなるという子育て困難層の孤立が見られる。
3つ目に子育て支援策の動向と保育所、青少年会館の問題である。子ども会を考えてみたとき、学童との関係で、今のように分離した形では続けられないだろう。
おそらく地域内外の子どもたちを対象とする「学童保育」に一本化していくのではないか。そこで問題になるのは、学童保育の対象にならない子どもの暮らしと遊びである。現在一部で実施されている「子育て講座」でも、本当に必要としている人が一番こないと言う問題を抱えている。
今後の課題であるが、「校区」を基盤にした施策や運動、保育・教育ボランティアなど、非営利組織とコミュニティの再生が望まれる。