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教育コミュニティ研究会・学習会報告
2000年5月13日

「教育的協働(学校と地域)の意義」

(報告)牧野紀之(大阪大学院生)

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近年、教育を論じる際に、「協働」という言葉がキーワードの一つとなってきている。「協働」とは、複数の行為主体同士のパートナーシップの一つのあり方であり、それぞれの行為主体が‡@利益の共有に基づき、‡A取り組みのプロセス全体に対して対等な役割と責任を持って関与していく、といった点に重点がある。また、「協働」という言葉が取り組みの一つひとつを生み出していくのを可能にするような、行為主体同士の関係を述べるために使われることもある。

 近年、教育における「協働」が注目されるのは、地域の教育力の弱体化が背景となっている。

 「協働」は、直接的には子どもたちの学びのために行われるものであるが、その副次的効果も無視できない。それは社会資本の蓄積といったことである。社会的資本とは、社会学者のブルデューやコールマンによって定式化されている概念であり、コールマンによれば、社会的資本とは「社会構造のある局面から構成されるものであり、その構造の中に含まれている個人に対し、ある特定の行為を促進するような機能をもっているもの」である。

 コールマンのいう社会的資本とは、別の言葉で言えば、行為主体の間に信頼のネットワークが形成されていることである。信頼のネットワークは、過去の相互交渉の歴史としてある。単に顔見知りである、というだけでもかなり違うであろうが、成功した「協働」の取り組みは双方に、より深いレベルの信頼をもたらすと考えられる。そしてそれによってもたらされる社会的資本は、次の「協働」を促進したり、その他様々な利益の源泉になるものと考えられる。(N.T)