調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究プロジェクト・報告書一覧 教育コミュニティ研究会 > 学習会報告
部会・研究会活動 <地域教育システムの構築に関する調査研究事業>
 
教育コミュニティ研究会・学習会報告
2001年12月4日

「NPOフュージョン長池から―子どもの育つぽんぽこな町づくり」

(報告)富永一夫(NPO FUSION長池理事長兼事務局長)

------------------------------------------------------------------------

 多摩ニュータウンは4市で構成されており、私たちの活動エリアは南大沢というところだ。そもそものきっかけは団地で「平成狸合戦ぽんぽこ」の上映会を行ったことだった。そして阪神大震災をきっかけに、もっと地域のつながりをということで見附が丘というところを拠点に800世帯ぐらいで活動をはじめた。

NPO促進法が施行されるようになったきっかけは阪神大震災や北陸のオイル流出事故でのボランティアの活躍だった。NPOという性善説で作られたあいまいなザル法であるが、そのザルの部分が健全な人には良い意味での幅になる。

 そして私たちのNPOは19.4ヘクタールある長池公園の拠点である八王子長池公園自然館の管理運営を任されるようになった。公園の管理運営をNPOが任されたというようなことは全国ではじめてである。たまたま法人格を持っていたからこのようなことが可能になったが、あくまで主役は地域住民であり、私たちは脇役であることに変わりはない。

? NPOとボランティアとの違いは、NPOは事務局があって継続的に事業が続くところであると解釈している。「住民に近すぎず、行政に近すぎず、お金を回すためには企業を作るがやりすぎると非営利活動の枠を外れる、このバランスをうまく保たないと20年続きません」とロンドンのNPOの人が言われた。

 地域での活動は「あるべき論」ではできない。今住んでいる人をそのまま受け入れるところからはじめる。はじめに企画書ありきではない。行政を頼るのでなく自分たちの町は自分たちで何とかするという構えがなければならない。町場に主役がいないところでは、行政側がいくらがんばってもどうしようもない。どうすれば町の中に人を発見できるかということがポイントだ。

 つらいのは、活動が新しいステージに移ったときにいろんな要因でこれまで活動できた人が活動できなくなるようなことが起こってくる。そのように人の気持ちが動くときにたいそうなプレッシャーがかかる。またある人がドロップアウトするときに巻き添えを出してしまうときもある。「来る人は拒まず、去る人にも温かく、再来の人は大歓迎」というようなことを笑い話のように常に話している。

 長池ぽんぽこ祭りは、町の一大イベントであるが、お金をかけないことが信条だ。見附が丘連絡協議会の主催で、NPOは支援する形で開催している。食べ物は受益者負担で原料のお金を回収する。自由に自立した活動を自由に自立した人たちがする。しかし、人を緩やかにつなぎとめて1つの塊にするためにインターネットを使ったということである。

 夏休み40日の学校連続開放に挑戦し、去年は40日のうち、37日63アイテムぐらいの活動をした。今年は、地域で連続開放に挑戦ということでたまたま歩いて5分の間隔にある長池小学校とネイチャーセンターと保育所の3つの拠点を使った。

 長池小学校以外の給食の方がピザづくりをしてくれる。町場のお父さんが手品教室をしてくれたり、学校をリタイアした先生が巣箱づくりを教えてくれたり、そういう人材がどんどんと生まれてくる。どこにでも必ず地域のためを思って地域のためになにかしたいという人はいるはずなのだ。私たちはパイロットランプの役割をするだけ。すると気のいい人が出てきて続いていく。

 私たちのミニコミ誌「ぽんぽこかわら版」は一万所帯をカバーできるようになった。1年に4回発刊している。インターネットはあるが一番強いのはアナログで、やっぱり紙が人間の気持ちを動かす。

 最後は顔を合わせてアットホームな人間関係を作るのが主で、インターネットは道具である。98年の4月からインターネットを使った理由は仕事の時間に追われているお父さんたちにも連絡が取れるからだ。やむなくはじめたインターネットであって、インターネットが先にありきではない。使う必要がなければ使わなくていい。私たちにはインターネットが必要なツールになってしまっただけだ。

 人が集まってくると地域に地域貢献型のビジネスが生まれてくる。住宅管理で一番したいことは窓口管理だ。管理事務所を地域のよろず相談センターに変身させたい。高度情報化支援事業、自分たちの力で高速インターネットを実現させた。

 そしてぽんぽこケータリングサービス、我が家のおすそわけ料理、家庭料理が我が家で食べられる。高齢者の暮らしやすい町にしたい。高齢になっても、家でおいしい料理を永久に継続的に食べられる。親が病気のときにも子どもに食べさせるご飯の心配をしなくていい。これが助け合いビジネスだ。コミュニティビジネスで一番必要なのは「ぽんぽこな心」だと思っている。

 どんな手法があってもいいが、それを用いる価値観が大切だ。完全にニュートラルに活動拠点を手にして、誰に対してもニュートラルな位置付けをしたかった。地域の人にも政治家にもニュートラルな活動拠点になることが必要だ。

 この後10年持つことがあれば百年持つかもしれない。100年の壁を超えてみたいと思う。住民は主人公、NPOも応援団、私は本来は裏方である。活動する人たちが輝かねばならない。住民が、企業が、行政が、マスコミが、学者が、多くの人がきらきらきらきらとよってくる。そこで本当に地域が活性化する。

(N.T)