調査研究

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部会・研究会活動 <地域教育システムの構築に関する調査研究事業>
 
教育コミュニティ研究会・学習会報告
2002年6月3日
完全学校週五日制実施下における青少年会館の取組

松原青少年会館

<1>松原青少年会館の「今年度の改革 〜3つの転換〜」

 地対財特法期限切れと完全学校週五日制の実施に伴う松原青少年会館の改革を次の「3つの転換」として位置づけている。

 まず、「活動内容の転換」。昨年度まではいわゆる被差別部落更池の児童を対象とした事業であったが、今年度から松原市内の全域に広め、募集をかけた。市の広報誌にも載せるなど、各関係諸機関に周知徹底した。

 小学校低学年では、昨年度まで「つばめ会活動」として地区の低学年児童のみを対象に、月〜金まで日常活動をおこなっていた。今年度から「子ども広場活動」と改称し、地区内外の児童が在籍している。今までなら布忍小学校校区の部落の子だけであったのが、5つの小学校区の児童が参加している。遊びを中心としながら、文化的な体験やスポーツ活動を通しての出会いを大切にし、仲間づくりをどう組織していくのかという意識を根幹に持った上で指導にあたっている。

 高学年も、今年度より「ふれあい広場活動」と改称し、週2回(月、水曜日)の放課後活動とし、とりわけ水曜日には、太鼓コース、工芸コース、手芸コース、卓球コース等の講座を実施している。

 子ども会活動については、基本的に部落の親が担っていけるように青少年会館としても支援していっている。

 毎週土曜日の午後には、小学生を対象にした「わくわくクラブ等の活動」を実施している。この活動も昨年度までは布忍小学校校区に限定したものであったが、今年度より松原市全域の低学年から高学年の全小学生児童を対象にしたものに転換し、現在5小学校区から120数名の児童が参加している。

 中高生を対象にした事業では、若者に人気のあるバスケットのスリーオンスリー大会やストリートダンス、ユース(高校生)セミナー等の講座で幅広く多様な人材に会館へ集まってもらっている。多様な体験学習等を通してお互いに学び合う「出会い」を大切にしている。

 次に「指導体制の転換」。とりわけ高学年の活動の講師として、地域のおじいちゃんやおばあちゃん、青年等、いろんな人に協力をしてもらいながら体験学習の充実を目指している。青少年会館で活動してきた青年や大学生が、バスケットボールを教えてくれる等、青年が活動へ参加していることも大きな特徴である。

 最後に「組織支援体制の転換」。今年度の改革に向けて3年間ほど「地域子育て改革実行委員会」という組織で話し合ってきた。残していくところは残し、なおかつ大胆に変えていこうといことで、支部、教育を守る会、学校、会館等の地域の関係諸機関が話し合ってきた。その中で活動内容を作ってきたといえる。

 また、この3月に布忍小学校「学校五日制推進委員会」が母体となり「地域学校実行委員会」が立ち上げられた。PTA会長を中心に、夏季休業中以外の毎土曜日午前中は地域とPTAで子どもたちを見ようと、更正保護婦人会、スポーツ振興会、PTA等の各組織で分担し、子どもたちが学校五日制をエンジョイできる場を作っていこうというのである。「学校五日制推進委員会」が「地域学校実行委員会」と名を変え、地域教育協議会、自治会等、様々な組織を巻き込んで取り組んでいくようになった。そういった組織体制をバックにしながら改革を進めてきた。

<2>高校生の自主活動の取組

 2点目に、高校生を中心にした自主活動の支援を青少年会館としてどう進めてきているのかに焦点を当てて報告された。

 小・中学校までは、まだ青少年会館に集まって来るが、高校生になるとなかなかむずかしい。これまで松原高校を地元高校としてきた歴史がある。しかし、1996年に総合学科になったことが大きな転換点となり、結果として、部落の高校生が市内外の10数校ぐらいに進み、多様な進路をとりはじめている。なおかつ、今年度から解放奨学金がなくなっていく。これからの高校生を対象に、どういう事業を会館として行なうことが大事なのか等、いろんな形でリサーチをし、議論をする中で、取組を進めてきた。

 また、これから部落の高校生は、部落外の多様な人々と積極的に交流することが求められている。外の風を受けながら、松原高校以外のいろんな高校生ともつきあえる関係をどのようにして作っていくのかという問題意識で以下の取組をはじめた。

 1999年、市内の高校生に、「出会い・共感・自分発見」というテーマで、いろんな講師を招き、すべてをワークショップでやろうというプログラムを青少年会館の事業として実験的に提案した。市内外の各高校にも足を運んで企画書を学校の教頭先生や人権担当の方に説明させてもらった。ボランティアクラブなどの生徒を高校の枠を越えて地域で交流できる場を作っていきたいということを説明する中で、当初予定をしていた21名を越えて31名の申込があった。これが、「ユースセミナー」の試行であった。

 セミナーの試行の中で次のようなことが見えてきた。高校生以上になると、なかなか「寄る場」がないといわれる。しかし、「場」をうまくセットしていけば、たまっていけるということで、「たまる・はまる・うまれる」というコンセプトを出していった。「やりたいことやいろんな出会いがある、その場が青少年会館!」「自分が好きなバンドやダンスやユースセミナー等、いろんなことが表現したり交流できる!」と。

 2000年度に、「君は君の花を咲かそう〜自分らしく生きる〜」というテーマで3回の連続講座をユースセミナーとして持った。参加したメンバーに、続けて自分たちでセミナーを企画してみないかと提案・募集してみたところ、10名近いメンバーが集まった。「ソウルアンドスピリッツくらぶ(S&Sくらぶ)」というかっこいい名前をみんなで作り上げて、その年の秋の企画を始めていった。やりたいことを自分たちで何回も議論し合った。会館の指導者も協力者として入ったり、NPOの方にファシリテータとして入ってもらったりもした。このように、いろんな仕掛けをしながら、「ネイティブアメリカンの世界」「青少年犯罪を考える」「性同一性障害はおもしろい」等々のいろんな違いのある人たちを講師に呼んできて、打合せからワークショップの当日の運営まで自分たちでやるという流れを作ってきた。

 昨秋は、S&Sクラブ企画「連続セミナー〜心ってなに?〜」が大阪府「まなび・ふれあい・まちづくり」プロジェクトのコンペに当選し、「心」に焦点を当てて、さらに多彩かつ充実したワークを展開した。今春、「第2回ユース・ハーモニー2002」としてその取組の発表をおこなった。会場には、市内4高校を含む府下12高校からの高校生、大学生、市民等の百五十名を越す参加できわめて盛況であった。

 その後、S&Sくらぶによるホームページの作成・発信をおこなったところ、新しい出会いを愉しむたくさんの人による連日のアクセスがある。また、中高校生を含む若者たちやOL・主婦等、多様な人々による「掲示板」を通じた活発な討論(生き方・進路・恋愛・悩み等々)が続いている。