1.意義
- 1970年代に入り、高校進学率の90%をこす状況に象徴されるが、学校と地域の関係が大きく転換し、学校に於ける価値観(文化)が地域のそれと切り離れて上位に立ち、結果としては今日の学校自体の硬直化を生み出してきている。他方、地域自体も社会的諸条件の中で、かつての豊かさを損ない始め、子育てのみにはとどまらない家庭の様々な不安定さを生んでいる。
- こうした中で学校の再生(人権教育や学力保障も含めて)、家庭の安定化のためにも、今日の段階を踏まえた豊かな地域の教育力の創造は不可欠である。これは被差別部落にとっても同様であり、今日の解放教育の前進にとっても大きなテーマである。
- 98年9月の中央教育審議会答申では「地域コミュニティの育成」「地域コミュニティの拠点としての学校」が、1999年1月の大阪府社会教育委員会議の提言では「教育コミュニティ」の形成が、7月の青少年問題審議会(首相の諮問機関)では「地域コミュニティ」の形成が指摘されている点にも、その認識の重要性が現れている。
- しかし、いかなる「地域」でいかなる教育力をどのように形成していくのか、そして、こうしたプロセスに学校や保育所、図書館などの公的機関、地域住民、そして行政がそれぞれどのような役割を担い「協働」していくのか。そのような具体的な構想は全く明らかにされていない。この点を中学校区レベルに焦点をあて少しでも明らかにしていくことが大きな目的である。
-----------------------------------------------------------------------------
2.調査研究事業の内容
1. 大阪府下のいくつかの中学校区を選定し、その具体的な取組み(学校のみならず、保育所、地域住民、企業、民間団体etc.)を調査、分析する。→「ふれ愛教育推進事業」や各市の取り組みをふまえて、「教育コミュニティ」づくりの条件を明らかにする
2. 具体的な調査研究の柱〜インタビュー調査を中心に
◆就学前〜保育所、幼稚園、家庭
ア)同和地区内外の子育て困難層の現状。共通点と地区の特徴。
イ)同和保育の改革
- 従来の加配は廃止へ。家庭支援推進保育事業、研究指定園事業の現状
- 地区外からの入所状況
- 同和保育料の廃止、予想される家計への影響は?
ウ)「子育て支援センター」、保育所や幼稚園での子育て支援の取り組み
- 地区の子育て困難層への支援
- 地区外での子育て支援のニーズへの対応
- 子ども家庭センター(児童相談所)などの専門機関との連携
- 園や保育所と保護者がともに活動する取り組み
エ)「○○市エンゼルプラン」の進捗状況
◆地域に開かれた学校(保育所、幼稚園)〜学校と地域の信頼関係
ア)PTAや保育所保護者会の活動
イ)保護者や地域住民の教育参加
- 「職場体験」や「総合学習」などへの協力
- 日常の教育活動(授業、学校図書館、クラブ活動など)への関与
- 「学校支援人材バンク」の登録状況や活動状況
- 授業改革と家庭での学習をつなぐ取り組み(学力保障に関わって)
ウ)学校の「総合的な学習」
- 「総合的な学習」の学習観(学校主導か学校と地域の「協働」か)
- 取り組みの状況(特に保護者や地域住民の参画に関して)
エ)学校の評価
◆地域における教育活動
ア)「地域教育協議会」づくりの芽
- CCPの「推進本部」となった組織
- 「キーパーソン」はどのような人(あるいはグループ)か?
- 「拠点」はどこか、学校、青少年会館、公民館等?
- 自治会、校区子ども会、青少年健全育成組織など、既存組織の活動状況
- 障害者作業所、文庫活動、子育てサークルなど、ボランタリーな活動の状況
イ)幼稚園、保育所、小中学校などのネットワーク
- 教職員、子ども、保護者の交流
- 教育内容の連携(教科学習、総合学習、保育所/幼稚園での就学前教育)
ウ)地域の人や組織のつながりをつくるイベント
- 伝統的な祭りや行事
- 学校での校区フェスティバル
- ○○地区教育研究集会
- 「ふれ愛教育推進事業」以後新たに始まったものなど
◆中学校区レベルでの人権文化の町づくり
ア)ふれ愛教育推進事業(CCP)の成果とこれからの課題
- 小中学校、幼稚園・保育所の交流・連携は進んだか
- 教育内容づくり(各小学校間、就学前と小学校、小学校と中学校)
- 人の交流(子ども、教職員、保護者)
- 親の自己学習活動&子育て支援など
- 各教委から中学校区への支援(物的・金銭的・人的条件整備、情報提供など)
イ)地域福祉からのアプローチ
◆青少年会館(子ども会、親組織も含めて)の特色・役割
ア)子ども会活動
- 地区の子ども会と地区外の校区子ども会の関係
- 青館の低学年子ども会と地区外の学童保育(留守家庭児童会)の関係
イ)親組織の活動
- 解放子ども会の保護者組織の現状
- 校区子ども会の指導
ウ)青少年会館の改革
- 子ども向け事業や講座の現状(広報、地区内外の参加、人材発掘など)
- 指導体制の変化
- 社同指体制の変更(原則3名)。移行はスムーズにできそうか?
- 高校生、青年、地域住民などのボランタリーな活動は進んでいるか
エ)「全国子どもプラン」の事業例
オ)各市の生涯学習推進体制、その中での青館の位置づけ
3. 全国の興味深い取り組みの事例研究、問題意識の共有と分析視点の明確化のためにオープン研究会を随時開催する。
-----------------------------------------------------------------------------
3.体制
代表/池田寛・大阪大学
高田一宏・姫路工業大学、他6〜7名
-----------------------------------------------------------------------------
4.期間
2000〜2003年度