調査研究

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「北条太鼓」で学校改革

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 北条中学校では、北条中校区の教育に関わる小中はもちろん、保育所や幼稚園、青少年センターなどの教育施設、自治会・町会や青少年指導員・子ども会などの地域の方々が集まって校区青少年育成会議を構成している。そこで確認されたその後の地域での懇談会をきっかけに中学校が抱える課題はもちろん、小学校で抱える課題を含めた校区の教育課題を地域の人々や保護者が理解し、多くの人々に協力してもらうことで学校の「荒れ」を克服しようとしている。

 97年から始まった校区青少年育成会議や各町会ごとに行われる「地区懇」では、地域の人々から学校に対して辛らつな意見が飛び交った。しかし、教師たちはそのような学校に対する不信感を目の当たりにすることを覚悟しており、現状を理解してもらうことにつとめた。地域の人々はおどろいたそうだ。このことが、すでに展開されていた「ふれ愛教育推進事業」=北条中校区の地域教育協議会の結成、さらに「北条ふれ愛フェスティバル」へとつながっていく。

 北条中学校区には古くから旧村で行われるだんじり太鼓があった。しかし、町会単位で組織され、旧村以外の人は参加しにくい状況にあった。最近になって、それまで町会によって微妙に違っていた各町会の太鼓を合わせ、「北條太鼓」と名付けてたたくようになった。また、その太鼓のまわりには子どもたちも集まってきた。「この太鼓に校区全体の子どもが関わってもらったらどうか」「誰でもたたける太鼓ができないか」ということで、各町会の「だんじり保存会」の太鼓部をまとめて、98年度に「北條太鼓保存会」が発足した。熱心な地域の人たちは各小学校や中学校に出かけて子どもたちに太鼓を教えてまわり、旧村の子供たちだけでなく、やる気があれば新興地域の子供たちにも太鼓を教えるようになった。

 さらに「発表する場を作れないか」ということで、青少年指導員主催のロックバンドに「北條太鼓」を参加させることとなった。それは、「北條太鼓」をメインに地域文化を発信する場にしようと、学校と地域が共同して行う「北条ふれ愛フェスティバル」へと発展していく。

 一方、中学校の方でも基本9項目を中心とした集団づくりや「自分たちの学校は自分たちで」と生徒に働きかけてはじめた生徒総会での意見交流の取り組みがすすめられた。97年の生徒総会では約60名近くの生徒に自分たちの仲間や学校に対するそれぞれの思いを全員の場で発表した。現在、この生徒総会は「北条中の心臓だ」と発表するほどになり、前後期の2回100名以上の子供たちが意見発表するようになっている。

 そうした取り組みの中で、約一年後には生徒は着実に落ち着きを見せ、「俺のクラスは居心地がええねん」という子どもも現れた。

 このような取り組みは中学校に限らない。例えば校区の北条小学校でも、「中学の荒れは小学校の責任でもある」と受けとめ、「北条中を立て直そう」という意識が教員の中で共有できたという。そして、「地域をほこりに思える学校づくり」をめざし、地域学習で地域のいいところを見つける学習を行った。

 これらの取り組みを通じて、子どもたちは「われわれの学校」「われわれの地域」という思いを持ちつつあるようである。また、地域の人々の間に「おらが学校」という意識が浸透してきていることに教師は手応えを感じている。