調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究 部会・研究会活動 職業と世系に基づく差別」に関するプロジェクト > 研究会報告
2006.06.26
部会・研究会活動 < 職業と世系に基づく差別」に関するプロジェクト>
 
職業と世系に基づく差別」に関するプロジェクト
2006年2月19日
ラテンアメリカにおける社会的差別の諸相について

崎山政毅(立命館大学文学部)

 崎山報告は「民族」と「国家」の関係に注目し、植民地期から今日までの「ラテンアメリカにおける社会的差別の諸相」について概観する。そこで、人・モノ・カネ・情報を中心としたグローバリゼーションが拡大する中で「職業と世系」と差別との歴史的関係を「中心」と「周辺」の構図に基づき3つの新たなモデルを想定し、検討した。

 コスタリカにおいて1980年代に勃発したニカラグア内戦の結果として流入したニカラグア人「不法在留者」に対する差別の激化。ペルーでは、60年代に農村部から都市部へ流れ込んだ先住民である「チョロ(蔑称)」が70年代になり国家政治の主要な担い手となる。

 こういった「中心における新たな周辺の形成と周辺における新たな中心の形成」を第1のモデルとする。つぎにペルーの山岳地帯におけるスペイン系白人と先住民との間で生まれた「メスティーソ」が先住民化し差別的価値規範の意味転換が起こる。この一方で、先住民は旧来の社会的位置から排除されたことにより自己の文化破壊が起こっている。

 この事例は「周辺における中心」という第2のモデルを表している。最後に、グアテマラ、メキシコ・チアパスの大量殺戮の対象としての先住諸民族、加えて少数の白人・上層メスティーソ資本家・大地主と先住民貧農・土地なし農民との対立は、人種と被支配階級の相関関係の強化のもとで、強化されており「周辺の周辺化」に関する第3のモデルを提示する。こうした「中心」と「周辺」の関係に関する3つのモデルより、「職業と世系」に差別についての問題を考察することが今後重要になると崎山報告は示唆する。

「『職業と世系に基づく差別』に関するアンケート調査と中間とりまとめ等」について

友永健三(部落解放・人権研究所)

 友永報告からは、本年1月にドゥドゥ・ディエン特別報告者が日本のマイノリティについてまとめ人権委員会に提出した「現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連する不寛容」に関する報告書の概要と評価をえた。

 さらに「職業と世系に基づく差別」に関する特別報告者である横田・鄭両委員が昨年に配布したアンケート調査に対する部落問題に関する回答についての説明があった。

 ディエン特別報告者の報告書について、部落問題が盛り込まれたこと、日本のマイノリティが教育、雇用、健康、居住などへのアクセスに置いて周辺化した状況で暮らしていること、国政において「不可視」の状態に置かれていることを指摘している点を評価する。

 さらに、実態調査の実施、差別禁止法令の制定、国内人権委員会の設置、歴史の記述見直しと部落産業や文化が果たした役割を教育していくことを盛り込んだ勧告について高く評価した。問題点として、事実誤認や不正確な表現部分が含まれている箇所があることが指摘された。

 アンケート調査に対する回答について、回答内容を確認したのに加え、日本がこれまで展開してきた活動や運動の実績と課題を明らかにし、「グッド・プラクティス(良き実践例)」を示すことでそれを他の国の参照としてほしいとの横田委員からの助言を受け、部落解放同盟が実施してきた活動・運動で成功事例を示し、どこまで成果があり、何が課題として残っているかを明示する必要があることを確認した。

(文責:友永雄吾)