日本の部落問題、南アジアに存在しているダリットに対する差別問題、並びにアフリカに内在している同種の差別問題は、2000年以降、国連人権小委員会にて「職業と世系に基づく差別」として1つの議題になっている。また、国連人種差別撤廃委員会やその他国連諸機関による当該差別撤廃のための取り組みにより、この問題は世界的にも注目されてきている。
日本国内においては、1970年代中頃から、部落解放同盟が働きかけたことにより、部落問題に関する国際的な討議が主要な国連機関でなされるようになった。その後、IMADR(反差別国際運動)やIDSN(国際ダリット連帯ネットワーク)の結成により、世界各国に存在する類似した差別に苦しむ当事者との連帯が拡大し始めている。
以上のような取り組みを踏まえ、部落解放・人権研究所としては、
- 日本における部落差別撤廃に向けた取り組みの普遍化、
- 国連人種差別撤廃委員会における「世系に基づく差別」や国連人権小委員会における「職業と世系に基づく差別」に関する取り組みのフォローアップ、
- 未解明の国における当該差別に関する研究、
- 2007年の小委員会に対する包括的な報告書作成への積極的な協力
等を目的とし、「職業と世系に基づく差別」に関するプロジェクトを立ち上げることとなった。