調査研究

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2003.09.18
<差別意識・偏見の構造分析調査研究事業>
 
部落問題に対する意識形成調査研究会報告書
本報告書の概要
  本報告書は、被差別部落出身ではない人々に対して行った聞き取り調査をもとに、それら人々の意識の丹念な記述と、意識の構造やその背景について分析することを目的としている。

  1章「被差別部落に関する意識と人権意識の形成過程」では、社会心理学における「関与」概念、産業・組織心理学における「多重コミットメント」概念を用い、「抽象的な意識」と「具体的状況での行動の選択」との関係、反差別に結びつく意識の形成について検討している。得られた主な知見は以下の通りである。

<関与の強さがもたらす影響>
  具体的な行動の選択にまで影響する、被差別部落に関わる意識の形成や変化には、その問題に対する関与の高さが非常に重要である。被差別部落に対する排除・回避の方向であれ、反差別の方向であれ、関与の高さは、被差別部落に対する意識の形成に大きな影響を及ぼす。

<領域の多重生がもたらす影響>
  被差別部落に対する意識は、一元的ではなく、人々がコミットするさまざまな領域という多重性をもっている。こうした領域の多重性は、その領域内での、役割、人間関係、規範、常識などの背景的文脈によって規定されており、ある領域での反差別の意識が、必ずしも他の領域での反差別の具体的な行動の選択に結びつくとは限らない。

  2章「反差別に結びつく意識の形成要因」では、人間と人間との関係、社会関係という切り口から反差別の意識と行為が生み出される要因・条件を明らかにすることを試みている。分析から得られた知見は以下の通りである。

<緊密な人間関係>
  「部落にかかわりになるな」「差別してはならない」など、部落に関わる規範やその他様々な情報が発せられた時、それを受容するか否かは、規範を保持し、情報を発する主体との関係がいかなるものであるかに大きく影響される。規範や情報が差別的であっても、反差別的であっても、緊密な人間関係、親密な人間関係、信頼に満ちた関係が形作られている間では容易に伝達、受容されるのである。逆に人間関係が疎遠であったり、信頼を欠いていた場合、それらの伝達、受容は困難になる。

<「部落出身者?部落外出身者」の接触>
  部落出身者との対面的接触は、一定の条件下においてであれば、部落に対する意識を肯定的に変化させる契機となる。効果的な接触の条件とは、両者が平等な立場で協同活動をすること、その活動を支持するような制度や体制があること、そしてこの協同活動が十分におこなわれることなどである。

<「反差別役割」の付与・取得>
  人権啓発室室長などの地位など「反差別役割」を付与し、役割遂行を促すことは、一定の条件下においてであれば、「反差別」の行為と意識が導き出される契機となる。「認知を先に変えて行動を変えさせるよりは、行為・活動のほうを先に変えさせて、それに伴って認知が変わるほうが効果的な場合が少なからずある」[波多野,1995,8]ということである。

  これら分析から得られた知見に基づき、各章において啓発等の実践への提言を行っている。