調査研究

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2008.05.26
部会・研究会活動 <部落問題に関する意識調査研究プロジェクト>
 
部落問題に関する意識調査研究プロジェクト・学習会報告
2005年4月23日
部落問題に関する意識調査の展開と課題

報告:内田 龍史(部落解放・人権研究所)

 これまで行政を中心に、同和問題を解決するための施策の一環として、膨大な数の部落問題に関する意識調査が行われてきた。2002年3月、国レベルでの同和対策事業が終了したことをうけ、各方面で「同和から人権へ」の政策転換がはかられ、意識調査においても「同和問題に関する意識調査」から「人権問題に関する意識調査」へと課題を拡大した調査が行われつつある。

 しかし、「同和行政から人権行政」へ、「同和教育から人権教育」への転換と同様、同和問題に関する意識調査から人権問題に関する意識調査への転換は、必ずしも同和問題に関する意識調査の到達点と課題を明確にした上でなされているわけではない。このような状況において、これまで行われてきた部落問題に関する意識調査の成果と課題を明らかにすることは、以下の二点において重要だと考えられる。第一に、今後行われる部落問題・人権問題に関する意識調査を展望する上で、明らかにすべき課題が整理されること、第二に、市民啓発や同和教育において、重点的に行われるべき課題が明確になること、である。

 部落問題に関する意識調査は、戦前においても行われていたが、本格的な調査のきっかけとなったのは、同和対策審議会答申の資料となる、同和対策審議会調査部会によって行われた「同和地区精密調査」である。この調査によって、以降の調査枠組みの原型が完成されたと言える。1984年には、地域改善対策協議会の意見具申「今後における啓発活動のあり方について」により、部落差別を解消するための重点を「心理的差別」に置かれたこともあり、各地方自治体による意識調査が急増することになる。

 これら膨大に行われている調査報告書を分析するに当たり、忌避的態度の状況はどのようなものか、忌避的態度に影響を与える要因群はいかなるものか、時代によって意識は変化しているか、地域によって意識は異なるのか、意識調査の枠組みを検討することによって把握できる、部落問題の社会的構築過程はいかなるものか、意識調査結果が与える政策的影響はどのようなものか、など、さまざまな観点から研究を行うことが可能であろう。

(文責:内田龍史)