部落問題に関する意識調査研究プロジェクトでは、都道府県・政令指定都市が行った部落問題に関する意識調査について、様々な角度から分析をすすめていくうえでの検討を行っている。今回は、初期の調査にあたる1970年代以前の調査および、80年代以降の特徴的な調査についての紹介を、プロジェクトメンバー(竹村一夫・時岡新・齋藤直子・内田龍史)で分担し、報告を行った(以下敬称略)。
70年代の調査については、大阪市・徳島県・福岡県・和歌山県の調査について検討を行った。大阪市の調査(『部落問題に対する認識と態度』)は大阪府同和対策室の編集で、上田一雄が中心となって1970年に発行された最初期の調査である。面接調査であるが、オープンアンサーを多く取り入れており、資料的価値の高いものとなっている。
しかし、別冊となっているはずの本報告書の存在を確認することができていない。徳島県の調査(『同和問題を早期解決するために』1975年発行)は、意識変数間のクロス集計を行っている点が特徴的である。福岡県の調査(『「同和問題」についての意識調査』1977年実査)は、山本登らが行った調査であり、その後の同和問題に関する意識調査の基礎的な調査枠組みとなったものである。和歌山県の調査(『社会同和教育資料 同和問題アンケートの実施』1978年発行)は、留置法が用いられており、回収率が極めて高いのが特徴である。
80年代の調査については、佐賀県・鹿児島県・群馬県・長野県・栃木県・名古屋市の各調査について検討を行った。佐賀県(『同和問題についての意識調査』、1982年実査)・鹿児島県(『同和問題についての意識調査』1984年実査)の調査は、村越末男が中心となって行った調査であるが、同時期に行われた名古屋市の調査(『同和問題と市民の意識』1980年実査)設計と同様であり、比較が行われている。
栃木県(『同和問題意識調査報告書』1980発行)の調査は、磯村英一・横島章らによって行われた調査であり、「他人を評価する基準」などが調査項目に用いられている。群馬県(『同和問題に関する意識調査報告書』1980発行)・長野県(『県政世論調査』1981発行)の調査は、中央調査社が行った調査であり、部落差別についての考えなどが問われている。
次回は、継続的に調査が行われている府県・政令指定都市の意識調査について検討を行う予定である。
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