部落問題に関する意識調査研究プロジェクトでは、府県・政令指定都市が行った部落問題に関する意識調査について、様々な角度から分析をすすめていくうえでの検討を行っている。今回は、80年代以降継続的に調査が行われている意識調査報告書の紹介を、プロジェクトメンバー(竹村一夫・益田圭・時岡新・齋藤直子・内田龍史)で分担し、報告を行った。今回取り上げたのは、群馬県(3回継続)・栃木県(3回継続)・徳島県(5回継続)・福岡県(4回継続)・和歌山県(4回継続)・名古屋市(4回継続)である。
多くの意識調査は、近代化にともなって部落差別は解消するという前提のもとに、風習に対する意見を問うているが、風習を当然のことと思う割合は年を追うごとに低下している。風習に対する意見と同様に、部落出身者に対する結婚忌避的態度を問う項目についても、忌避的態度は年を追うごとに低下する傾向が見られる。このような傾向から、結婚忌避的態度に関しては部落差別は、数値上解消傾向にあるように見える。
しかし、部落あるいは同和地区といった土地に対する忌避に目を向けると、校区に部落・同和地区を含む家を買うのを取りやめることを差別だと思うかどうかについては、福岡県・徳島県ともに「差別である」と断定せず、「どちらともいえない」と態度を保留する傾向が見られる。結婚という人に対する差別の変化だけではなく、土地に対する差別の変動も、今後確認すべき重点課題であることが確認された。
次回も引き続き、継続的に調査が行われている府県・政令指定都市の意識調査について検討を行う予定である。
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