これまで、部落問題および人権問題に関する市民意識調査は全国各地で数多く行われてきた。しかし、豊富なデータの蓄積があるにもかかわらず、同一の都道府県・市町村の経年比較がなされる程度で、地域間の比較などについては十分に活用されてきたとは言い難い。
そこで本研究会では、調査間の比較を容易にするために、これまでの市民意識調査のデータベースを構築し、データの活用を促進することを目指している。
これまで本研究会では各都道府県の意識調査を検討し、それぞれの特徴について分析してきた。その成果を用いて、今回の研究会ではデータベース化の方法について議論を進めた。
報告では、データベース作成用ソフトを用いたデータベースの草案が示された。具体的には、データベースは「調査概要テーブル」「報告書テーブル」「質問文テーブル」がそれぞれ構築され、それらに報告書のタイトル・調査年月日や、実際の質問文、選択肢、調査結果の数値を入力することになる。質問文は、大項目・中項目・小項目の3段階に分類する。それによって、同一内容の質問文を一括して検索し比較することが可能になる。
報告後の議論では、実際に質問文を大項目・中項目・小項目に落とし込む場合に生じる問題について検討を行った。意識調査は、世論を反映するなどして、調査主体および調査者による調査の意図・デザインが年々変化していく。そのため、まったく新しい調査項目があらわれたり、類似の質問文でありながら調査の意図が異なるなど、分類が難しい調査項目が少なくないことが明らかになった。当面は、データベースへの入力作業と並行して、分類の難しい項目の扱いについて議論をすすめていく必要がある。
データベース化によって、都道府県および政令指定都市でおこなわれた意識調査について、同じ質問項目について調査間の比較検討が非常に容易になる。また、同一の都道府県・政令指定都市の経年比較が容易になるため、市民の意識の変化をたどることができる。最終的には、作成されたデータベースから、調査間の比較検討をおこなうことで、人権問題に関する重要課題を策出することが本研究会のめざすところである。
(文責:齋藤直子)
|