調査研究

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2008.05.26
部会・研究会活動 <部落問題に関する意識調査研究プロジェクト>
 
部落問題に関する意識調査研究プロジェクト・学習会報告
2006年1月27日
2000年以降の各地の意識調査動向について

内田 龍史(部落解放・人権研究所)

 近年、部落問題に関する意識調査枠組みに、大きな変化が見られる。「同和問題」に関する意識調査から、「人権問題」に関する意識調査への転換が生じている。このような背景には、部落問題を含め、広く人権諸課題に取り組むための「人権擁護施策推進法」(1996年)や「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(2000年)の制定があげられる。

 法務省人権擁護局は、法を効果のあるものとするために2002年に『人権教育・啓発に関する基本計画』をとりまとめたが、そこで取り上げられた各人権課題(女性・子ども・高齢者・障害者・同和問題・アイヌ・外国人・患者・刑を終えて出所した人・犯罪被害者・インターネットによる人権侵害)に従って、内閣府は「人権擁護に関する世論調査」を行っている。この調査は、各自治体が行う意識調査の枠組みに、大きな影響を与えている。

 このような状況のもと、2000年以降に行われている意識調査は、(1)従来型の部落問題を中心とした意識調査、(2)他の人権問題も視野に入れつつ、部落出身者に対する忌避的態度をとりあげるなど部落問題にウエイトを置いている人権意識調査、(3)部落問題を単に人権問題のひとつとして位置づけた人権意識調査の三つのパターンに類型化することができる。

 府県・政令指定都市レベルの調査において、(1)(2)(3)をそれぞれ分類すると、(1)については、大阪府(2001)・和歌山県(2001)・川崎市(2001)・神奈川県(2002)・鳥取県(2002)、福岡県(2003)、(2)については、栃木県(2001)・群馬県(2001)・北九州市(2001)・岐阜県(2002)・京都市(2002)・長崎県(2002)・高知県(2003)・石川県(2004)・愛知県(2003)・大分県(2004)・佐賀県(2004)・鹿児島県(2004)、(3)については、埼玉県(2001)・滋賀県(2002)があげられる。

 このように多くの調査が行われるようになった背景には、先述した『人権教育・啓発に関する基本計画』や、各地方自治体の人権条例の施行があると考えられる。ただし、(3)の調査は、部落問題に関する質問項目が2〜5問と極めて少なく、意識調査の目的である心理的差別を明らかにすることができていない。また、(2)の調査も、部落問題以外の人権課題については2〜3の調査項目にとどまることが多く、人権課題を深く追究できる調査枠組みとはなっていない。人権全般ではなく、個別の領域ごとに課題を把握するための調査を行うことが求められる。

(文責 内田龍史)