同和対策審議会答申の資料となった、同和対策審議会による部落問題に関する意識調査を皮切りに、各地方自治体において、部落問題に関する意識の状況、すなわち「心理的差別」の状況を把握するための調査が行われることとなった。その後も部落差別意識の解消に向けての効果測定が何度も行われており、近年では人権問題に関する意識調査と課題を拡大した調査が行われている。しかし、膨大な数の調査が行われているものの、「何が、どこまで明らかになってきたのか?」という問いに答えることができるような、総括的な研究はこれまでほとんど行われてこなかった。
このような現状において、これまで行われてきた部落問題に関する意識調査の成果と課題を明らかにすることは、以下の三点において重要だと考えられる。第一に、今後の意識調査を展望する上で、明らかにすべき課題が整理されること。第二に、市民啓発や同和教育において、重点的に行われるべき課題が明確になること。第三に、意識調査のアーカイブ作成を行うことで、部落問題に関する基礎的研究に寄与すること、である。
研究会では、各種の意識調査報告書を多様な角度から検討することによって、3年間にわたってこれらの作業に取り組む予定である。その成果は、部落問題を把握するための基礎的研究となるだろう。
(文責:内田龍史)