現在、若者をとりまく状況は極めて厳しくなっている。これまでのように新規学卒者が正規職員として就職していくという日本独特の「学校から職業への移行システム」が機能不全を起こし、その結果、学校を卒業して正社員となって働き、安定した生活を営み、結婚して子どもを育てる、そうした「大人」として「当たり前」と認識されてきた将来像を、少なくない若者が抱けなくなりつつある。
高い若年失業率や、フリーター・ニートの増加などがその典型だが、このような状況が生じた背景には、長期にわたる不況も大きく影響を及ぼしているが、製造業からサービス業への産業構造の転換や、高校生に対する求人の大幅な減少など、若者をとりまく社会的条件の構造的変化が存在している。さらに、若年者の職業観・労働観の変化もある。
加えて、階層的不平等の拡大、学力格差の拡大も大きな要因である。家庭背景が厳しい人、学力・学歴的に厳しい状況におかれている人など、相対的に低い社会階層的背景にある若者が、失業率が高く、フリーターやニートになりやすいことが、これまで我々が行ってきた調査研究や、最近の研究から明らかになっている。また、部落の若者など、マイノリティの若者は生活を営んでいく上での困難に加えて、差別の問題に直面することもある。
このような状況の下、家族という資源を活用することができない/難しい児童養護施設経験者の学力問題・職業達成は、大きな課題であり続けている。社会的に厳しい状況におかれている人々ほど若年未就職者が多いことを考えれば、彼/彼女らに対する学力保障・進路保障など、キャリア形成や就職支援のための制度・機会を充実させていく必要があるが、児童養護施設経験者の学卒後のキャリアは研究として取り上げられることも少なく、ほとんど明らかになっていないのが現状である。
そこで2006〜2007年度にかけて、児童養護施設経験者を対象にインタビューを実施し、その中で、(1)児童養護施設での経験、(2)学校生活から職業への移行過程の実態を把握し、(3)包括的な支援の必要性などを明らかにしたい。(文責:内田龍史)
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