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日本型雇用システムが崩れ、今日高等教育の大衆化、過剰学歴という形で現れている。大学・短大の現役志願率は5割5分、進学率は浪人も併せて53.4%。高卒者の就職率は1/4を切った。専修学校等も含めて見ると、8割を超える子どもが学校に囲い込まれている希有な時代に入った。教育機会の階層格差はなお深まり、そこに地域格差が重なってきた。
1980年以降から子どもを取り巻く状況は新たな苦境に入った。いじめ、不登校、校内暴力に加えて昨今では薬物も社会問題となりつつある。
スケ−プゴ−ト論、快感現象…両面から捉える必要がある「いじめ」を始め、悲惨な事件は後を絶たない。阪神・淡路大震災後のトラウマ調査では、後になるほどケアを要する子どもが増えている。神戸の事件を起こした中学生は、反社会的人格障害の前段階、行為障害と言われる。
従来の観点から見れば、非行そのものは減ってはいるが、古典的念では掴みかねる問題行動が出て来た。情報化時代の子どもの心象風景として、(a)私生活中心主義 (b)消費至上主義 (c)メディア人間 (d)偏差値人間 (e)マニュアル人間(f)無気力人間 (g)異界への逃避…が挙げられる。
激変する生育環境、教育の空洞化によって、子ども達の生活経験そのものや人間関係が益々希薄化する中で、上記のような〔心的私化症候群〕が増えつつある。
◆子どもを取り巻く状況の変化に対して学校はどうなのか。これまでの文部省や財界の学校改革の基調は私事化、自由化、多様化にあった。
経済同友会が提唱した「合校論」、スリム化を見ても分かるように、教育自由化路線は益々顕著になっており、学校選択の自由、学区制の緩和も謳われている。
中教審等の施策、「教育改革プログラム」を見ても、金のかからないところで規制緩和をし、個人の欲求におもねていくという構造になりつつある。少子化社会の前で教育のシステムそのものが変わろうとしている。
◆神戸小学生連続殺傷事件が問いかけたものは大きい。子どもの心に起こっていた大災害に気づきながらも大人は対応できなかった。
家族と家族の新たな苦境を読みながら、生涯学習・人権文化の拠点としての学校、地域社会の子育てネットワ−クにも目を向けていかなければならない。
今、地域の大人ができること、すべきことは何かをよく考え、人権が保障される街づくりに教育をはめこむ、これが生涯学習社会である。