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2004.08.13
<部落解放・人権教育啓発プロジェクト>
 
部落解放・人権教育啓発プロジェクト
2004年7月13日
『人権教育のための国連10年』の総括を踏まえ、『人権教育のための世界プログラム』の創造を!

(報告) 友永 健三(部落解放・人権研究所)

  1995年にスタートした「人権教育のための国連10年」(以下『国連10年』と略)も残すところ半年足らずとなった。内外の人権状況を見たとき、この総括を踏まえた今後の取組が必要である。この間、国連、各国、自治体、民間団体等で、さまざまな取組がおこなわれ、少なからぬ成果を上げてきた。成果として次の4点を確認することができる。
  1. 人権教育の内容に関する理解と重要性に関する認識が高まった。
  2. 様々な分野でばらばらに取り組まれていた人権教育の連携を構築した。
  3. 被差別者に光が当たるとともに、特定従事者に対する人権教育が重視され出した。
  4. 各方面で推進体制、行動計画が整備され出した。

  以上のような成果を上げて来ているが、世界中に人権文化を創造し、平和で人々の自己実現が可能となる社会はいまだ到来していない。それどころか、世界ではイラク戦争に象徴される深刻な人権侵害が続いているし、日本においても6年連続して自殺者が3万人を超していることに象徴される深刻な人権侵害の状況がある。

  国際的に見た場合、取り組んだ国がまだまだ少ないという点を指摘しなければならない。国連人権高等弁務官事務所の調べによると2001年12月現在で、「国連10年」に連動した取組を報告してきた国は、86カ国にとどまっている(国連加盟国は191か国)。

  日本においても、取り組んでいない自治体がある。47都道府県のうち、6県では、推進本部も設置されず、行動計画も策定されていない。市町村レベルの正確な実情は把握されていないが、推進本部が設置され、行動計画が策定されているのはおよそ600自治体程度と推測され、全体のおよそ5分の1の自治体にとどまっている。

  また、行動計画が策定されても、その内容が抽象的なものにとどまっていて、具体化されていないきらいがある。すなわち、具体的な人権侵害や人権尊重のまちづくりとの結合がなされていないのである。

  今後の課題として、国際的に見た場合、なによりもまず、すべての国が取り組むものとする必要がある。そのために国連として人権教育をさらに重視する(人員・予算等)ことが求められる。

  国内的には、まず各方面で「国連10年」の総括を踏まえ、今後の取組の方向を討議することであり、その際、実態調査(差別事件や人権侵害の現状を含む)を実施することが求められている。そして、国の「国連10年」にちなんだ行動計画や人権教育・啓発基本計画を見直し、改訂すること、自治体においても「国連10年」の総括をふまえた行動計画を新たに策定し、人権尊重のまちづくりの推進と結合することが求められている。

  今年4月、国連人権委員会の決議によって「国連10年」が、来年より「世界プログラム」として引き継がれる可能性が強まった。その第一段階は2005年からの3年間、初等・中等教育における人権教育の推進が重点目標として提起されている。詳細は、本年12月に開催される国連総会において提案されることとなっている。

  いまこそ、日本国内の取組を国連に向けて発信していくことが求められている。とりわけ、同和教育の50年に及ぶ経験とその財産は国際的にも大いに参考になるものと確信する。(文責・事務局)