先般、「第一次とりまとめ」を明らかにした人権教育の指導方法等に関する調査研究会議の座長である福田弘さん(筑波大学)に、<1>その意義と強調点、<2>今後の検討事項と方針について紹介をしていただいた。その概要を記す。
「第一次とりまとめ」の意義と強調点について
<第1節 学校教育における人権教育の改善・充実についての基本的考え方>
- 国レベルでの人権教育に対する正面からの取組の端緒を開いたこと。
- 人権概念、人権教育概念をかなり明確にしたこと。
- 「人間の生命はかけがえのないものである」ことをとくに強調したこと。
- 人権をめぐる国際的な動向を踏まえることの大切さを明確にしたこと。
- 人権問題を直感的にとらえる感性及び人権への配慮が態度や行動に現われるような人権感覚の育成を強調したこと。
- 他の人と共によりよく生きよう(共生)とする態度や「権利・自由」と不離一体のものとしての義務や責任を果たす態度、具体的な人権問題に直面してそれを解決しようとする実践的な行動力を身につけることの大切さを強調したこと。
- そのために次のような力・技能を育成することの大切さを強調したこと。
- 想像力や共感的に理解する力
- 伝え合い分かり合うためのコミュニケーションの能力やそのための技能
- 人間関係を調整する能力及び自他の要求を共に満たせる解決方法
<第2節 学校教育における指導の改善・充実にむけた視点>
- 「教職員における人権尊重の理念の理解・体得」を強調したこと。
まず、教職員が人権尊重の理念について充分に認識し、児童生徒が自らの大切さが認められていることを実感できるような環境づくりに努める。
- 「学校教育活動全体を通じた人権教育の推進」を強調したこと。
日常の学校生活も含めて人権が尊重される学級・学校とするように努める(いじめ・暴力、人を傷つける問題等を看過することなく学校全体として適切かつ毅然とした指導を。正義が貫かれるような学級・学校に)。
⇒ 人権教育の場の意義を明示し、強調(Hidden Curriculumの意義)したこと。
- 「学校としての組織的な取組とその点検・評価」の重要性の指摘。
- 「家庭・地域との連携及び校種間の連携」の必要性の強調。
- 自主性の尊重や体験的な活動を取り入れるなどの指導方法の工夫。
- 効果的な学習教材の選定・開発。
子どもにとって他人事でない自分自身の問題として考えることができるような学習教材(『身近でない課題』を取り上げないことではない)を!
今後の検討事項と方針について
<人権教育の指導の改善・充実に向けてのポイント>
以下の事項について、人権教育研究指定校等の実践事例を踏まえつつ、引き続き調査研究会議において検討することとなっている。
- 組織としての人権教育に取り組む学校のあり方及び点検・評価のあり方
- 各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間における学習指導や人権が尊重される環境づくり
- 効果的かつ児童生徒の発達段階に即した指導内容・方法及び学習教材
- 児童生徒の自主性の尊重や体験的な活動を取り入れるなどの指導方法の工夫
- 家庭・地域との連携や保・幼・小・中・高などの学校段階間の連携
- 効果的な教職員の研修等の在り方
上記の報告を受けて参加者による活発な討議がなされた。今回の調査研究会議は、学習指導要領の枠内での検討が前提となっているうえに、個別の人権課題への言及が弱い等のいくつかの制約はあるものの、現場における人権教育推進のための武器になるものとして、今後、さらに充実した内容としてまとめられることが期待される。そのためにも、今回の第一次とりまとめを、ぜひとも、学校現場で積極的に広め、有効に活用していきたいものである。
なお、「第一次とりまとめ」と調査研究会議の議事録については、文部科学省のホームページに全文掲載されている。ぜひ、参照されたい。
(事務局)