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2004.12.13
<部落解放・人権教育啓発プロジェクト>
 
部落解放・人権教育啓発プロジェクト
2004年10月26日
『国連持続可能な開発のための教育の10年』とは…

安部 治 (立教大学

 「国連持続可能な開発のための教育10年(以下、DESD)」の紹介ビデオを観賞したあと、本会合に先立って開催された第255回国際人権規約連続学習会におけるESD-J運営委員長、安部治さん(立教大学教授)の講演(『DESDの経緯と日本の課題』)を受けての質疑、意見交換を中心におこなった。

 周知のとおり、このDESD は、日本政府が国連に提案し実現したものであり、2005年1月より10年間の期間で実施されるものである。その意味で、国内外の取り組みを推し進めるために日本政府がイニシアティブを存分に発揮することが期待される。

 しかし、現在のところ、国内のDESDに対する認知度は決して充分とはいえない。国内行動計画は年内をめどに環境省が中心になって作成されることとなっているが、推進会議の結成の見通し等、いまだ不透明な部分も少なくないのが現状であり、地方自治体レベルでどのような取り組みが構築できるのか、見通しはきわめて厳しいと言わざるをえない。

 一方、DESDに対する日本政府の理解が「環境教育」に偏っている上に、「環境」そのものについての理解も非常に狭い範囲にとどまっていること、さらに、日本政府にとっては、途上国支援が主要な課題と認識されており、国内的な問題(例えば、『識字問題』)は、ほとんど眼中にないことなどが講師よりあらためて指摘された。今後、国内外の取り組みをいかに連動させていくのかが大きな課題となるであろう。

 意見交換では、すでに実施されてきた「国連人権教育の10年」との関連をどう整理していくのかという点に議論が集中した。

 まず、「国連人権教育の10年」の取り組みを推進してきた側からの教訓として、DESDも重点課題をある程度絞り込むとともに、その実施を監視する機関を創設する必要があるという指摘がなされた。また、大阪府・大阪市のように、すでに「人権教育の10年」の行動計画が作成・実施されてきている自治体においては、今後あらたにDESDの行動計画を作成することになる可能性は薄いこと、現在ある人権教育の行動計画に環境問題の視点を加味していくことが現実的な方策であり、その際、まちづくりの視点が重視される必要があるという意見が出された。

 講師からは、DESDは「国連人権教育の10年」をも包含するものであり、人権、女性の参画、子ども等を中心にキーワードにしながら、それに環境教育の視点を加味し、とりわけ、国内の「世代間不公正」に着目して進めることの重要性が指摘された。

 最後に、このDESDを国内外において積極的に展開していくためにも、部落解放運動と固く連帯してこの取り組みを進めていくことが必要であることを参加者一同確認し、会合を終了した。

(文責・事務局)