私立学校は、各校が独自の建学精神のもと、教育活動を行っている独立体であるが、共通の課題としての同和教育・人権教育への取り組みや連携が求められるようになり、1969年、大阪私立学校人権教育研究会(略称、私学人研)が設立された。現在、高等学校100校、中学校61校、小学校16校の計177校で組織されている。これらの学校が、6つの部会(主に鉄道沿線別)と7つの課題別研究委員会(主に公募制)に分かれて、月1回の例会をはじめとする研究活動を行っている。各校においては、部会や研究委員会の活動内容やそこで交換された情報を持ち帰り、実践に役立てている。
次に、各校の重点目標や教職員研修、生徒に向けた取り組みについて、高等学校各校から提出された「同和(人権)教育年間計画」を集約しまとめた結果、生徒に対する人権教育における個別課題では、同和問題のほかに身体障害者の問題や女子校を中心にジェンダーの問題、3年生では就職差別の問題が多く取り上げられていることがわかる。また、各校のロングホームルーム(週1回50分が標準)等の特別活動における取り組みについては、1年間の実施回数や形態など、学校ごとにかなりのばらつきがあることがわかった。私立学校の約半数が宗教系であることから、宗教と学校の両面から人権教育に取り組んでいる学校も多く、各教科の内容に人権教育を関連させることを検討している学校もある。
ある高校の入学時のアンケートによると、「小中学校で同和教育を受けていない」と回答した生徒が、1992年度の2%から2000年度は24.4%と24.2ポイントも増加したという結果がでている。また、年々人権教育を受けていない大学生が増加しているという点や、人権教育に否定的(マイナス)イメージをもっている者がいるという指摘もある。大阪府内の高校生の総数は238,386人、そのうち私立には88,854人が在籍しており、約4割の生徒が私立高校の生徒である(2003年度学校基本調査)。このことからも、各校において、同和(人権)教育担当教員だけでなく学級担任をはじめとする全教職員が、人権教育についてより理解を深めることが重要であり、指導法を工夫していく必要がある。教材集として私学人研で作成した「ともに」の活用も一案である。
社会的に見ても、同和教育・人権教育の重要性は保護者の方にも浸透してきている。私立高校において進路指導が重要であることはもちろんであるが、また同時に、生活指導も重視しており、その多くは、取り締まり型のものではなく、どのように考え、自主的に行動できるかということに重点を置いて指導している。