調査研究

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2007.02.26
<部落解放・人権教育啓発プロジェクト>
 
部落解放・人権教育啓発プロジェクト
2006年12月12日
人権教育のABC:小学校、中学校、高校における実践的なアクティビティ(国連、2004年)の紹介

平沢 安政(大阪大学)

日本の同和教育を世界の人権教育と繋ぎたいと考え、1989年に国連が出版した「人権教育のABC:小学校、中学校、高校における実践的なアクティビティ(国連、2004年)(以下、「人権教育のABC」)」について1990年から紹介してきました。これは90年代に広がった参加型学習教材の草分け的な教材です。今回の第2版は2004年に改訂されたもので、「人権教育世界プログラム」の取り組みの参考になるものです。国連広報センターが両方をホームページで紹介しているので、PDFで取り出すことができます。

第一章では、教育システムに人権教育を浸透させるための戦略として、カリキュラムや教科書、各教科や特設授業、課外活動等で取り組み、教職員研修のすすめ方などが示されています。そのひとつとして、年齢に即して子どもたちに人権概念を提示していくための段階的アプローチがマトリックスで紹介されています。日本でも、このようなマトリックスによって、子どもの成長段階に応じて学ぶ人権の概念を整理することが必要だと思います。

続いて、人権教育の内容の核が世界人権宣言と子どもの権利条約であること、人権について教えるだけでは不十分で、人権のために教える視点をもつこと、権利には責任が伴うこと、人権的な環境のもとで教えられる必要があること、学習の中での論争や対立は問題解決に効果があること、適切な教授法を用いるべきであること、評価が必要であることなどが紹介されています。

第二章と第三章では、幼稚園、小学校低学年用と、小学校高学年、中学校、高校用にわけて、人権について学ぶための各種アクティビティ(学習活動)が紹介されています。

報告後の議論では、日本の状況を踏まえながら人権教育で教える概念をマトリックスで整理することによって、様々な人権問題の扱い方や、これまでの同和教育や人権教育とのかかわりをあらためて整理する必要があるという意見などが出されました。

大阪府人権教育研究協議会の人権教育

大阪府人権教育研究協議会

大阪府人権教育研究協議会(以下、「大人教」)はネットワークで、府内39市町村の人権教育研究会(以下、「人研」)があり、それを束ねる8ブロックがあります。研究集会や研修会、研究冊子の発行などを行っています。

大阪府では、団塊の世代の退職に伴い、教員の大量採用時代を迎えており、この期間で教職員の7割が入れ替わるとも言われています。このような中で、これまで同和教育・人権教育を担ってきた世代が、どのように同和教育・人権教育を若い世代に伝えていくのかが大きな課題になっています。

これに対して、大人教では2つのバトンの戦略で取り組んでいます。ひとつは「未来塾」で、大阪の人権教育の未来を担う若手教職員の育ちの場、実践の継承の場、そしてつながりあう場として、年8回の講座を80名程度を募集して実施しています。コミュニケーションの基本から、先輩の失敗談をきいたり、集団づくりについてのワークショップなどを行います。「未来塾」は3年間で、その後は各地の人研やブロックでの実施をめざします。

もうひとつは、『わたし 出会い 発見 パート6』です。くらしを通してつながる集団づくりの実践を、具体的にわかりやすく伝える内容にしました。子どもとどのように対話するか、家庭訪問をどのように行うのか、教職員の集団作りなどを具体的に示すことで、若い教職員に人権教育の中身を伝えようとしているのです。

討論では、これまでの実践を伝えていくには、教育実践を冊子で言語化したり、活動の中で伝えたりしていくこと、同和教育実践の言葉を人権教育の概念と繋いでいくことが必要などの意見が出されました。

(文責:柴原 浩嗣)