日本の同和教育を世界の人権教育と繋ぎたいと考え、1989年に国連が出版した「人権教育のABC:小学校、中学校、高校における実践的なアクティビティ(国連、2004年)(以下、「人権教育のABC」)」について1990年から紹介してきました。これは90年代に広がった参加型学習教材の草分け的な教材です。今回の第2版は2004年に改訂されたもので、「人権教育世界プログラム」の取り組みの参考になるものです。国連広報センターが両方をホームページで紹介しているので、PDFで取り出すことができます。
第一章では、教育システムに人権教育を浸透させるための戦略として、カリキュラムや教科書、各教科や特設授業、課外活動等で取り組み、教職員研修のすすめ方などが示されています。そのひとつとして、年齢に即して子どもたちに人権概念を提示していくための段階的アプローチがマトリックスで紹介されています。日本でも、このようなマトリックスによって、子どもの成長段階に応じて学ぶ人権の概念を整理することが必要だと思います。
続いて、人権教育の内容の核が世界人権宣言と子どもの権利条約であること、人権について教えるだけでは不十分で、人権のために教える視点をもつこと、権利には責任が伴うこと、人権的な環境のもとで教えられる必要があること、学習の中での論争や対立は問題解決に効果があること、適切な教授法を用いるべきであること、評価が必要であることなどが紹介されています。
第二章と第三章では、幼稚園、小学校低学年用と、小学校高学年、中学校、高校用にわけて、人権について学ぶための各種アクティビティ(学習活動)が紹介されています。
報告後の議論では、日本の状況を踏まえながら人権教育で教える概念をマトリックスで整理することによって、様々な人権問題の扱い方や、これまでの同和教育や人権教育とのかかわりをあらためて整理する必要があるという意見などが出されました。