調査研究

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2009.03.27
<部落解放・人権教育啓発プロジェクト>
 
部落解放・人権教育啓発プロジェクト
2008年12月22日

平成19年度『人権教育学習プラン―実践事例集―』をとりまとめて

大西弘之さん(和歌山県教育委員会人権教育推進室指導主事)

 和歌山県では、2005年2月に「和歌山県人権教育基本方針」を策定した。この基本指針では、人権教育の理念及び人権教育を通じてつける力並びに人権教育を進める上での留意点や観点を示している。

 学校教育に関わっては、人権教育推進室事業として、研修会の開催、学校訪問での指導(1年間で100校)、資料集の刊行などを行った。

 県発刊の資料としては、2004年3月に指導者用の手引きとして『気づく・学ぶ・広げる人権学習』を発刊した。続いて、2006年3月には『人権教育学習プラン 対話ですすめる人権学習』、2007年3月に『人権教育学習プログラム―事例集―』、2008年3月に『人権教育学習プラン―実践事例集―』を発刊している。

 県として学校での人権教育を進める上で、最も大切にしてきたことは、「子どもの実態を十分に把握すること」、「全教職員の総意のもとで進めること」、「発達段階に応じた計画的な指導を行うこと」である。

 人権教育については、指導要領や教科書がないので、進めていくには設計図が必要であることから、全体計画、年間指導計画を各学校で作成するように指導をした。その成果として、最終8割から9割の学校で作成するようになった。

 しかし、一方で教育現場の課題として、数字だけではなく、計画に沿って教員の営みとして人権教育を進めることが大切であるということがあった。

 そこで、「人権教育学習プラン」プロモート(=促進する)委員会を2007年に立ち上げ、プロモート校として小学校、中学校及び高等学校の各3校を位置づけ、プロモート校の成果と課題の交流、人権教育の指導方法等の改善・充実について協議した。第1回は平沢教授に委員会に入っていただき、舵取りをしていていただいた。これまでの委員会の中では、課題として「子どもがどう変わっていったのか」「教職員がどう共通理解を図ったのか」「人権という観点からすべての教育活動を見る」ということが出された。このように毎年プロモート委員会で成果や課題を検証しながら進めている。

質疑応答

Q1.厳しい財政事情はどの県も共通だと思うが、予算を確保するにはずいぶん苦労があったのではないか。

A1.厳しい状況には変わりないが、何とか予算内でまとめるよう工夫している。

Q2.毎年継続して取り組んでいくためのしかけづくりや研修の工夫はどうされているか。

A2.11月に人権教育に関する調査で取り組み状況を把握し、学校訪問指導で取り組みの凹凸をなくすようにしている。また、市教育委員会指導主事対象の研修でその結果を返している。

なお、今の問題意識として、「学力向上と人権教育」の関係、「道徳教育と人権教育」の関係などを整理する必要があると考える。学力向上と人権教育は別々のものであるという捉えを変えていかなければならない。また、道徳教育は価値的な側面が強く、人権教育は行動につながるという側面が強い点に留意すべきであろう。

(文責:事務局)