まず、内田雄造・東洋大学教授から、「人権のまちづくり」を実践していくためには、<1>コミュニティワークの具体像を明らかにし、コミュニティワークと自治体行政の関係を考察する、<2>まちづくり・むらおこしを地域のコミュニティ・デベロップメントとして位置づけ、各パートとしてのそれぞれのコミュニティワークの発展を図る、<3>大都市、大都市近郊、地方都市、農山漁村とともに地域毎に空間的に分断され、各々の領域内に留まっている今日のまちづくり・むらおこしの施策に対して、各地のコミュニティワーク間の関係性を整理し、さらにネットワークを形成することにより、地域再生を図ることが重要である。
また、コミュニティワークの課題とは、<1>住宅・住環境の整備と管理、<2>アメニティの保全と創出、<3>環境の保全と省資源・省エネ、環境への負荷の削減などサスティナブルな生活の追求、<4>心身ともに健康な生活を営める医療・保健システム、<5>地域産業や地域商業の活性化、<6>地域文化・市民教育の振興、<7>仕事の創出、コミュニティワークの担い手であるNPOやCBOとの自治体行政のコラボレーションが不可欠である。その上で、まちづくりを地方分権の見地から、コミュニティ・デベロップメントとして位置付けていきたい。
地域を総合的に捉えるために、都市と農山漁村のネットワーキング、土地利用計画・道路計画・水行政などにおける自治体間のネットワーキング、コミュニティワークを中心とした広域的ネットワーキングを実現していくべきだなどと報告がなされ、<1>ホームレス、<2>自治権の価値と新たな評価基準、<3>地域で生きる権利、などについて質疑が行われた。
続いて、江橋崇・法政大学教授から、鳥取県では、1993(平成5)年に「人権尊重の県宣言」、1995(平成7)年に第7次鳥取県総合計画を作成し、1996(平成8)年に「人権尊重の社会づくり条例」を制定してきており、これらに基づいて「鳥取県人権施策の基本方針」がつくられている。
全国の都道府県で初めて制定された「人権尊重の社会づくり条例」は、その基本理念として、前文で外国人に対する人権を保障しているなどの特徴があり、鳥取県の各分野における人権に関する全てを定めた条例となっている。それ以降人権関連条例としては、個人情報保護条例、情報公開条例、男女共同参画条例、福祉のまちづくり条例が制定されている。
当初は「人権尊重の社会づくり条例」一本で行きたいとの県の方針だったが、男女共同参画条例は国の基本法に倣って制定されており、女性の人権については二つの条例で重複しているが、「人権尊重の社会づくり条例」ではあいまいだった苦情処理について、男女共同参画条例では詳しく扱われている。
「人権尊重の社会づくり条例」は、人権に関する問題への取り組みを推進し、真に人権が尊重される社会づくりを目的とし、知事は人権施策の総合的な基本方針を定めるものとされており、推進体制として人権尊重の社会づくり協議会を設置することとしている。
また、県の体制としては、「人権尊重の社会づくり委員会」が局をまたいで設置されているほか、鳥取市内に人権文化センターが設置されているが、人権擁護委員や警察など他の人権関連機関との関係は全くなく、救済システムは不十分なものにとどまっている。
徳島、香川(坂出以外)とともに、鳥取県内では全ての市町村で人権条例が制定されている。その中の、倉吉市の「部落差別撤廃とあらゆる差別をなくする条例」では、日本国憲法と世界人権宣言を基本に人権の意義を定義しており、市民一人ひとりの参加による人権尊重都市の確立を目的に、市の責務とあわせて、市民の責務を規定しているなどの特徴があり、部落差別撤廃を基本としつつも、在日外国人、女性、アイヌ民族、「障害」者、などの差別撤廃を網羅している。
また、差別をなくすための重要事項について必要な調査及び審議を行うため、「あらゆる差別をなくする審議会」を条例で設置しており、この条例が制定されたことから市役所の部局を統合している。「地対財特法」の失効以降、人権施策の何をなくすか、とっておくかを決定することとしているなどについて報告された。