調査研究

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人権条例等の収集と比較研究および提言プロジェクト・学習会報告
2002年11月29日
合併に関する経緯と部落解放・人権確立の取り組み

松岡 義治(さぬき市人権推進課)

御代田町の人権行政に関する調査報告

染川 明義(芸術総合文化センター)

 (第1報告) 「合併に関する経緯と部落解放・人権確立の取り組み」

合併に関する経緯については、1990(平成2)年9月に東かがわ青年会議所が開催したフォーラムを契機として、各町に合併検討会や研究会が設置され、1998(平成10)年12月には合併協議会設置請求書・住民発議確定署名簿が各町長に提出されたが、1999(平成11)年5月に、志度町や長尾町議会で合併協議会についての議案が否決され、住民発議による合併協議会設置は白紙に戻ることになった。〔8町で合併するという枠組みを否決したもので、合併そのものを否決したのではない。以後、大川郡の西側5町はさぬき市として、東側3町は東香川市として合併手続きが進められることになる。否決の理由としては、東側と西側では経済事情等が大きく異なるため、合併のメリットが見い出しにくいことが挙げられる。〕その後は行政主導のもと、合併に向けた調整がなされることとなった。

2000(平成12)年3月、各町議会において、合併協議会設立案が可決。同年4月1日に合併協議会並びに事務局が発足。その後、合併協議会において(1)合併の方式は5町対等による合併とすること(2)財産や債務はすべて新市に引き継ぐこと(3)志度町の庁舎を当面新市の庁舎とすること(4)合併の時期を2002(平成14)年4月1日とし、新市の名称は「さぬき市」とすること等が決定されていった。この間、関係5町内全世帯を対象とした住民アンケート調査や合併協議状況住民説明会が開催され、合併の方向性についての調査や現在の協議状況、新市建設計画素案に関する住民への説明等を行った。こうして2002(平成14)年4月1日、「さぬき市」の誕生となった。

次に、人権条例等の扱いに関する報告がなされた。「人権条例」については、合併前から5町ともすでに制定されていたという状況があり、その内容も基本的に同一であった。この条例を新市に引き継ぐにあたって(人権条例に限らず、市として空白期間を作ることが許されない条例はすべて)は、基本的な内容を担当課長によって構成される部会での事務協議により議論したうえで、市長専決処分により臨時議会に報告し、承認を受けるという形で引継ぎを行い、2002(平成14)年4月1日付で施行された。なお、「人権擁護審議会」については、これまで条例で設置されていたところと規則で設置されていたところがあったが、条例設置とした。委員の発令は現時点ではなされていない。

行政担当部の取り扱いについては、市長部局に「人権推進課」を、教育委員会に「人権教育課」を設置したが、人権・同和行政は総合行政であり、総合調整機能を補完するという観点から、助役を本部長とするさぬき市同和対策推進本部を設置した。

そして、さぬき市総合計画策定委員会を設置し、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」による国の基本計画を受け、今後、地域の実態に合った基本計画・実施計画を策定する予定である。

同和・人権施策の取り扱いについては、(1)人権教育推進市町事業について(2)同和教育推進協議会について(3)啓発事業について(4)同和対策関係計画等について(5)関係会議等についてそれぞれ報告がなされ、2001(平成13)年度末で廃止の事業や,経過的措置を設け2005(平成17)年度まで継続される事業等の報告もあわせてなされた。

意見交換では、新市へ引き継ぐ条例の取り扱いについて、

(1)市長専決事項として引き継ぐ手法〔地方自治法に基づくやり方〕は一定評価できること。

(2)しかしながら、今回のケースは、たまたま5市すべてにすでに条例が存在していたので条例見直しの議論にはならなかったが、仮に2つあるいは3つの町でしか成立していなかった場合には,引き継がれなかった可能性もあることから、結局は行政担当者の人権に対する意識のあり方がこの問題には大きなウエイトがあることが確認された。

(3)また、条例の内容をどのようにチェックするのか、といった視点で見た場合、そのチェック機関は、事務的レベルで議論がなされるのは前提として,それ以外には住民への説明会と議会での議論ということになり、議員の人権意識も大きなウエイトを有している。

(4)さらに、部落解放運動をはじめとする住民運動の働きかけが重要である。

といったことが議論された。

住民説明会で住民から提出された意見として最も多かったのは過疎についての問題であるが、市として、現在のところ、分権方式のまちづくりについて明確な構想はできていない。

市の財政については、市民病院の整備120億円、ケーブルテレビの整備100億円など大きな歳出が予定されている一方で、交付税の10%カットや収入減など歳入減により、厳しい状況にある。合併するにあたっては、サービス内容の水準を高い自治体に合わせたが、厳しい財政状況にあり、今後はどうしていくかが問われている。


(第2報告) 「御代田町の人権行政に関する調査報告」

 御代田町では、1993(平成5)年12月に「御代田町における部落差別撤廃とあらゆる差別をなくすことをめざす条例」を制定し、この条例を具体化するため、1998(平成10)年4月には「部落差別撤廃とあらゆる差別をなくすことをめざす総合計画」(以下「総合計画」という。)を策定している。(まだ実施計画策定の段階まではすすんでいない。)この間、1996(平成8)年には「御代田町第3次長期振興計画(1996〜2005年度)」を策定し、現在、後期(2001〜2005年度)段階にある。

 上記人権条例の制定経過、基本理念、責務規定、推進体制や、啓発・教育関係、相談・救済関係等の各項目ごとに報告された。その中で、他の人権関連条例(女性、子ども等)は制定されていないこと、町の人権にかかわる分野においては解放運動がリードしてきたこと、地域の人の信頼が厚いリーダーの存在が相談・救済において大きな役割を果たされていること等が報告された。

 そして、御代田町の人権条例の制定時期は、関東では一番早かったことや、人権条例の分類として、(1)部落差別撤廃条例、(2)差別禁止型条例、(3)人権の社会づくり型条例(上記分類以外に「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」といったものもある。)があげられ、それぞれ一長一短があること等が議論された。

 今後の課題としては、優秀なリーダーが培ったノウハウをどのようにして継承していくのかといった問題や、コミュニティづくりに対する認識が、地域からの働きかけを前提としたものにまではなっていないこと(長期振興計画において、「第3節コミュニティづくりの推進」が「第2節財政計画の確立」と「第4節広報・広聴活動の推進」の間におかれていることから推測される)等が指摘された。