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人権条例等の収集と比較研究および提言プロジェクト・学習会報告
2003年03月31日
(1)「大阪府の人権行政とこれからの人権・同和行政について」

(報告) 大阪府人権室

(2)「人権条例の現状と今後の課題」

(報告)友永 健三(部落解放・人権研究所)


<第1報告>

 大阪府における人権行政について、(1)社会づくり条例、(2)人権教育・啓発、(3)人権相談、(4)同和行政、の4つの側面から、その概要が示された。

(1)大阪府人権尊重の社会づくり条例(1998年11月施行)

 この社会づくり条例は、まず前文において人権尊重の基本理念を掲げ、その実現のために府の責務を明らかにしている。すなわち、「府民の人権意識の高揚を図るための施策」及び「人権擁護に資する施策」の推進することである(第2条)。さらに、人権施策推進のために、基本方針を策定することとし、その際には「人権施策推進審議会」(審議会)に諮問し、その答申を添えて府議会の意見を聴かなければならない、としている(第3条)。

 この規定に基づく基本方針は、2001年3月に策定されており、取り組むべき主要課題と、人権施策の内容、および推進体制について概要を示している。さらに、総合計画として、「大阪の再生・元気倍増プラン」を提示し、目標と、成果を明らかにするためのリスト(大阪21の元気)を明示しており、その第一に、「人権尊重都市への取り組み」を挙げている。また、推進体制としては、人権啓発・人権教育の10年・同和問題解決という三つの推進本部を設置し、企画調整部人権室がその庶務を行うこととなっている。その他、リバティおおさかやピース大阪などの関連施設と連携をとって、施策推進に努めている。

(2)人権教育・啓発

 人権教育・啓発に関しては、2001年3月に、「人権教育のための10年後期行動計画」を策定し、「人権意識の高揚を図るための施策」を具体化している。施策の方向性として5つの柱(学校・職場における人権教育、あらゆる人権教育の場の確保、人材養成、効果的な人権教育・情報提供の実施、各方面との連携)をあげ、中でも教材開発、公務員への研修を重視している。府職員への研修体制としては、階層別研修のほかに、今回新たに職場研修を実施している。

(3)人権相談

 また、「人権擁護に資する施策」として、総合的な人権相談体制が整備されつつある。府人権協会、市町村、NGO・NPO、そして大阪府の連携のもとに、「人権相談機関ネットワーク」を構築し、人権侵害を受けた府民の課題解決を支援し、かつ人権問題の実情などを的確に把握し、人権施策の推進に資することを目指している。現在このネットワークには、235機関が加盟しており、特に市町村、地域人権協会の増加が顕著である。また、人権相談員養成基礎講座を開催して、相談事業従事者の知識・技能向上を図っている。

(4)同和行政

 同和行政に関しては、2000年実態等調査の分析を受けて、地対財特法失効後の、一般施策を用いた同和行政のあり方を示している。基本方向として、同和地区に対する差別意識、社会的排除を再生産させないために、より有機的・効果的な施策の取り組みが必要だとし、3つの条件整備(人権意識高揚・自立と自己実現達成・地区内外住民の交流促進)にむけて取り組むとしている。具体的な施策としては、(1)人権教育・啓発、(2)総合的な相談を含む自立支援、(3)相談体制の整備、(4)「コミュニティづくり」を挙げ、それらについて、一般施策への転換、施策を効果的に活用するための総合的な仕組みづくり、地域の取り組みの推進、推進体制の整備を図るとしている。さらに各分野の施策について、それぞれ基本理念と推進方向とを示し、まとめとして特に住民参加のまちづくりの重要性が示されている。

 質疑応答では、「同和行政のあり方について」なる文書の位置付けや、人権相談員とケースワーカーとの相違、施策の効果測定のあり方、人権予算の問題などについて議論された。


<第2報告>

 この間の条例プロジェクトを中間的にまとめを行い、報告書作成と、2003年度の新規事業「人権のまちづくり」プロジェクトについて、提案された。

 人権条例はこれまでに計753制定されているが、おおよそ4つに分類しうる(規制条例、部落差別撤廃・人権条例、部落差別をはじめあらゆる差別を撤廃する条例、人権の社会づくり条例)。また、男女共同参画など、他の課題への拡大も見られる。現時点での成果としては、条例が多数制定されてきたことそれ自体が成果であり、また、その実施のために基本方針や基本計画、実施計画を策定して、取り組んでいる自治体がうまれてきていること、さらに条例違反に対処し、また市民啓発に取り組む事例があることが挙げられた。しかし、条例制定に地域的な偏りがあり、また制定されたものの活用されていない場合や、現状に対応した条例に改正することが必要なものもあるといった、問題点も指摘された。

 今後の課題としては、各条例に関する情報の集中と共有をはかり、定期的な経験交流会を開催すること、さらに、一層の条例制定をめざし、また既に制定されている場合には、その具体化をはかることなどが挙げられた。

 「人権のまちづくり」プロジェクトについては、各地における先駆的な取り組みを、月一回程度の例会で研究する中で、最終的に『人権のまちづくり手引書』の編集発刊をめざすとしている。


<追加論議>

 この間、人権擁護委員改革が、重要な課題となっているが、その案として、人権相談員への改組が挙げられる。その人権相談員を、どのような規模・任命形態・待遇・任務で設置すべきかについて、議論された。

 規模としては中学校区単位で設置し、有給化すべきことは参加者で一致した。また、移動の際の継続性を担保するために、1期2年3期で、常時2名確保することが必要だとされた。また、任命形態として、民生委員型か、期限付任用職員型かを選択する必要があること、さらに任務に関して、調停まで含めるかどうか、コーディネーター・ケースワーカーとして位置付けるか、その場合民生委員との権限配分をどうするかといった点が議論された。さらに財源をどこから確保するのか、とりわけ国庫委託金と交付税との割合をどうするか、そもそも規模はどの程度あれば十分か、といった点についても、論及された。 

(李 嘉永)