はい。1枚もののレジュメを出させていただいています。私、大阪市市民局人権部企画課の堀田ともうします。
担当しております仕事の企画課といいますのは、基本方針を策定したり、あるいは条例を策定して、基本方針や条例に基づいて審議会を、推進本部という体制をとっております。それの事務局の役割もおこなっております。
それでは、さっそく、私の方から「大阪市における人権行政にかかる取組み」ということで、ご報告させていただきます。内容は若干の経過と、その経過からどういうふうなものが出来たのか、できたものについて、どういうふうに具体的に進めようとしているのか。その3点について、現状と課題を含めたかたちで、ご報告させていただきます。
《1.「大阪市人権行政基本方針」「大阪市人権尊 重の社会づくり条例」の経過》
まず、「大阪市人権行政基本方針」と「大阪市人権尊重の社会づくり条例」について、です。大阪府とは異なりまして、大阪市では、まず「大阪市人権行政基本方針」ができました。そのなかで条例を作らなければならないとしまして「大阪市人権尊重の社会づくり条例」が出来ました。
ですから、「大阪市人権行政基本方針」の具体化として「大阪市人権尊重の社会づくり条例」ができたというふうなかたちになっております。
どういった経緯で、「大阪市人権行政基本方針」と「大阪市人権尊重の社会づくり条例」ができたかともうします。
市におきましては、平成9(1997)年1月に、大阪市同和対策推進審議会の意見具申の中で「同和問題の解決のための今後の取り組みを、これまでの成果をふまえ人権の確立をめざす総合的な施策の中に新たに再構築し、市民一人ひとりの人権が尊重される国際人権都市大阪の実現をめざすべきである。今後の同和行政の推進にあたっては人権の世紀である21世紀を展望した人権施策を総合的に推進する体制の整備を図るため、同和対策部や同和教育企画室等のあり方について検討を加えるべきである」と総合的に人権施策を推進することが必要であるといった答申を出しました。
そのあと、「人権教育のための国連10年」の大阪市行動計画が、平成9(1997)年8月に策定されました。
平成10(1998)年2月に、大阪市が発表しましたのが「人権行政の推進に向けた体制の整備について」です。どういった内容かともうしますと、「今日、21世紀を真に人権の世紀とするために、市民一人ひとりの課題として、人権の尊重の社会づくりに取り組むことが重要となっています。このため、差別のない、人権が尊重される社会の確立をめざして、市政の重要な課題として、人権行政を積極的に推進していきます。人権行政を具体的に展開するために、人権の視点を、すべての行政施策の基本にすえた人権行政基本方針を策定して、広範囲な取り組みを進めます」といったことです。
そこで、具体的に人権行政を展開するために、基本方針を作ろうという動きがありました。まず、体制をどういうふうなかたちでやるかということで「人権行政にかかる有識者懇話会」を設置しました。その懇話会に出席していただいた方がたを『大阪市人権行政基本方針』の一番最後に「策定にあたりご意見、ご助言をいただいた方々」ということで、載せています。
庁内の改正としましても、平成10(1998)年4月に市民局の中に人権部を設置しました。それまでは、市民局同和対策部というかたちだったんですけれども、人権部と名称を変え(ました。そし)て、同和対策だけではなく総合的人権行政をすすめるための仕事をすることになりました。
「大阪市人権施策基本方針」をつくるにあたって、「大阪市人権施策推進本部準備会」をつくりました。人権施策推進本部というのは、全庁的な体制になっておりまして、すべての部局の人がはいっております。それを、まず基本方針をつくる前に、準備会としてつくりました。その中でも検討し、庁内的にも検討し、有識者懇話会の意見も聴きながら、平成11(1999)年4月に「大阪市人権行政基本方針」をつくりました。そのあと基本方針の中で、またあとで説明しますけれども、条例を作るということになりましたので条例の策定について検討し、平成12(2000)年の4月に「大阪市人権尊重の社会づくり条例」を施行しました。そして、現在に至っております。
それで、『大阪市人権行政基本方針』について、簡単に説明させていただきます。まず、一番最初に「基本理念」としまして、資料(『大阪市人権行政基本方針』)の3ページから4ページぐらいのところまでです。人権行政とは、なんぞやということを定めています。
大阪市がめざす人権行政は、3ページにあります。それは「市制において日常の業務はもちろんのこと、すべての施策の企画から実施にいたる全過程を通じて、すなわち行政運営そのものを人権尊重の視点から推進していくことにほかなりません」というものです。人権尊重の視点がすべての行政運営をすすめる上で必要だ、と(述べています)。
じゃあ、人権行政とは、いったい何をめざすのか、どういうふうな状態を推進していくことが人権行政になるのか、というところで3つの基本理念をあげました。
<1>「人間の尊厳の尊重」 <2>平等の保障 <3>自己決定権の尊重
これを3つの基本理念として、こういったものを具体的に施策に生かしていかなければならない、というのが人権行政の基本というふうに規定しています。じゃあ具体的に、どういうふうなことをやっているのか、ということが、その次の5ページから7ページにかけて、です。
その内容は、「うるおいといきがいのある、まちづくりに向けた取組」であるとか、「心豊かでいきがいのあるまち」をめざしているといった「まちづくり」の現状についてふれています。
これは具体的に、すでに進んでいる分を書いています。つまり、この基本方針にのっとって、すすめているというよりは、今まで、いろんな要綱ですとか基本指針ですとか計画ですとかがあるところを、もう1度、先ほど言いました人権行政の視点から表明し直して整理したのが「人間主体のまちづくりの現状と課題」です。
「直面する課題への取組」として8ページに、ありますように、同和問題をはじめ外国籍住民にかかわる問題ですとか、障害者・高齢者・子ども・女性にかかわる問題、そして、その他の問題といった直面する課題について、ここで分析をしております。
それに対して、どのような計画をもって、どのような施策をすすめているかということについても、この中で、お話しております。
これ(『大阪市人権行政基本方針』の冊子)を作成したのが99年ですので、今は、これよりもすすんでいるところも多くあります。
「新たな人権行政推進のシステムをどのようにしていくか」ということが、15ページにあります。「新たな人権行政推進のシステム」として、基本方針の中で、言っておりますことは、おもに2点、ございます。
1つは「人権尊重を基礎とした業務の遂行と、施策の企画・運営システムの構築」をはかる、ということです。人権行政というものが、一番最初に申しましたように、日常業務すべてにおいて人権の視点を含むということが人権行政を推進するということですので、まず、人権行政を基礎とした業務遂行をしなければならない、ということを一番最初に指摘しています。すべてにおいて、市民に接する窓口的業務だけではなく、すべての職員が市民の立場に立って業務を遂行するということにしています。
そのなかの「(2)施策の企画・運営システム」です。これは人権行政を推進し、市政のすべての分野にわたって、3つの基本理念を具体化するために「基礎」を踏まえて、どういうふうにしていかなければならないか、その方向性については、16ページのア・イ・ウ・エになります。
「ア 現状の分析と政策課題の設定」。先ほどの「基準に沿って現状を分析し、政策課題を設定する、ということです。
「イ 施策の企画・検討」。この「基準」を織り込んだ施策を企画・検討し、すでに策定された計画・施策などについても「基準」に基づき必要に応じて見直す、ということです。
「ウ 施策の策定と実施」。明確な「基準」に基づいた明確な目的・目標を立て、より効果的で実効あるものを策定する、ということ。そして現存の施策については、「基準」に照らして、必要に応じて適切に改善する、ということです。実施については、そのすべてにおいて「基準」を踏まえ業務を進めることです。
そして最後に「エ 施策の事業効果についての評価・検証」が必要である。実施した施策については、「基準」に基づき、その事業効果について評価・検証するというふうにシステム化することが必要であるといふうにしております。
2つめの「人権行政推進のための体制」について、です。これをつくるために先ほど準備会をつくったと申しあげましたが、「大阪市人権施策推進本部」を設置しております。
これは全庁的に人権行政を推進するために、各部局から出ていていただいております。それと「大阪市人権施策推進審議会の設置」ということで、あとで条例の中でお話しますが、有識者を中心にして作っております。
それと、もう1つは「『大阪市人権教育のための国連10年推進本部』の取組」です。人権教育・啓発の分野において、国連10年推進本部が取り組みを進めています。国連10年の推進本部は、「大阪市人権行政基本方針」よりも前にできているですが「基本方針」の中でも位置づけをしています。やっていくことについては、『大阪市人権行政基本方針』の17ページから19ページまでにあります。それは「人権教育・人権啓発の推進」「庁内の人権問題職員研修の推進」です。
最後になるんですが「3 市民参加の促進」ということで、大阪市が庁内だけで進めていくだけではなく、人権行政を進めていくために市民参加も必要であるというところから、これが入りました。
1つは「ボランティア活動のインセンティブ(誘導策)の企画」をして、人権に関わる市民の自主的なボランティア活動をうながすような事業の企画をおこなうことです。ボランティアにつきましては、市民活動推進課という課ができています。
2つめは「市民ニーズの反映」です。このために以下の諸点が盛り込まれている。
「ア 各種相談のネットワーク化」。大阪市におきましては、いろいろな相談窓口を設けております。専門の窓口もそうなんですけれども、さらに市民ニーズに応え、知的障害者などの財産管理相談やスクールカウンセラーなどの充実にも努めています。また、国、大阪府、民間団体におきても、いろいろな人権に関わる相談を実施しています。人権侵害の事案については、相談機関相互の連携が必要であるという認識がありますので、人権問題に対応する相談窓口の整備をしていかければならないと考えております。
そのために「イ 新たな相談ニーズへの対応」をしていくために、新たな人権問題への効果的な対応や啓発を推進する体制の充実、強化を図ります。
「ウ 『市民の声』制度を行政システムの改善に活かす仕組み」。「エ 実態調査などの実施」。
こういったかたちで「基本方針」が、できました。
《2.「大阪市人権尊重の社会づくり条例」につい て》
こちら、簡単なリーフレットになっていますが、これで全文、書いております。
大阪府の条例と、非常によく似ています。大阪府の条例とちがうところだけ、言います。「第4条 事業の推進」の部分です。人権尊重の社会づくり事業について、第4条に書かれていますのが、「市民の人権意識の高揚等人権啓発に関する事業」が1つ。もう1つ、具体的にあげていますのが、先ほど「大阪市人権行政基本方針」の最後に説明させていただきました「人権問題に関する情報の収集及び提供並びに相談ネットワークづくり」という事業と「その他の人権尊重の社会づくりを推進するために必要な事業」です。 人権啓発に関する事業をおこなうにあたっては、大阪市人権啓発推進協議会と、府の人権啓発推進協議会との連携を図ります。
それともう1つ、こちらの「大阪市人権行政基本方針」の説明のなかで、ちょっと説明をさせていただきましたが、「大阪市人権施策推進協議会」をつくりました。それを発展的に改称し、新たにつくり直したかたちで条例の中に「大阪市人権施策推進審議会」について、盛り込んでいます。体制については、第5条の通りです。現在、そのかたちで、審議会が進んでおります。
《3.「人権尊重の社会づくり条例」にかかる取り 組みについて》
私が(人権部企画課に)入ってくるまでに、おもな取り組みが、そこまでとなっています。ここからが、最近の動きになります。
この条例(大阪市人権尊重の社会づくり条例)で、先ほど具体化に向けた取り組み事業の推進というところで出ました「人権啓発に関する事業」と「情報提供・各種相談のネットワーク化事業」について、ちょっと説明させていただきます。
人権啓発に関する事業につきましては、「大阪市人権教育のための国連10年後期重点計画」が策定されました。このなかで、どういうふうなことをやっていくのかということが、書かれています。これを詳しく説明していくと、ひじょうに時間を取りますので、簡単に言います。じゃあ、後期重点するところは何かと言いますと、「生涯にわたる人権教育・啓発を進めるために学習環境を整備する」「就学前教育、学校教育、生涯学習」「地域を重視した人権啓発・教育を展開する」「生活の場で人権教育を進める」「NGOやNPOなど、さまざまな分野での人権に関われる特色のある活動をしているところとの活性化と協働の取り組みを進める」「本市職員や外郭団体職員、地域のリーダーなど、人権が尊重に影響力をもつ人びとへの人権教育を推進する」「さまざまな機関との連携」といったことが、後期重点計画で述べられています。こういったかたちで、人権啓発にかかわる事業の取り組みが進められます。
もう1つ、最後が、進みつつあるのが「基本方針」の中で書いてありました「各種相談のネットワーク化」あるいは条例(大阪市人権尊重の社会づくり条例)の中でもありました「情報の収集提供並びに相談ネットワークづくり」です。
これについての検討は本市におきましては、先ほど、言いました「大阪市人権施策推進審議会」という有識者の会議の中で、「相談のネットワーク」を検討する検討部会を立ち上げております。来月の9日に、ようやく第1回の検討部会を開くことができます。そこから、具体的に、どういったことがネットワークに必要なのか、ネットワークをすることでどのように人権問題・人権擁護にかかわる取り組みが進むのか、といったところの意見を求めていくこととなっています。
もう1つは、全庁的な取り組みがおこなわれる「大阪市人権推施策進本部」の中にも、情報提供・相談ネットワークを検討する部会を作りました。その中で、それぞれの部局におきまして、女性問題ですとか、高齢者、障害者の問題、子どもにかかわる問題について、相談体制のネットワークを、さまざまな機関ですすんでいるんです。けれども、それを総合的に人権擁護の資する体制にするには、どうしていけばいいのか、という意見交換をしています。
大阪府の方では、人権にかかわる総合相談窓口が来年から始まる予定です。○○○○徐々にではありますけれども、具体的に何ができるのか。窓口を作ったからといって、それだけで、できるものではないので、国の状況なども踏まえながら、ネットワーク化については検討していこう、というのが一番大きな課題です。
今までの取り組みと現状、これからやっていくこととについて、簡単に説明をさせていただきました。