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2005.02.24
部会・研究会活動 <国際身分研究会研究会>
 
人権条例等の収集と比較研究および提言プロジェクト報告書
大阪府の人権条例と今後の人権行政の方向

大阪府人権室

(1)人権尊重のまちづくりに関する提言

 それでは最初に大枠といいますか、ざっくりしたところを私のほうから話しまして、後程、くわしく3人のほうからお話をさせていただきます。

 皆さんよくご存知だと思いますが、大阪府では1998(平成10)年11月に大阪府人権尊重の社会づくり条例を施行しております。お手元の資料のなかにリーフレット入れさせていただいております。この条例は4条からなっておりまして、1998(平成10)年世界人権宣言採択からちょうど50年目の節目の年に施行させていただきました。人権尊重の重要性を明確に示しますとともに、今後の人権行政の枠組みを定めて、すべての人の人権が尊重される豊かな社会づくりの実現を目指していくものでございます。

 条例制定の経過でございますが、1996(平成8)年4月に「大阪府差別のない人権尊重の街づくり協議会」を設置いたしました。これは差別のない人権尊重のまちづくりのための方策について、を受けました。協議会から1997(平成9)年5月に提言を受けました。この協議会は、学識経験者等10名で構成された協議会であり、主な提言は、差別のない人権尊重のまちづくりのための基本的方向と、まちづくりの方策、あるいは法的整備の必要性、それから特に「条例にもり込むべき事項」ということで、具体的な内容の提言がされているところが特徴でございます。

 続きまして1997(平成9)年10月に、今ご説明しました、提言の内容の具体化を図るに際しましては、なお幅広い観点から提言を行うために発足いたしましたのが「大阪府人権尊重の社会づくり懇話会」でございます。この懇話会は、各界府民の代表の方々等26名から構成されており「人権尊重の社会づくりに関する提言」を受けています。本来でしたら中身まできっちりご説明するところですが、限られた時間でございますので、資料につきましては、のちほど目を通していただくということでよろしくお願いします。

 このように協議会、懇話会を設置いたしまして、人権に関します学識経験者及び各界の意見を聞きながら人権尊重の社会づくりをすすめたところでございます。

 こうした提言を受けまして、1998(平成10)年9月に条例案を議会上程しました。10月に一部修正の上、可決成立いたしまして、1998(平成10)年11月、条例を施行いたしました。これにつきましてはパブリックコメント等の実施はしておりません。また、各種団体から制定要望、あるいは制定反対のご意見等もあったところでございます。

 議会の反応ですが、主な論点といたしましては、条例制定の必要性、審議会の公正中立性・透明性の確保、条例に基づいて定めていこうとしております基本方針策定にどのような形で議会の意見を反映させていくのかという意見が出てました。

 資料の3でございますが、そこに最初に上程いたしました原案と修正案が比較できる形で出ております。これにつきましては後ほどご説明いたします。

 それから「条例の基本理念に関連して」ですが、人権尊重の重要性を内外に示しますとともに、今後の人権施策の枠組みを定めることによりまして、すべての人の人権が尊重される社会の実現を目指そうとするものであり、それから成立に際しまして府議会のほうから附帯決議が附されました。

  1. 大阪府人権施策推進審議会の運営に関しては公正中立性及び透明性を確保すること。
  2. 審議会の学識経験者としての委員については偏ることなく幅広く選任すること。
  3. 本条例により過剰な財政的な負担が生じないようにすること。
  4. 市町村、事業者及び府民と連携するに当たっては、その自主性を損なわないようにすること。

という4項目です。

 この条例に基づきまして、1999(平成11)年5月、大阪府人権施策推進審議会に人権施策推進基本方針について諮問いたしました。2001(平成13)年1月に答申を受けまして、同年3月、大阪府人権施策推進基本方針を策定いたしました。その基本方針につきましてはお手元のオレンジ色のリーフレットでご案内をいたしております。

 総合計画等ですが、お手元の資料4「大阪21世紀の総合計画」の抜粋をさせていただいております。この総合計画の前に1991(平成3)年9月に「大阪府新総合計画」が策定されておりまして、それにつきましても人権を尊重する社会を形成していくという計画があったところでございます。この資料4の26ページを開いてください。こちらのほうに「第3章 大阪21世紀の総合計画がめざしている視点」その第1節 「21世紀を開く鍵」ということでその(1)ですね「誰もがお互いの人権を尊重し、支えあいます(共生の視点)」ということで、踏まえておくべき基本となる視点について、この考え方をかかげております。

 38ページ、第3項 将来像と実現に向けた基本方向 ここで1人を育てる大阪、その下のところで、将来のイメージ、人権が尊重され、一人一人が能力を発揮できる社会になっています。

 あとは「基本計画の考え方」等をずっとつけさせていただいております。72ページに「大阪21の元気の内容」人権尊重都市への取り組みの「大阪元気リスト」で「人権意識が向上していると思っている府民の割合」「過去1年間に人権侵害を受けたと感じている府民の割合」「人権問題に取り組むNPO、大学等における人権問題に関する講座の数」を作成しております。

 そのあと98ページからは「人を創り、人を活かす」(1)すべての人の人権が尊重される社会づくり、(2)人権意識を高める人権教育の充実、を揚げ大阪府の総合計画を策定しているところでございます。

 また「人権教育のための国連10年大阪府行動計画」を1997(平成9)年3月に策定いたしまして、2001(平成13)年3月に「人権教育のための国連10年大阪府後期行動計画」を策定いたしました。これについてはのちほどご説明いたします。

 次に人権に関わる他の条例ですが、資料5-1から5-3まで

5-1 大阪府男女共同参画推進条例
5-2 大阪府福祉のまちづくり条例
5-3 大阪府個人情報保護条例

 それから大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例 等がございます。

次に責務規定に関連してですが、前文で「すべての人間が固有の尊厳を有し、かつ、基本的人権を享有することは人類普遍の原理であり、世界人権宣言及び日本国憲法の理念とするところである。かかる理念を社会において実現することは、私たちすべての願いであり、また責務でもある」とあり、また第1条(目的)では「この条例は人権尊重の社会づくりに関する府の責務を明らかにするとともに」ということで第2条に府の責務を示しております。さきほど条例の原案と修正案の対比表をお示ししたところでございますが(資料3)、原案では(2枚目下)市町村等の役割とあり(第3条)、市町村は、事業者は、府民は、とそれぞれの役割を示していたところですが、修正案では「府の責務」のみを残しております。これにつきましては議会のほうでいろいろと議論がなされまして、市町村につきましては地方分権の時代に市町村への行政の干渉につながるのではないか、また事業者、あるいは府民は一方的、直接的に義務をかけることは問題である、ということで削除ということになりました

それから推進体制についてですが、お手元の資料6「人権室組織表(平成14年度)」をつけさせていただいております。現員41名でございます。室のなかに課長が3人おりまして、人権企画・平和担当の課長、人権推進担当の課長、同和企画担当の課長がおりまして、それぞれに参事、各グループがございます。また、庁内の横断的な組織としては(資料7)大阪府人権啓発推進本部、大阪府人権教育のための国連10年推進本部、大阪府同和問題解決推進本部の3つがございます。

それから人権室の兼務(または併任)職員なんですが、1966(昭和41)年2年に同和対策室が発足して以来の制度でございまして、現在20名の兼務(併任)職員がおります。府のすべての施策すべての部局は人権との関わりがあり、全庁的に人権施策の推進をはかっていこうということで、主に各部の総務課の課長補佐が就任しておりまして、またそれプラス、さまざまな人権問題に関連する課、例えば男女の関係ですとか、福祉など各部の総務課の課長補佐が兼務職員として就任しております。

 それから人権関連の施設ですが、大阪人権博物館(リバティおおさか)、大阪国際平和センター(ピースおおさか)、アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)、大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)などです。これらについてはお手元の冊子(「気づき」からはじめよう ともに考える人権ガイド)の最後のページでご紹介しております。

それから条例推進の審議会については資料8で、大阪府人権施策推進審議会でございます。これは学識経験者12名により構成されております。

 教育委員会関係につきましてはヒアリングは受けておりませんで、お手元に資料10、11、をお配りしております。これが教育委員会の体制、人権教育推進の概念図、基本方針推進プラン、1999(平成11)年3月、をつけさせていただいております。


(2)人権教育・啓発施策の方向性

 教育・啓発に関しましては「人権教育のための国連10年 大阪府後期行動計画」に基づきまして、教育・啓発をおこなっております。この行動計画は、府の人権施策の基本方針の中に2つの大きな柱がありますが、ひとつの柱が人権意識の高揚を図るための施策、もう1つは人権擁護に資する施策ということで、これは1つ目の柱の具体化のための実施計画の位置づけをしております。ただ、もう1つの位置付けといたしましては(30ページをご覧ください)後期行動計画の計画の推進にあたって、というところの4番に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律の第5条で、地方公共団体の責務として、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、実施することとされており、この行動計画をもって大阪府の基本方針と位置づけ法律の具体化に努める」とあり、教育啓発法というのが新たに制定されまして、こちらのこの5条にもとづく大阪府の計画と位置づけをしているところです。

それとあわせまして、からその下の5番「人権教育のための国連10年」が終了した段階で、本計画の取組み状況を点検し、人権教育にかかる計画を策定する、ということで、2004年12月(平成16年)に国連が終了いたしますけれども、終了後も国連10年の取組みを引き継いで計画を策定すると書いておりますので、来年度からは新たな計画作りにも取り組んでいかなければいけないかな、と考えております。

そのなかでどのような事業をしているかといいますと、順番に説明していくと非常に大きくなってしまいますので、リーフレットの5、6ページに「人権教育施策の方向性」と簡単にまとめさせていただいております。大きな5つの柱にわかれております。

1つ目の柱が学校や職場における人権教育の推進

2つ目があらゆる人権教育の場面の確保

3つ目が人材の養成

4つ目が効果的な人権教育・情報提供の実施

最後に国、市町村、民間企業・団体等の連携

という5つの柱で施策の方向性をかかげております。

 とりわけ後期行動計画、中間年の見直しをしたわけなんですが、後期行動計画で力を入れておりますのが、教材の開発と、それから説明の柱の最後なんですが、公務員等に対する人権教育の推進でございます。教材につきましてはこれまで人権教育を進めなければいけない、と呼びかけようとしているんですが、どのような中身のことをしていけばよいか、という質的な検討につきましては、まだまだ十分ではないと考えております。啓発冊子という形では、毎年、大阪府でも府民の方に読んでいただけるような冊子を作成しているんですが、やはり学習ということで、自分自身の問題にひきよせて考えていただけるような教材というのは、まだまだ十分ではないな、というところでございます。

 今日も配らせて頂いております冊子、「気付きからはじめよう」は、これまでの反省をふまえまして、学習の場面でも使っていただけるよう、単なる読み物だけにとどまらず、まずは身近な事例から人権のことを考えていただいて、たとえば、グループで、家族で話し合っていただいたり、そこから始まって、法律や政府や国際的な人権の基本的な考え方などについても知識を得ていただくような形にしようということで、こういった冊子も新たな試みとして作りました。実際に、地域で、企業、職場で私どもの職員研修などでもいろいろ活用して実施しているところです。

それからもう1つのポイントとしてさきほど申しました、府の職員、公務員に対する研修の充実というところなんですが、来年度から府のあらゆる職場で職場単位で参加体験型の人権研修を実施していこうというふうに考えております。階層別研修を人事課が実施しておりまして、課長補佐級1年目2年目の方を対象に研修を実施します。で、その研修を終了した方に人権研修を各職場で実施していただきます。

 右上に「教材の整備」としては、職員向けの研修教材を研修の進め方を含めたものを作成しまして、それを使って、各職場で実施していくという形で、2002(平成14)年度はモデル職場を選定し試行実施いたしました。それをもとに、現在、教材を改定しております。来年度は改定した教材を使って、それぞれの職場で実施をしていただくことになっております。これまでは1番下の欄にありますように新規採用職員研修であるとか、中途(採用)職員研修であるとか、階層別研修といわれるようなもののなかで人権研修をしてきましたが、それに加えまして、今後はそれぞれ職場で業務の実態に応じて、教材のなかからそれぞれの業務に一番合ったプログラムを使っていくということ始めます。

 教材を作成するうえでのコンセプトとしては、

  1. 人権行政を進めるうえで基本的考え方及び人権関係条例、法律、国際人権等の基礎知識の修得・確認ができること、

  2. 気づきを促し、人権尊重の視点に立った職務が遂行できること、

を揚げております。

 内容としましては、まずアイスブレイキング、ということでアクティビティをしていただきます。

その上で次々に身近な事例(エピソード)をもとにグループワークをしていただきます。

 このようなメニューをいくつか用意して、その中からそれぞれ職場で選択をして実施する、というようなことになります。

 それ以外にもそれぞれ国連10年でいわれる特定職業従事者といわれる福祉関係の仕事している方々、警察職員の方などに、研修を受けていただきます。

 それと、この大きな柱の3つ目「人材の養成」といたしまして、やはり府民のみなさまにも自発的に人権学習を進めていただくために、それぞれの地域に密着した形で、人権に関しての気づき、行動を促すというようなことでも身近な指導者の養成につきましても、養成するための教材なりプログラムをいま、研究所のほうでもご検討いただきながら進めているところです。

 そういったものを大阪府なり各人権関連施設が共同で開発しましたら、それを各市町村に活用していただいて、それが地域で人権問題に結びつく、というのであればいいなというふうに思っております。


(3)人権擁護施策の具体化をめぐる動向

 それではお手元の資料13に基づきましてご説明申し上げたいと存じます。

 まず資料につきましては、人権相談に関する全体的な姿を1枚目につけさせていただき、その次に人権擁護施策の具体化をめぐる国あるいは大阪府の動きをまとめております。その次が人権相談機関ネットワーク規約等々についてございますが、まず2枚目をお開きください。

 人権擁護施策の具体化をめぐる動向としまして、国、および大阪府の動きを簡単にまとめてございます。まず国のほうでは1997(平成9)年に人権擁護推進審議会を設置されますとともに人権擁護に関する世論調査を総理府のほうでされました。その中で人権擁護委員への相談の割合が1.1%、それと相談の結果に満足できなかった方が7割、人権擁護委員の活動を知らなかった方が5割、というような世論調査の結果が出ています。そのようなことをふまえて審議会で議論された結果、1昨年5月、「人権救済制度の在り方について」の答申がございまして、同年12月「人権擁護委員制度の改革について」の追加答申がございまして、現在、人権擁護法案が継続的に審議されているというような状況でございます。

 一方、大阪府につきましては、1998(平成10)年の大阪府人権尊重の社会づくり条例に基づきまして、大阪府の人権施策推進審議会答申をふまえまして、1昨年の3月に大阪府の人権施策の道しるべとなる「大阪府人権施策推進基本方針」が定められたところでございます。そのなかで、さきほど説明がありましたが「人権意識の高揚を図る施策」と並びまして、「人権擁護に資する施策」が明確に位置付けられたところでございます。そのなかの3本柱が

  1. 府民の主体的な判断・自己実現の支援
  2. 人権にかかわる総合的な相談窓口の整備
  3. 人権救済・保護システムの充実

でございます。

 さらに、2000(平成12)年に「同和問題の解決に向けた実態等調査」がおこなわれまして、そのなかでも

人権に関する被害に遭遇したにもかかわらず、相談しなかった方が4割いたということであります。そうしたことから、一昨年9月の府の同和対策審議会答申のなかで4点ほどご提言いただきまして、それぞれ申し上げますと

1点目は具体的な人権相談を実施している機関相互間の連携体制の確立をはかる必要がある。

2点目が人権相談を受ける相談員の技能向上等を図る人材養成が必要である。

3点目が具体的な事例をもとにした人権相談に関するノウハウの集積など人権に関する総合的な相談窓口機能を整備する必要がある。

 4点目が国審議会答申に基づく人権救済機関との連携協力体制の構築と、この4点がございまして、大阪府といたしましては大阪府の人権施策推進基本方針、ならびに大阪府の同和対策審議会答申、この2点に基づきまして、本年度から人権相談体制の整備を進めているというところであります。

 それで、その人権相談体制の枠組みでございますが、1枚目に戻っていただきたいとぞんじますが、まず人権相談につきましては、当然行政だけでできるものではございません。大阪府、市町村という行政と、府、市町村の人権施策推進のための協力機関でございます財団法人大阪府人権協会、それと、専門性、柔軟性、機動性を有しておりますNPO、NGO等の相談機関と連携しながら府内での人権相談システムを確立するというような考え方でございます。そのなかで大阪府といたしましては、財団法人大阪府人権協会とともに人権相談機関ネットワーク事業をすすめております。「人権相談機関ネットワーク連絡会」ということで、これは行政だけではなく、NPO、NGO等の相談機関にも入っていただいて、相互に情報交換、意見交換をはかり迅速かつ、簡易な人権相談システムを確立し進めようとするものでございます。また2点目がございますが、これは「人権相談システム検討会議」ということで、人権相談のありかたについては今後ともいろいろな検討を加えていく必要がございますので、学識経験者等に入っていただいたなかでいま議論をしているところでございます。

 それから、「市町村」ですが、人権侵害は地域で生じますので、市町村を実施主体といたしました人権相談窓口を本年度から整備につとめていく意向でございまして、今現在、大阪市、堺市をのぞく42市町村に対して、大阪府補助事業として展開しておりますけれども、現在42市町村のうち34市町がすでに実施いただいているところでございます。

 それとこの事業の大きな内容といたしましては、市町村が実施主体でございますが、さきほど申しあげたNPO、NGO等の相談機関に委託することができるというような事業となっております。

 こうした地域での相談活動を支援していただくために、財団法人大阪府人権協会については、大阪府の補助事業といたしまして、人権に関する総合的な相談窓口を整備いただいております。その主な内容は(添付資料につけさせていただいておりますが)大きくわけて、月曜日から金曜日まで毎日、人権相談の窓口を開設いただいていることと、もう1つ、法律的な問題がございますので、大阪弁護士会と連携いたしまして、法律相談を実施して頂いているところでございます。

 それと3点目に人権相談に関する事例集約・分析でございますが、これは人権相談から見えてきた課題等につきまして、事例を集約することによって今後の人権施策を有効に推進していくための事業でございまして、今現在、精力的に財団法人大阪府人権協会と取り組んでいるところでございます。

 それと次に、これは大阪府からの委託事業といたしまして、当然人権相談にたずさわっていただく方、これはこれは高い専門性が求められますので、今年度から研修事業を実施しているところでございます。

 人権相談機関のネットワーク規約というのを大阪府と財団法人大阪府人権協会で作っておりまして、ネットワークの目的は、大きく分けて2つあると考えております。

 1点が、人権侵害を受けまたは受けるおそれのある府民の方が課題を解決できるように支援する、ということと、もう1つは、日々の相談活動を通じまして人権問題の実情や、課題、ニーズを的確に把握いたしまして、今後の人権施策の有効かつ効果的な推進に資するということです。そのために行政機関、公益法人、NPOなどのさまざまな相談機関から構成する人権相談(機関)ネットワークを構築するということでございまして、相互の連携、協働をはかることにより、府民の人権に関する様々な相談に対して、より適切な対応ができるようにするものである、ということでございます。

 それからネットワークの加盟要件が3点目に書いてございますが、これは、特にNPOにつきまして、もともと法人格を持たない団体につきましても門戸を広くひろげるという意味で、法人格を有しないNPOにあっても次のような基本的な営利を目的としないという要件がございまして、あとはそれほどきびしい加盟要件がありません。

 そのほかには当然でございますが、「人権に関わる相談を実施していること」であるとか、宗教、政治、選挙の関係などで特定の者を支援していない等々でございます。

 8番目、9番目については人権相談の非常に重要なテーマでございます、個人情報について適切な管理のために必要な措置を講じられていることがあげられています。このネットワークそのものが非常にフラットな関係でございますので、目的活動内容について賛同いただいたところには基本的に加盟いただく、ということでございます。ただ、このネットワーク加盟によって、なんら権利が生じるものではないという考え方でございます。

 それでネットワーク加盟状況ということで、次のページ(4枚目を)見ていただきたいのですが、ちょっと古いバージョンで申し訳ないのですが、昨年の7月に初めてネットワーク連絡会というのを実施いたしまして、そのときは163機関とありますが、現在235機関にまで増えておりまして、主なところで申し上げますと、国の機関である大阪法務局と、大阪労働局にも加盟いただいております。それと次に、市町村ですが、今までは人権担当部局が加盟いただいておりましたが、福祉事務所等をはじめといたしまして、いろんな相談機関がございますのでそういったところに入って頂いて現在100機関入っていただいているというのが主なところでございます。

 それから地域人権協会につきましても、当初17機関でございましたが、30機関ということで13機関に新たに参画頂いております。

 それから(5枚目)、「人権相談システム検討会議」の設置要項というのをつけさせていただいておりますが、これにつきましては、さきほど申し上げました人権相談のネットワークの運営とか、いろんな人権相談のあり方について専門的な見地から幅広く意見を求めるということで設置しているところでございまして、裏面のほうに人権相談システム検討会議に参画いただいている方のお名前を記載しておりますが、基本的には学識経験者、市長会、町村町会の代表者、それと大阪府、大阪市の人権協会、それと有力な相談機関の代表者ということで府、あるいはNPO等の相談機関の代表者の方に入って頂いております。

 それと、もう1つの大きな柱は、次のページ(6枚目)に書いてございます「人権相談員養成基礎講座」ということでございますが、こちらは昨年の7月から9月にかけて、10日間で40講座を初年度やったところでございます。

 それで79名の方が市町村長の推薦に基づいて受講いただいたわけでございますが、非常に厳しく、やはり専門性を高めるということで、基本的に40講座のうち30講座は必ず受講いただくということに加えまして、レポート提出を義務づけた上で、最終的には70名の方々が修了いただいたところでございます。

 それと、来年度につきましては、こうした養成基礎講座を継続的に続けますとともに、養成基礎講座を修了された方々については、いろんな相談事例に基づいた応用講座というのを展開していきたいと考えております。

 それと財団法人大阪府人権協会・市町村のほうで実施していただいております、人権相談、あるいは法律相談のリーフレットをつけさせていただいているところでございます。

 以上、簡単ではございますが、説明を終わらせていただきます。


(4)大阪府における今後の同和行政のあり方について


 お手元の資料として、2冊の冊子をお配りさせていただいておりますが、まず「同和問題の解決に向けた実態等調査からみた現状等」の冊子でございますが、これにつきましては、人権教育・啓発及び相談、教育、生活福祉、労働、産業、農林業、住宅・住環境という7つの分野におけるこれまでの取り組みや、2002年に実施いたしました実態等調査からみた現状、課題等を整理したものでございます。それでは、もう一方の(冊子)「大阪府における今後の同和行政のあり方について」ご説明させていただきます。

 まず地域改善対策特定事業にかかる国の財政上の特別措置に関する法律、いわゆる「地対財特法」の失効後における大阪府の同和問題解決のための施策における考え方につきましては、関係団体の代表のみなさま、また学識経験者のみなさまなど、幅広い方々の意見をふまえまして、2001(平成13)年9月にとりまとめられました「大阪府同和対策審議会答申」によるところとなります。今般作成いたしました、この「大阪府における今後の同和行政のあり方について」サブタイトル「平成13年(2001)9月大阪府同和対策審議会答申に基づく同和問題解決のための施策の方向について」につきましては、この答申において示されました法期限後の一般施策活用による同和問題の解決のための施策の考え方につきまして、具体的にイメージしやすいように取りまとめたものでございます。そのため、冒頭に、2001(平成13)年に同和対策審議会からいただきました答申をかかげまして、次に第1章で今後の施策の基本的方向、第2章で各分野における今後の施策の推進方向、最後に第3章といたしまして、周辺地域と一体となったコミュニティーの形成に向けた「地域のまちづくり」を「まとめ」として構成しました。

 まず31ページをお開きいただけますでしょうか。

 第1章「今後の施策の基本的方向」でありますが、これは答申が示します、地対財特法失効後の一般施策活用による大阪府における同和問題解決のための施策の考え方をとりまとめたものでございます。

 次のページの32ページから具体的な内容になっておりまして、はじめに施策の基本方向といたしまして「同和問題は、人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる深刻かつ重要な課題である」こと「同和問題の解決は、国の責務であり、同時に国民的課題であり、部落差別が現存するかぎり、同和行政は積極的に推進されなければならない」との昭和40年、1965年の国の同和対策審議会の答申の精神や、これまでの府同対審答申の趣旨に沿いまして、同和問題解決のための施策の推進に努める必要がある、との同和問題の基本認識を示しております

 32ページの下段からは、府においては、国の特別措置法や数次の大阪府同和対策審議会答申等を踏まえまして、積極的な事業展開を図ってきました結果、かつての同和地区の劣悪な状況は大きく改善されたものの、さきほど申しました2000年度に実施いたしました、「同和問題の解決に向けた実態等調査」などによりますと、進学率、中退問題など教育の課題、失業率の高さ、不安定就労など労働の課題等が残されているとともに、府民の差別意識の解消も十分に進んでおらず、部落差別事象もあとを絶たない状況であるなど、同和問題が解決されたとはいえない状況にあること。

 また、33ページの中段からでございますが、

 近年における同和地区の状況は、住民の転出入が多く、特に学歴の高い層や若年層が同和地区から転出し、低所得層、母子世帯、障害者など、行政上の施策等による自立支援を必要とする人びとが同和地区に来住している動向がみられ、同和地区には現代社会が抱える課題と共通したさまざまな課題が集中的にあらわれているとみることができる。

 このため、同和地区に対する新たな差別意識、社会的排除を再生産させないためにも、現代社会の抱える諸問題に対するより有機的・効果的な施策の取り組みが必要である」とした、基本視点を示しております。

 34ページ上段から中段にかけましては、今後は2001(平成13)年9月の府同対審答申の主旨を踏まえまして、これまでの特別対策は終了し、実態等調査の結果を十分活用するとともに、同和問題解決のための取り組みを人権問題の本質からとらえ、人権尊重の視点に立った一般施策として取り組んでいくことにより、同和問題解決のための施策を推進する。その際には、施策の企画・調整・点検評価を総合的に行いながら「大阪府人権尊重の社会づくり条例」の目的である「すべての人の人権が尊重される豊かな社会」の実現をめざしまして、周辺地域と一体となったコミュニティーの形成を図るという基本目標達成のため、府民の人権意識の高揚、自立と自己実現の達成、同和地区内外住民の交流促進のための諸条件の整備に向け、各部局の有機的連携のもと取り組んでいくことにより、同和問題解決の取り組みが普遍性をもったものとして府民の共感を広げ、同和問題の解決につながるものである旨を示しております。

 35ページ上段の(2)につきましては、大阪府といたしまして答申の基本目標で示されました今後の同和問題解決のための施策である1点目といたしまして「府民の差別意識の解消・人権意識の高揚を図るための諸条件の整備」、2点目として「同和地区出身者の自立と自己実現を達成するための人権相談を含めた諸条件の整備」、3点目で「同和地区内外の住民の交流を促進するための諸条件の整備」の3つの条件整備をはかりました。大阪府人権尊重の社会作り条例や、21世紀の大阪の将来目標を示します「大阪21世紀の総合計画」のめざす、

一人一人が個人として尊重され、その個性や能力を十分発揮できるような社会づくりに取り組む旨の基本目標を示しました。

 以下、35ページの下段から38ページかけましては、同和問題解決のための施策である3つの条件整備のための取り組みとして、1点目が「府民の差別意識の解消・人権意識の高揚を図るための取組み」、2点目としまして「自立と自己実現を達成するための総合的な相談を含めた取組みの支援」、3点目は「人権相談にかかわる相談体制の整備」、4点目で「同和地区内外の住民の交流を促進するための取組み」を示しております。

 39ページからは、これらの取組みの推進にあたっては、まず上段にあります(1)で、特別措置としての同和対策事業は終了をいたしますが、今後は同和地区、同和地区出身者のみに対象を限定せず、人権尊重の観点に立った一般施策として、総合的かつ計画的に推進していくこと、府と市町村は有機的な連携・協力のもと、それぞれに役割を果たしつつ、地域の実情に即したモデル事業を検討し、それに対する事業評価を行うなど、事業の効果的な推進に努めることを示しております。

 40ページになりますが、(2)で、この一般施策を効果的に活用するための総合的な仕組みづくりといたしまして、身近で当事者の立場に立ったアウトリーチを含めたきめ細やかな相談や差別事象などの人権侵害の実態把握を通じ、個人情報保護の視点を十分踏まえながら自立と自己実現の達成を図るための仕組みづくりに取り組むことや、府の施策だけではなく、国・市町村の施策が十分に活用されるよう市町村や地域におけるさまざまな人権相談等の活動を実施している団体等に対し、国・府の施策の創設・変更などの動向をきめ細かく周知するなど、積極的な取組みを図ることを示しております。

 41ページになりますが、また(3)では、広域的・総合的な立場からの地域の取組みの推進が必要なことから、府は、先進的な取組みに係るノウハウなどの情報提供やより専門的な相談などを通じまして、地域に身近な市町村やノウハウを有する当事者が参画した関係機関、NPO・NGO等のさまざまな活動が円滑に推進されるよう支援するなど、広域的・総合的な立場から地域における取組みを促進するための条件整備を行うことを示しています。

 41ページ下段でございますが、最後に(4)で、これらの施策を推進するための推進体制といたしまして、同和問題解決のための施策をはじめ、人権施策を推進していくための協力機関であります財団法人大阪府人権協会との連携をはじめ、大阪府同和問題解決推進審議会の活用や、庁内の推進体制の充実、さらに市町村との連携や国に対する働きかけを行うことを示し、今後の施策の基本的方向として、答申が示します、地対財特法失効後の一般施策活用による大阪府における同和問題解決ための考え方をとりまとめたものでございます。

 45ページから第2章に入りますが、124ページにかけましては1点目で人権教育・啓発及び相談、2点目で教育、3点目で生活福祉、4点目で労働、5点目で産業、6点目で農林業、7点目で住宅・住環境、この7つの分野におけます今後の施策の推進方向について、それぞれの各分野では冒頭に施策推進の基本となります基本理念をかかげまして、次に先に述べました、「今後の施策の基本的方向」にも示しておりますが、答申を踏まえました、今後の同和問題解決の施策である府民の差別意識の解消、人権意識の高揚を図るための諸条件の整備、同和地区出身者の自立と自己実現を達成するための人権相談を含めた諸条件の整備、同和地区内外の住民の交流を促進するための諸条件の整備の3つの条件整備に資します一般施策の取組みにつきまして具体的にイメージしやすく記載したものでございます。

 最後に125ページからですが、ここでは第3章、まとめといたしまして、同和問題解決の施策の推進に当たりましては、「まちづくり」の取組みが重要であることから、「まちづくり」の視点に立って、同和問題解決の視点、施策の推進にあたって、これまでの住民参加によるまちづくり、実態等調査等で明らかになった課題への取組み、まちづくりは暮らしづくり、

 豊かな人間関係の創造の視点に立った「総合的なまちづくり」を示し、締めくくっております。

以上、簡単ではございますが、「大阪府における今後の同和行政のありかたについて」説明を終わらせていただきます。

2003.03.31に報告されたものです