〈第1報告〉岡藤恵都子
どうして今、公営住宅制度の見直しなのか
公営住宅は住宅に困窮している低所得の人のための公的賃貸住宅のひとつであるが、今日の少子高齢化の進展、家族形態の変化、社会的弱者の多様化、国民の所得水準の変化等の社会経済情勢の変化に伴って今回ルールの見直しが行われることとなった。
主な改正点
今回(2005年11月)の改正は2006年2月1日から効力が発生するものと2006年4月1日から効力を発生するものがある。2月1日からは<1>他の公営住宅に住み替える場合(特定入居事由)が拡がった、<2>知的・精神障害者やDV被害者の単身入居が可能になった、<3>子育て世帯を裁量階層とすることができるようになった、の3点で、4月1日からは<1>単身入居者及び裁量階層に係る高齢者の年齢が60歳に引き上げられた、<2>収入超過者の家賃制度が2007年度から変わる、の2点である。
さらに、今回の改正では、収入超過者に係る家賃制度以外について、住宅地区改良法18条の規定により改良住宅に入居させるべき者が入居せず、また入居しなくなった場合に準用されることになっている。また、この他にもDV被害者を除く犯罪被害者等の公営住宅の取り扱いや、入居者資格審査、入居者選考及び入居後の管理など公営住宅管理の適正な執行、入居継承に係る承認の厳格化などについて、国土交通省から通知が出されている。
〈第2報告〉内田雄造
今回の公営住宅法の改正については、一般的には好意的である。というのも、これまでの公営住宅の運営は、その緊急セーフティーネットとしての機能が低下していたと思われるからである。すなわち、家賃が極めて低く、一般住宅との不公平が著しいこと、公営住宅は、生活保護に類する機能を有しているが、生活保護支給認定は大変厳しく、生活保護世帯との公平性も損なわれている。さらに承継のあり方は規則上極めて曖昧で、近親者が引き継いでしまっている実態がある。この点を勘案すれば、制度を諸々かえるより仕方がない状況であったのである。
しかしながら他方で、部落に対してこの新たな仕組みは大きな問題がある。というのも、部落が定住型コミュニティとしての性格を有しているが、ここに上記の改正後の制度を適用すれば、安定層が流出し、しかも再流入することが極めて困難である。具体的には、応能応益家賃制度により、安定層は高額の家賃を支払らわねばらなず、流出の圧力となるからである。更に言えば、経済的安定を理由とした追い出しもありえるのである。そこで、部落については、人権のまちづくりという観点から、住宅供給に関しては、公営住宅の運用について一定工夫を凝らすとともに、コーポラティブ住宅や払い下げ、民間老朽住宅の建て替え、民間マンションなども視野に入れて、多様な供給を進めることが重要である。
ただし、若年層の流出については、家賃の問題だけではないかもしれない。例えば、ムラ社会がわずらわしいと考える者もいるのではないか。このような状況をどう捉えるかは、別途検討を要する課題であろう。
〈第3報告〉大阪府連まちづくり運動部
実態の把握
今回の改正で現在の部落の公営住宅入居者にとって最も影響が出るのは「収入超過者の家賃制度」に関わる部分である。地区内の公営・改良住宅はその建設経過を鑑みた場合、一般の公営住宅の目的に加えて固有の目的も有しており、それに対する配慮は重要かつ必要である。今後、所得基準を定める収入区分そのものが変更される可能性もあり、ますます収入超過者・高額所得者に区分される可能性がある住民も含めた実態の把握と早急な対応策が求められる。
多様な住宅供給の具体化
課題としては、「多様な住宅供給」がある。「みなし特定公共賃貸住宅制度」の当面の活用、定期借地権の活用、コーポラティブ住宅建設、公営住宅建替えに伴う公有地の再活用、等の検討と具体化が急がれるところである。
また、今回の改正の単身入居枠や裁量世帯の拡充の積極的な活用と入居システムの整備など住宅自治や住民自治の強化、活性化も重要である。
|