格差拡大に関しては様々なテーマがあるが、今回は生活保護とまちづくりにテーマを絞ることとする。現在に西成区には2万人の生活保護受給者が在住している。これは同和地区に限らず、区内に満遍なく多い。この保護費を目当てとした介護・整骨院・病院などの業者が林立している。また、アパートも、家賃補助ぎりぎりの家賃設定をするようになり、受給者でない人は住めなくなっている。
このような状況に対して、イギリスの社会的企業やイタリアの社会的協同組合の例を参考にしながら、ビジネスの手法を用いた課題解決やまちづくりを進めたいと考えている。
この観点から、幾つかの取り組みを進めている。知的障害者の雇用を促進するために、協同組合(エルチャレンジ)を結成した。公的施設のメンテナンスに係わる総合評価入札制度に障害者雇用の有無を点数として組み込まれているが、これを活用している。
また、銭湯についても、同和対策の特別施策が終了する中で、料金が上がった。そうなると、単身高齢者等の困難層がなかなか入れなくなる。そこで「暮らし組合」を作って、高齢者だけ料金を100円下げるようにした。この組合には予想を上回る4000人が加入した。ここから様々な課題が見えてきたが、その解決を行政施策ではなく、市場の力で解決できないかという発想で、事業を展開している。
ホームレス支援としては、身元保証会社を行っている。「株式会社ナイス」に就業していたことにし、また、「カンパネグラ」という寮に住んでもらい、住所と勤め先を得ることで、就職活動をしてもらう。就職でいた場合には、前借制度を活用してアパートを見つけてもらうという事業を行っている。3年間で80人を超える路上生活者が就業することが出来た。また、清掃会社とジョイント・ベンチャーを立ち上げ、公園の管理について指定管理者の指定を受けた。ホームレスの方を訓練生として迎え、就労訓練を行い、就職に繋げている。
その他、古着リサイクルを行っており、回収した古着のうち、いいものを売り物にしている。人権文化センターでは古着を使ったぞうり作りなどを行っているが、今後工場をつくって、就職困難者を雇い、その収益をまちづくりに活用したい。
さらに、整骨院の経営なども行っている。現在3箇所経営しているが、その後西成整骨院協会を結成し、健康をテーマにまちづくりに貢献できないか模索中である。
食生活についても、西成には飲み屋は多いが、食堂がほとんどない。くらし組合の人びとにはおいしいご飯を食べて欲しい。安くていい食事を提供する食堂も提案したい。
さらには、福祉と経済に橋を架けるという意味で、デザイナーズマンションを建てた。1階には歯医者と、レストランが入り、2階には学習塾。コミュニティーディベロッパーとして、事業者団体を作っていきたい。
現在の目標は、生活保護受給者でも加入できる銀行、あるいは共済組合を作り、自立につなげられないか、と考えている。
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