調査研究

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2007.07.03
部会・研究会活動
人権啓発推進リーダー養成のための実践調査等研究事業
(2006年度)
人権啓発推進リーダー養成のための実践調査等研究事業 報告書

第2章 調査結果の概要

第2節 部落解放・人権大学講座について

1 所属する組織における研修の実施状況

(1)所属する組織における研修の実施状況(問7)

問7は、対象者が所属する組織全体での人権研修の状況についてたずねている。

問7  現在、あなたは所属する組織全体の人権に関わる役割(人権研修担当、公正採用選考人権啓発推進員など)を担っていますか。(○は1つ)

図1 現在所属する組織全体での人権に関わる役割(%)

対象者が調査時現在、組織において人権に関わる役割を担っているかどうかについては、「現在担っている」が41.3%、「現在はしていないが、担ったことがある17.8%と、6割弱が担った経験があるとしている。以下、組織全体に関する質問である問7-1〜5は、「現在担っている」と回答した215名を対象としている。

 問7-1〜5 あなたが所属する組織全体の状況についてお聞きします。

 問7-1 あなたの組織では、年間何回人権研修を行っていますか。(○は1つ)

図2 組織での年間人権研修回数(%)

組織での年間の人権研修回数(問7-1)は、「7回以上」が45.1%と最も割合が高くなっている。

問7-2     一回の人権研修の時間は何分ですか。(○はいくつでも) (N=213)

表1 組織全体での一回あたりの人権研修時間


1.30分未満
2.8
2.30〜60分
27.7
3.60〜90分
53.5
4.90〜120分
30.5
5.120分以上
11.7
無回答
4.2

130.4

 組織全体での一回あたりの人権研修時間(問7-2)は、「60〜90分」が53.5%と最も割合が高くなっている。 

問7-3     あなたの組織では、独自に作製した人権研修の教材がありますか。(○は1つ) (N=213)

図3 組織で独自に作成した人権研修教材(%)

組織で独自に作成した人権研修教材があるかどうか(問7-3)については、「はい」(ある)が67.6%、「いいえ」(ない)が31.0%となっている。


問7-4     あなたの組織では、人権研修の効果測定を行っていますか。(○は1つ) (N=213)

図4 組織での人権研修の効果測定(%)

組織の人権研修において、効果測定があるかどうか(問7-4)については、「はい」(ある)が69.5%、「いいえ」(ない)が29.6%となっている。

 問7-4-1 それはどのような方法ですか。(○はいくつでも) (N=148)

表2 組織での人権研修の効果測定方法

感想文
41.9
レポート
12.2
試験
0.7
アンケート
75.7
その他
4.1
無回答
3.4
合計
138.0

 問7-1で「はい」と回答した者(148人)には、どのような方法で効果測定を行っているのかを複数回答でたずねている。最も多いのは、「アンケート」の75.7%であり、以下「感想文」41.9%、「レポート」12.2%と続く。


問7-5  あなたの組織では、人権研修の参加状況が、昇進、査定に加味されますか。(N=213)

図5 組織での人権研修参加の昇進・査定への加味(%)

組織での人権研修への参加が昇進・査定に加味されているかどうか(問7-5)については、「いいえ」が91.1%と圧倒的に割合が高い。加味されているのはわずかに4.7%である。

(2)所属する事業所・部署における研修の実施状況

 問8は、対象者が所属する事務所・部署の状況についてたずねている。

問8  現在、あなたは所属する事務所や部署の人権に関わる役割(人権研修担当、公正採用選考人権啓発推進員など)を担っていますか。(○は1つ)

図6 事務所や部署での人権に関わる役割(%)

 

対象者が調査時現在、所属する事務所や部署において人権に関わる役割を担っているかどうかについては、「現在担っている」が42.4%、「現在はしていないが、担ったことがある16.9%と、6割弱が担った経験があるとしており、この割合は問7での組織全体での人権に関わる役割とほぼ同様である。

以下、事務所や部署に関する質問である問8-1〜5は、「現在担っている」と回答している219名を対象としている。

問8-1〜5 あなたが所属する事務所や部署の状況についてお聞きします。

問8-1 あなたの事務所や部署では、年間何回人権研修を行っていますか。(○は1つ) (N=219)

図7 事務所・部署での年間人権研修回数(%)

 

事務所や部署での年間の人権研修回数(問8-1)は、「1回」が28.8%、「2回」が20.1%と、「1〜2回」でおよそ半数を占める。他方、「7回以上」が19.2%を占めており、回数が多いところと少ないところの差がはっきりと出ている。

問8-2  一回の人権研修の時間は何分ですか。(○はいくつでも) (N=219)

表3 事務所・部署での一回あたりの人権研修時間

1.30分未満
5
2.30〜60分
33.3
3.60〜90分
50.2
4.90〜120分
22.4
5.120分以上
7.3
無回答
2.7
合計
120.9

 事務所・部署での一回あたりの人権研修時間(問8-2)は、「60〜90分」が50.2%と最も割合が高くなっている。

問8-3  あなたの事務所では、独自に作製した人権研修の教材がありますか。(○は1つ) (N=219)

図8 事務所・部署で独自に作成した人権研修教材(%)

事務所・部署で独自に作成した人権研修教材があるかどうか(問8-3)については、「はい」(ある)が52.1%、「いいえ」(ない)が47.0%となっている。

問8-4  あなたの事務所では、人権研修の効果測定を行っていますか。(○は1つ) (N=219)

図9 事務所・部署での人権研修の効果測定(%)

事務所・部署での人権研修において、効果測定があるかどうか(問8-4)については、「はい」(ある)が59.8%、「いいえ」(ない)が38.8%となっている。


問8-4-1 それはどのような方法ですか。(○はいくつでも) (N=131)

表4 事務所・部署での人権研修の効果測定方法

感想文
34.4
レポート
8.4
試験
2.3
アンケート
72.5
その他
6.1
無回答
2.3
合計
126.0

問8-1で「はい」と回答した者(131人)には、どのような方法で効果測定を行っているのかを複数回答でたずねている。最も多いのは、「アンケート」の72.5%であり、以下「感想文」34.4%と続く。

問8-5  あなたの事務所や部署では、人権研修の参加状況が、昇進、査定に加味されますか。(N=219)

図10 事務所・部署での人権研修参加の昇進・査定への加味(%)

組織での人権研修への参加が昇進・査定に加味されているかどうか(問8-5)については、「いいえ」が90.0%と圧倒的に割合が高い。加味されているのはわずかに5.9%である。


2 部落解放・人権大学講座について

問24  解放大学を受講して、どのように感じましたか。次にあげる(1)〜(10)のすべてについてお答えください。(○はそれぞれ1つ)

図11 解放大学を受講しての感想(%)

解放大学を受講しての感想(問24)については、非常に評価が高い。「非常にあてはまる」の割合が高く、特に評価が高いものとしてあげられるのは「受講生同士の人間関係が深まった」「人権に関する基本的な知識を得ることができた」「異業種の人々の視点が参考になった」「率直な意見交換ができた」「当事者との出会いで多くを学んだ」「もっと長い時間をかけて学びたかった」などである。特に、単に人権に関する知識を得ることのみならず、受講生同士の関係性に対する評価が高いことには注目されるべきであろう。

3 「自己啓発学習」について

問25  解放大学の「自己啓発学習」についてどのように感じましたか。次にあげる(1)〜(12)のすべてについてお答えください。(○はそれぞれ1つ)

図12 「自己啓発学習」の感想(%)

 解放大学のカリキュラムの一つとして組み込まれている「自己啓発学習」の感想(問25)について、「非常にあてはまる」の割合が高く、特に評価が高いものとしてあげられるのは「他の受講生の体験談から、具体的な差別のありように気づくことができた」「自分の体験や気持ちを文章にすることで、多くの気づきがあった」「偏見や差別意識について、率直に表現して話し合うことができた」「自分のことを振り返ることを通じて、新たな気づきがあった」「助言によって新たな気づきがあった」などである。逆に、「あてはまらない」の割合が高いものは、「なんのためにやっているのか、意図がわからない ことがあった」「自分の意見にかかわらず、無理に参加させられて不愉快だった」であり、「自己啓発学習」については意図があり、無理強いされているという感覚も非常に少ないという評価である。解放大学全体に対する評価と同様、「自己啓発学習」についても総じて評価は高いといえよう。


4 受講を通じての変化(セルフ・エスティーム、コミュニケーション等)

問26  解放大学の受講を通じて、次のような変化がありましたか。次にあげる(1)〜(13) のすべてについてお答えください。(○はそれぞれ1つ)

図13 解放大学受講を通じての変化(セルフエスティーム・コミュニケーション)(%)

 セルフ・エスティームやコミュニケーションといった側面についての解放大学受講を通じての変化(問26)について、最も変化の自覚が高いものは「多様な人々と違いを尊重し合うことが大切だと思うようになった」であり、ほとんどの人が「非常にあてはまる」あるいは「ややあてはまる」と回答している。他にも「非常にあてはまる」「あてはまる」の割合が高いものとして、「人権や差別について、積極的に取り組む態度を身につけることができた」「学んだことを他の人に伝えたいと思った」「人と対等に話し合うこと(コミュニケーション)の楽しさを実感した」「社会の出来事に関心が向くようになった」「人の意見をしっかり聴けるようになった」「周りの人が不当な(理不尽な)扱いを受けたときに、抗議できるようになった」などがあげられる。


5 受講を通じての変化(研修スキル)

問27  解放大学の受講を通じて、次のような変化がありましたか。次にあげる(1)〜(8)のすべてについてお答えください。(○はそれぞれ1つ)

図14 解放大学受講を通じての変化(研修スキル)(%)

研修スキルについての解放大学受講を通じての変化(問27)について、「非常にあてはまる」「ややあてはまる」を合わせた割合が高いものとしては、「地域や職場などでの人権研修で、差別的な発言に適切に対応できる(自信がついた)」「身近な人権課題について、地域や職場の人たちに助言できる」「地域や職場などで求められている人権研修のテーマ設定・企画ができる(自信がついた)」「地域や職場などでの人権研修で、疑問や質問に適切に対応できる(自信がついた)」などがあげられる。


6 受講後の状況について

問28 解放大学終了後のあなたの状況についてお聞きします。次にあげる(1)〜(9) のすべてについてお答えください。(○はそれぞれ1つ)

                            図15 受講後の状況(%)

解放大学受講後の状況(問28)について、「非常にあてはまる」の割合が高いものは「企業の人権担当は重要だと思うようになった」である。他にも、「非常にあてはまる」「ややあてはまる」を合わせた割合が高いものとして、「解放大学で得たものは、業務や日常生活に役立っている」「日常生活において、人権の視点から考えることが多くなった」「人権を尊重することによって、企業も利益を得ると思うようになった」「解放大学終了後も、人権問題について学び続けてきた」「人権についての人的ネットワークができた」などがあげられる。逆に、「解放大学修了後、自費で人権研修に参加したことがある」「自治会やPTA、NPOなど、地域活動・市民活動に参加するようになった」については、「あてはまらない」「あまりあてはまらない」の割合が高く、地域活動・市民活動や人権研修に対する積極的な参加についてはハードルがあることがわかる。


7 不祥事および報道について

問29  この間の、大阪府内・市内等で表面化している部落解放運動や同和対策などに関わる不祥事、 及びそれにかかわる数多くの報道についてあなたは関心がありますか。(○は1つ)

                       図16 不祥事・報道への関心(%)

 問29は、2006年以降、大阪府内・市内などで表面化している部落解放運動や同和対策などに関わる不祥事と、それに関わる報道についてたずねている。これらの関心については、96.1%が「はい」(関心がある)と回答しており、ほとんどの人がこれらの問題に関心があると回答している。


問29-1  あなたはこの問題について、どのように感じていますか。次にあげる(1)〜(10)のすべてについてお答えください。(○はそれぞれ1つ)

                       図17 不祥事・報道に対する意見(%)

問29-1は、この問題に対する意見をたずねている。「非常にそう思う」「ややそう思う」をあわせた割合が最も高いのは、「この問題が明らかになってよかった」であり、9割を超えている。他、「この問題により行政への信頼が揺らいだ」「この問題により運動団体への信頼が揺らいだ」などが6割を超えている。

 逆に、「そう思わない」「あまりそう思わない」を合わせた割合が高いのは、「この問題をきっかけに、部落差別をなくすための行政施策は辞めるべきだ」「なぜ、この問題が起こったのか理解できない」「この問題について、行政は十分に対応できている」「この問題について、運動団体は十分に対応できている」であり、行政施策を辞めることへの批判は大きいものの、行政・運動団体ともに十分な対応ができていないと考えるものが6割前後を占めている。

問29-2  これらの問題の責任の所在について、「<1>当事者」、「<2>運動団体」、「<3>行政」、「<4>マス・ メディア」、「<5>その他」を、責任が重いと思われる順番に並び替えるとどうなりますか。 空欄に番号をお書きください。

 問29-2は、問題の責任の所在についてたずねている。回答の形式は、責任が重いと思われる順番に「<1>当事者」「<2>運動団体」「<3>行政」「<4>マス・ メディア」「<5>その他」のいずれか数字を記入してもらうものだったが、結果をまとめるために、最も責任が重いとされたものに5点、2番目に重いものに4点、3番目に重いものに3点、4番目に重いものに2点、5番目に重いものに1点を与え、たし算をした。図18はその結果である。最も責任が重いと考えられているのは「当事者」である。続いて「行政」と「運動団体」が拮抗しており、以下「マスメディア」「その他」と続く。

図18 問題の責任の所在

(内田龍史)