〈第一報告〉
今日の同和地区の現状としては、若くて経済力のあるファミリー層の地区外移住が目立ってきており、とくに大都市部においてはスラム化の傾向が顕著になってきている。しかしながら、大都市や地方の中核都市の同和地区と、農山村の同和地区の住宅事情は様相を大きく異にしているので、住宅政策についての問題点や計画を同一には論じることはできない。
これからの同和地区の住宅政策については、小規模な特別養護老人施設やグループホームといった福祉施設の地区内建設や、食事サービスや介護サービスなど自立支援にむけた様々な福祉サービスとの連携が不可欠である。
一方、現行の公営住宅制度は大都市域で破綻してきているとともに、今日の財政事情では国や自治体に多数の公共住宅を建て替える余力を持っていない。今後は建て替えにあたって民間企業や地元住民組織が一定の役割を果たさざるを得ない。
同和地区における多様な住宅供給については、借り上げ公営住宅や改良住宅の建て替えにあたっての分譲改良住宅の供給、公有地を活用した定期借地権制度のコーポラティブ住宅の建設、さらに福祉施設の建設や供給などが最近取り組まれてきているが、今後とくに(1)公共住宅の民間管理に対する対応、(2)公共住宅建て替えにあたってのPFIおよびPFI的手法導入の検討、について研究・検討していく必要がある。
PFIとは、「プライベート・ファイナンス・イニシアティブ(Private Finance Initiative)」の略称で、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力および技術的能力を活用して行うという新しい手法のことをいう。また、「PFI的」というのは、PFIに対して、維持管理を含まなかったり、完全にPFI法にのっとっていない事業を「PFI的」と称している。
「大阪府営東大阪島之内住宅民活プロジェクト」は、PFI方式に準じた形式、つまり「PFI的」手法による事業になる。具体の方策としては、用地8400‡uに府営住宅66戸と民間住宅等を一体的に整備する事業で、府営住宅整備基金(2003年3月改正)の活用を図り、事業コンペによる民活手法の開発を行っていく。つまりこれまでに66戸の府営住宅地であった8400‡uの土地について、府営住宅分の66戸について高層化して土地を稼ぎ、その活用用地(余剰地)に民間住宅等を建設していくものである。
そして府営住宅分については完成後に大阪府が事業者に買取費用を支払うが、それは残りの民間住宅等の土地、いわゆる活用用地を売却した処分金等から負担し、結果として「新たな財政負担を伴わず」に府営住宅が建て替えられるという仕組みになっている。
このPFIおよびPFI的手法を導入した公共住宅の建て替えの手法について、参加者からは、目的の一つである「地域のまちづくりに寄与」あるいは「人権のまちづくり」の視点が具体的にどう反映されているのか、また反映できる仕組みになっているのかといったソフト面での疑問や、この手法では採算性等市場原理が色濃く出るので、同和地区の利便性などを鑑みた場合、すべての同和地区にある公共住宅の建て替え方法としての活用はできないのではないか、などの意見が出された。
集約的な意見としては、「人権のまちづくり」というのは総合的な枠組みをどうしていくのかということであって、このPFIおよびPFI的手法を導入した公共住宅の建て替えというのはそのための一参考事例であり、それぞれの地域の実情にあわせた取り組みが必要である、ということであった。
(報告) 高見 一夫(ワーク21企画代表・中小企業診断士)
1999年12月の中小企業基本法の改正は中小企業施策についての大きな転換であった。基本理念では、中小企業こそが経済の発展と活力の源泉として位置づけ、その自助努力に対する支援へと方向転換しており、重点施策では、経営革新、創業等の支援を打ち出している。つまり、多品種少量など個性化、多様化するニーズに対応でき、労働集約的な性格の強い分野として評価されているのである。
これは、今日の社会の構造的変化がある。すなわち家族形態の変化であり、単身世帯の増加や「個族」の出現、女性の進出などがありライフスタイルの大きな変化である。ここでは、営業努力など新たな企業努力なしにはやっていくことができないが、それを単独ですべてやっていくことは不可能であり今後は「連携」というものが重要になってくるだろう。
また、もう一つの大きな変化に地方分権一括法の施行や福祉の基礎構造改革、地域福祉計画などがあり、ここでは地域の多様な課題が山積されている。すなわち、高齢者の介護問題や孤立・孤独死、生活習慣病、障害者の社会参加、子どものいじめや低学力、ひきこもり、商店街の集客力の低下や空き店舗の増加、環境問題、伝統文化の継承や地場産業の停滞、失業等々、である。
このような中、事業者が重視しなければならないのは、(1)消費者ニーズとのかい離による需要の潜在化や、(2)食品偽装表示や不祥事、押し付け販売に対する消費者の不信、である。具体的なヒントとしては、(1)福祉と組むことや、(2)地域と組むことである。つまり、前述した地域の様々な課題とは逆に言えばそういったニーズがあるということであり、ここに新しい風=コミュニティ・ビジネスという手法がおおいに期待されている。
コミュニティ・ビジネスとは、「地域にあって」、「地域課題を解決するために」、「地域住民自らが」、「ビジネス手法を使って取り組む事業」と理解できる。
スタイルとしては、(1)地域差を考慮しない画一的で平均的なサービスや生産効率のみを追求するのではなく、地域主体による生活者の潜在ニーズの発見と対応が求められた問題解決型であること、(2)市場や行政サービスへの依存により弱体化した「公」の基盤(地域のつながりや自発性、自身の問題解決力など)を再生することが求められている、(3)NPOや任意団体、ワーカーズ・コレクティブ、有限会社、株式会社など多様な形態があり、(4)単に経済的価値だけでなく多様な社会的価値観に基づく形態であり、(5)就労形態としては、主婦、高齢者、障害のある人など、就職に阻害要因を抱える人に多様な就労機会の提供が求められていること、などである。
大阪府では、こういったコミュニティ・ビジネスを応援する事業が行われており、様々なコミュニティ・ビジネスが地域から生まれてきている。
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