部落解放運動をとりまく環境の変化
長年たずさわってきた行政の視点から報告していきたい。
1996(平成8)年の「地対協意見具申」は、「一般対策のへの移行が同和問題の早期解決を目指す取り組みの放棄を意味するものではない」と指摘している。これをふまえた今後の取り組みが大切である。また、地方分権の流れが本格化している今日、中央集権による画一的政治や社会の仕組みが崩壊し、「多様」をキーワードにした新しい価値観が生まれてきている。
このような状況のなか、高知市でも同和対策見直しの取り組みがおこなわれたが、それは地域の実態の把握、客観的な数字を示すことからはじめられた。結果、高齢化率は市平均18.2%に対して地域20.5%、無年金率、市27.4%に対して地域34%や市平均より高い失業率、低所得層が多く高所得層が少ない、高い生活保護状況などが明らかになった。そして清掃等の委託事業のみの対策から、福祉を中心とした高齢者事業団の側面的支援、具体にはこれまでの隣保館事業の各種講座を見直しヘルパー養成講座を開設、ミニデイサービスの委託などに取り組んだ。
市民によるまちづくりへの支援
また、直接同和対策とは関わってはいないが、分権化社会に対応するための取り組みとして、高知市では1990(平成3)年にコミュニティ計画の策定事業が始められた。作業としては、高知市全体を地域の視点で区分し、各地区ごとに市民参加で計画案を策定し、1992年には67項目ごとの現状分析を行った地区カルテが作成された。市の職員の参加は、研修によって必要な知識を身につけた106人がまちづくりパートナーとして位置づけられ、住民組織づくりとしてはコミュニティ計画策定市民会議を順次結成し、1079人が参加した。
こうして提案されたコミュニティ計画案は約1500の具体的な項目が含まれ、各項目ごとに短期・中期・長期といった実施時期と、行政が主体となるもの、市民が主体となるもの、あるいは市民と行政が協働で行うものといった役割分担からみた考え方も示されていた。つづいてこのコミュニティ策定作業から次のステップである具体的なまちづくり活動につなげていくものとしてコミュニティ計画推進市民会議が結成され、計画をもとに地域の特性を活かしたさまざまなまちづくり活動がすすめられるようになった。
これからの解放運動、同和行政の役割
就労、教育、福祉、啓発など残された課題に対する解放運動や同和行政の役割について、住民の期待は大である。これまでの格差是正中心の運動や行政から、地域の特性を活かした創造の時代へと確実に質的変化がおこってきている。
キーワードは、まず「コミュニティ」である。市町村合併が進められるなか、コミュニティがより重視されなければならない。とくに地域内でのコミュニティ、人と人とのつながりは蓄積された財産として色濃く残っている。
そして次のキーワードは「参加、参画、提案」である。制度のみではなく「人」も大切である。地域のニーズを的確に把握することが重要であり、そのためには多くの住民参加による共通認識が必要である。
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