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国際身分制研究会研究会・学習会報告
1999年04月17日
日本における身分の研究史覚書(2)
―近世を中心として―

(報告)寺木伸明(桃山学院大学)

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 最初に取り上げるのは高木昭作さんの身分論です。一般的な見方として、役を課すことによって中世身分が編成されていったと解釈されていました。高木さんはそれを認めつつ、中世から一定の自立性を保持している側面を持っている身分集団から受ける規定も合わせて考えています。いずれにしても、近世の身分が自然発生的にできたのではなく、中世の側面を持ちながら近世の国家によって強力に編成されていったと指摘しています。

 吉田伸之さんは、町人身分をどう位置づけるかという視点をもった研究の方法をとっています。高木さんの影響を受け、特に京都の町を取り上げ非常に詳しい史料を駆使して町人身分の決定を明らかにしています。同時期、塚田孝さんは江戸の非人身分を中心に研究しました。彼は、「身分」とは前近代社会における人間の存在様式でありそれが「身分」たりうる為には、個人と国家・社会全体が即時的に関係づけられてなければならないが、それを媒体するのが"集団"である、としています。これは「身分集団論」として影響を与えました。

 身分論の今後の検討課題として、まず百姓身分の捉え方の問題があります。百姓は農民、漁民、山民、商工業者という構成で捉えなければならないと思います。次に、幕藩国家レベルおよび各所領レベルの身分編成の問題があります。国役に基づく身分は武士・百姓・職人・商人と捉えることができますが、「えた」身分や「非人」身分は個別領主で課しているのです。幕藩体制は国家と連合組織ですので、制度的に説明する必要があります。

3点目は行政単位としての地域(集団)の問題があります。例えば、分業である死牛馬処理をしていない人がいても、集団としては「えた」身分と捉えられました。このように行政単位として分業として編成されていないのに、隠亡・夙身分などがあったというのが4つ目の問題点です。これらをどう捉えるかが課題でしょう。

(文責・事務局)