1995年6月から開始した国際身分制研究会は、3期8年問で、44回の例会を積み重ね、一応の区切りをつけることとなった。
この間、日本はもとより、インド、ネパール、中国、朝鮮等をテーマに取り上げ、様々な角度から「身分差別」を研究した。その内容は、それぞれの期ごとの研究会報告書として紹介されている。
この中で、「身分差別」が持っている共通点と、それぞれの国や地域で見られる独自性が明らかになってきている。
しかしながら、今後の研究課題として残された事項も少なくない。
たとえば、尾本恵市さんからは、世界各地でどのような職業に従事している人々が被差別民と位置づけられているかを、その出典とともに明らかにするという基礎作業の必要性が提案されているのが、その一例である。
また、三宅正彦さんの報告の中で、今日のヨーロッパにおいても「身分差別」があるのではないかとの指摘が、若干の事例とともに紹介されているが、この点も今後究明しなければならない課題である。
さらに、この8年間を振り返ったとき、最も大きな変化は、国連の人権関係の会議で、「職業と世系(descent/門地)に基づく差別」が国際的な関心事項として取り上げられるようになってきたことである。その中で、インドをはじめとする南アジア諸国に存在するダリットに対する差別や日本の部落差別のみならず、アフリカにも存在しているr身分差別」についても光が当てられ始めている。国際身分制研究会でも、スミタ・ナルラさんの報告で、若干の紹介がなされているが、アフリカにも存在している「身分差別」の究明は、これからの研究課題である。
今後機会を見て、研究所としてこれら残された課題の究明を試みたいと思っている。ともあれ、3期8年問、研究会のメンバーとしてご参加いただいた皆さん、多忙な時問を割いてご報告いただいた皆さん、さらには研究会の諸準備や報告のテープ起こし、ニュースの作成等を担当いただいた事務局の皆さんに心からの感謝の意を表したい。
なお、研究会のメンバーであった池川英勝さんが2002年4月4日、お亡くなりになった。
池川さんは、韓国の衡平杜研究の第一人者であっただけに、あまりにも早いご逝去は悔やまれてならない。心からのご冥福を申し上げる次第である。
2003年3月
部落解放・人権研究所
所長 友永健三
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