調査研究

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2006.09.15
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人権教育・啓発プログラム開発研究会報告
2006年3月23日
学校と地域の協働と人権意識の変容

高田 一宏さん(兵庫県立大学)

  表題報告書のテーマは、学校と地域の協働に関して、協働が人権意識に肯定的影響をもたらしているのかどうか、分析が行われている。

  中村論文「地域に開かれた学校づくりと人権意識の変容」では、協働の成功要因として、学校と地域の双方向性、学校から地域への明確なメッセージ、継続的・日常的な参加、参加者の多様性、参加者の役立ち感・自己肯定感、参加者のつながり・信頼関係があげられている。協働の成果として人々の間の信頼感があげられるが、信頼感は人権意識の向上や部落問題解決にとって欠かすことのできない「土台」づくりとなる。

  高田論文「「北条太鼓」を通じた青少年育成と人権のまちづくり」では、90年代初頭に生じた中学生の「荒れ」を克服するために、学校内外での問題意識の共有とまちづくりが目指された。そこで重要な役割を果たしたのが、「北条太鼓保存会」である。保存会の活動により、町会を横断する地域の人々のつながりが生まれた。

  瀬尾論文「「できることを、できる時に、できる人が」を地域の合言葉に」は、三島小学校での学校改革に大きな役割を果たした地域組織である「三島小学校サポーターズクラブ」や「M・CAN」の活動が取り上げられている。

  大橋論文「学力保障を原点とした学校と地域の協働による教育」は、旧産炭地である福岡の金川校区において、「金川校区活性化協議会」や「金川小PTA」の取り組みによって、露骨な差別意識が、変わりつつあることが示されている。

  部落のありようや部落と周辺地域の関係の変化を見越した形で、人権教育・啓発の方法も変えられるべきだろう。


従業員の個人情報の取扱いに関する調査(アンケート調査)結果

李 嘉永(部落解放・人権研究所)

  個人情報と聞くと、多くの人は顧客情報とその漏洩を思い浮かべる。しかし、どのような業種においても持っている情報が、従業員情報である。内容の性質によっては勝手に出回ると大きなリスクになる。また、個人情報は身元調査(同和地区出身者・在日韓国朝鮮人・母子家庭など)の足がかりにもなる。

  個人情報を取得する場合には本人に同意を取らなければならない。経済産業省のガイドラインでは、口頭・書面によって情報ごとに同意を取ることが望ましいとされているが、非常に煩雑なので包括的に同意しているところもある。また、委託先の管理も重要である。漏洩する場合に、委託先のアルバイトが持って行くという事例もある。

  調査結果の当初の予想では、大企業の方が比較的従業員の個人情報保護に取り組んでいると考えていたが、決して中小企業が取り組んでいないわけではない。スリムな分、機敏に動けていると言えるかもしれない。

  個人情報保護法の成果として、課題は改善方向に向かっている。しかし、従業員情報の取扱いには遅れが見られる。体制の整備の実効性をどのように図るのか、個人情報を扱っている人たちにどのようにわかってもらうのかが問われている。

  実効性を持たせるための工夫の中身についてはヒアリング調査を行っている。ヒアリング対象となった企業が大企業であったため、OJT(実地訓練)の取り組みが進んでおり、全社員に周知できる体制があった。そこでは業務内容に即した形で個人情報保護を伝えている。また、顧客の個人情報を守ることは先行して取り組んできたために、従業員情報を守っているように顧客の個人情報も守っている、という働きかけができていた。

(文責:内田龍史)