表題報告書のテーマは、学校と地域の協働に関して、協働が人権意識に肯定的影響をもたらしているのかどうか、分析が行われている。
中村論文「地域に開かれた学校づくりと人権意識の変容」では、協働の成功要因として、学校と地域の双方向性、学校から地域への明確なメッセージ、継続的・日常的な参加、参加者の多様性、参加者の役立ち感・自己肯定感、参加者のつながり・信頼関係があげられている。協働の成果として人々の間の信頼感があげられるが、信頼感は人権意識の向上や部落問題解決にとって欠かすことのできない「土台」づくりとなる。
高田論文「「北条太鼓」を通じた青少年育成と人権のまちづくり」では、90年代初頭に生じた中学生の「荒れ」を克服するために、学校内外での問題意識の共有とまちづくりが目指された。そこで重要な役割を果たしたのが、「北条太鼓保存会」である。保存会の活動により、町会を横断する地域の人々のつながりが生まれた。
瀬尾論文「「できることを、できる時に、できる人が」を地域の合言葉に」は、三島小学校での学校改革に大きな役割を果たした地域組織である「三島小学校サポーターズクラブ」や「M・CAN」の活動が取り上げられている。
大橋論文「学力保障を原点とした学校と地域の協働による教育」は、旧産炭地である福岡の金川校区において、「金川校区活性化協議会」や「金川小PTA」の取り組みによって、露骨な差別意識が、変わりつつあることが示されている。
部落のありようや部落と周辺地域の関係の変化を見越した形で、人権教育・啓発の方法も変えられるべきだろう。
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