調査研究

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07.05.18
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人権教育・啓発プログラム開発研究会報告
2006年10月16日
1.「企業向け人権啓発のあり方 業務との関わりから」

益田 圭(相愛大学人文学部)

2.「行政職員向け人権啓発のあり方について」

内田 龍史(部落解放・人権研究所)

〈第1報告〉

 企業における啓発の問題点としては、基本方針の見直しが行われていないこと、方針が「明るい職場」など抽象的であること、社内推進体制がない場合があること、研修のための時間が取れないこと、管理職の人権研修が不足していることなどがあげられる。

これまで行ってきた部落問題に対する意識形成調査からは、(1)「関与」が高いことが意識形成にとって重要であること、(2)人びとの意識には多重の領域があり、それらは必ずしも一貫しないこと、(3)緊密な人間関係が重要であること、(4)「反差別役割」の付与・取得が重要であること、(5)当事者との接触が重要であることを指摘してきた。こうした問題点と研究成果をもとに、企業向け啓発プログラムの考案に向けて、(1)経営トップによるCSR研修および「企業活動における人権基本方針」の作成、(2)各現場における業務と関わる人権問題発見活動、(3)職長、管理職による人権研修、ミーティング、(4)人権担当部署のコーディネートの役割を提言したい。

〈第2報告〉

 行政職員が行う業務には様々なものがあるが、人権と関わりのない業務はほとんどないと言える。行政職員は法令に基づいて業務を遂行せねばならならず、人権については言うまでもなく、常にコンプライアンス(法令遵守)が問われている。加えて、現在さまざまな分野で民営化が推進されているが、民営化が進められている分野において、常に人権が確立されているかどうかチェックする意味においても、優れた人権感覚を持つ市民に先駆ける人権リーダーとしての役割はさらに高まっていると考えられる。

 大阪市では、1984~85年に生じた差別事件を契機として、人権研修を効果のあるものにするためのさまざまな取り組みがなされており、その推進体制面においては一定の評価がなされてしかるべきものである。現在の課題としては、・研修結果の評価の困難、・業務に即した研修の不在、・避けられる葛藤場面の三つがあることから、今後の人権啓発・研修については、集合研修における一定のレベル設定と段階的な発展、業務と関連した人権の視点の取り入れ、業務と関連する人権課題の集約が必要である。

(文責:内田 龍史)