今回の会合の中心議題は、本プロジェクト参加者がこの夏に分担して実施した、大阪市内のもと青少年会館各館に関するヒアリングの結果報告・議論となった。多数のもと青館の関係者の方々の協力を得られたことで、青少年会館条例廃止によって生じている子どもや保護者、地区住民への影響・課題等が、具体的に共有される会合となった。
各館の報告内容を網羅することはスペースの関係上できないので、ここでは共通のヒアリング項目のなかから2点を取り出し、その様子を紹介したい。
1.青少年会館条例の廃止前の状況
突然の条例廃止の決定を受けて、多くの館では、主な利用者である子どもや保護者の間で困惑・動揺が生じていた。だが、そうした当事者としての声を届ける場も設けられることはなく、市当局からの一方通行の「説明」会が開かれたのみであった。
そうしたなか、署名・学習会・集会、あるいは市に直接声を届ける等、今回調査を行った各地区では、保護者や子ども、地区住民を中心とする条例廃止への取り組みが行われていた。
2.条例廃止後から現在に至るまでの状況
条例廃止以後、館としての事業はなくなり、日常を支えてきた各館職員の方々の関わりも難しくなった。また、こうした条例廃止の影響を見越し、条例廃止ぎりぎりまで館利用者の活動を継続していくための「自主サークル」の結成・登録を支援するなどといった(元)職員の方々の働きかけが多くの館でみられた。
ただ、従来の青館による「子どもの広場事業」がおこなわれなくなり、以前のように子どもが気軽に立ち寄ることができなくなってしまったことを憂慮する声が多数寄せられた。また、青少年会館が従来提供してきた給食や、プールが利用できないこと等に伴う諸問題は、特に夏休みの子どもや保護者の間で強く現れているようであった。
このほか、放課後に広場事業などを利用していた小学生の多くが地元公立小学校で実施中の「児童いきいき放課後事業」へと移ることとなった。ただ、今回報告されたなかには、例えば児童一人ひとりの多様性・集団形成への配慮などの面で、これまでの広場事業と比べ十分とはいえないこともあって、結局は後者への参加が減少している地区もあるという。
報告を受けた後の議論では、「子どもが来館できないもと青館」という現状が共有されるなかで、「まずは放課後ぶらりと訪ね、遊んだり寝そべったりできるようにすること。青館の機能として、まずは全市共通して、これを取り戻す要望を出す必要があるのではないか」といった意見なども出された。
以上は、ヒアリング報告・議論内容のごく一部であり、各館ごとに条例廃止の影響は個別具体的に様々である。今後も継続的に、もと青館とその周辺の様子は把握されていく必要があるだろうし、それらをまとめ社会的に発信していくことが本プロジェクトの課題になると思われる。
(文責:池内正史)
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