11月2日、本プロジェクトの第4回会合が、もと日之出青少年会館にて開催された。
会合では前回に引き続き、プロジェクトがおこなった大阪市のもと青少年会館(以後「青館」)に関するヒアリング調査の振り返りが中心議題となった。
最初に本プロジェクトの座長(住友剛・京都精華大学)より、この間の経過に関し「第1回現状把握調査の結果のとりまとめについて」と題する報告がおこなわれた。
同報告では、まず大阪市の青少年会館条例「廃止」以降の最も積極的な動きとして、各地のもと青館における、利用者の自主サークルの結成・活動の例が挙げられた。こうした自主サークルでは、現在も周辺地区の保護者による子育て・教育活動をはじめ、文化・スポーツ活動等が続けられている。ただ、こうした自主的な活動のなかには、行政の積極的支援を欠いたまま、ときには異動後の元青館職員による勤務時間外の個人的支援をも受けつつ成立しているというケースもある。「利用者を育てる」という観点から、社会教育・生涯学習の施策としてこれまで青館で取組んできたことが打ち切られるなか、今後、青館の教育機能を引き継いでいこうとする周辺地区の人々に対し、どのようなエンパワーメントが可能かという点が、大きな課題として示された。
また、子どもの「居場所」という青館の機能が失われ、館に集まっていた子どもたちが地元公立小学校での「児童いきいき放課後事業」に登録していくという現状を受け、あらためて今後、地元の学校・園との関係をどのようにつくっていくのかが課題として示された。このほか、「居場所」機能が失われることで、昼食・プールをはじめ、放課後・夏休みの子どもたちの生活全般に影響がでているという事態はヒアリング調査においてもみとめられたが、学校・園との関係においてそうした影響にどのような対応ができるのか、また一部もと青館でおこなっている「児童いきいき放課後事業」の分室などは、来年度以降どうなるのかといった点も課題として示された。
座長報告の最後では、(1)来年度の青館の行政的な位置づけがどのようになるのかがまったく示されていないという現状に対応するという「当面の課題」、(2)大阪市の子育て・教育施策における「格差是正」の取り組みを今後どのように行政に求めていくのかという「長期的な課題」が示され、まとめとされた。
(詳細については、当研究所紀要『部落解放研究』第179号の住友論文を参照)
その後、この間あらたにヒアリングのおこなわれた青館の状況が参加者より報告された。その館でも、例えば「しんどい層」、課題を様々な課題を抱えた子どもをはじめ、これまで立ち寄っていた子どもの来館が難しくなり、少なくなっていること。また、館施設の利用率は高いが、他方、地元の大人・高校生の利用が抽選漏れ等で難しくなっているといった声が伝えられた。
2つの報告を踏まえた全体議論のなかでは、参加者より「今、地域の現状をつかみなおすことが大切ではないか」といった問題提起がなされ、「青少年会館の周辺地区における児童・生徒の『学力』や保護者・家庭の『文化度』といった基本的なデータを精査していくべき」といった声も挙がった。青少年拠点施設を中心により視野を広げ、深めるかたちで、再度のヒアリングをおこなっていくこと等、今後のプロジェクトとしての活動方針につながる議論となったと思われる。
(文責:池内正史)
|